東京工業大学(東工大)は、スイマーの泳ぎを忠実にそして同じ動作を繰り返して再現でき、推進力や水の抵抗力も測定できる水泳ヒューマノイドロボット「SWUMANOID(スワマノイド)」を開発したと発表した(画像)。SWUMANOIDは、「SWimming」と「hUMANOID」を合わせた造語である。
開発を行ったのは、東工大 大学院情報理工学研究科のジョンチャンヒュン院生と同中島求准教授らの研究グループだ。今回の成果は、8月に台湾にて開催される「エアロ・アクアバイオメカニズム国際会議」で発表する予定。
水泳はポピュラーなスポーツだが、そのメカニズムは十分解明されているとは言い難い。特に競泳の研究ではいかにして手足の動きによる推進力を増やし、体が受ける抵抗力を少なくするかが、これまで研究者の間で議論されてきた次第だ。
従来の研究手法は、スイマーに実際に泳いでもらい、その動作をカメラで撮影し、撮影映像から動作を分析するという手法が多く用いられてきた。しかし、人間では同じ動作を繰り返し行うことは困難だった。すなわち、人間では、動作の再現性に問題があるというわけだ。また、人間が水から受けている推進力や抵抗力を測定することも困難だった。
そこで、研究グループは、ロボット技術を応用することにより、この問題の解決に取り組んだ。すなわち、スイマーの身体形状や泳ぎの動作を忠実に再現可能な水泳ヒューマノイドロボットを開発するというアプローチを取ったのである。
開発にあたっては、まず実際の競泳選手の身体形状を、3次元ボディスキャナ装置を用いて詳細に測定し、三次元造形技術により1/2スケールではあるが、ロボットにおいて形状を忠実に再現した。
また、防水処理をした20個のモータをコンピュータ制御することにより、スイマーの複雑な泳ぎの動作を忠実に再現することに成功。動作制御プログラムを変更すれば、クロール以外にも、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライ、さらには立ち泳ぎや犬かきまで、どんな泳法にも対応できるのが特徴だ。
ロボット全体は4本の支柱を介して専用の駆動装置に取り付けられ、ロボットが水から受ける力、すなわち推進力や抵抗力を測定することが可能である。現在はまだ試作段階のため、泳ぎの速さは実際のスイマーのサイズに換算して秒速0.64メートル(100mで156秒)と遅いが、今後は、改良による高速化と、駆動装置から外した自由遊泳も計画している。
このロボットを用いれば、人間の場合と異なり、同じ動作を繰り返し行わせたり、少しだけ異なる動作を行わせたりといったことが容易なため、微妙な動作の違いによる推進力の変化もとらえることが可能となる。
また、ロボットに水着を装着すれば、泳いでいる際の抵抗力に水着が及ぼす影響も測定可能だ。このため将来は、ロボットを用いた実験により、より速く泳げる動作を解明し、その結果を競泳選手にフィードバックすることや、高速水着の開発などに応用が期待されるとしている。