安川電機は、ロボット事業における抜本的な生産性向上、競争力強化のため、北九州市八幡西区の本社事業所内のロボット生産設備を再編、増強することを発表した。

抜本的に生産性を向上した生産体制の構築についてだが、(1)受注増への対応力強化、(2)世界一の生産性と品質の実現に向けて、(3)国内生産拠点の拡充とグローバル生産体制の確立の3点を挙げる。

受注増への対応力強化は、同社がアーク溶接、スポット溶接、塗装、ハンドリングなどの幅広い用途のロボットでグローバルに事業を展開していることから、今後も受注が増加することを見込んでいるという。また、既存用途に加え、新たな市場分野として成長が見込まれる、食品製造業や医療(バイオメディカル)分野などへも積極的に新機種を投入することで、市場の確立と拡大を図っていくことから、今後見込まれる受注増に向け、生産能力の拡充を目指し、国内の生産体制を一新するとした。

世界一の生産性と品質の実現に向けては、従来の半導体市場向けロボットやFPDパネル市場向けのクリーンロボットに加え、今後の市場が拡大するバイオメディカル向けロボットなど、クリーンな生産環境を要求されるロボットの需要増へ対応するため、最新鋭のロボット工場および信頼性センタを建設し、生産工程全般の最適化や品質向上を実現するとする。また、自動化、IT化を強化することで、現行比30%の生産性向上を図るという。

国内生産拠点の拡充とグローバル生産体制の確立については、今回の新工場の建設によって、国内におけるロボットの生産拠点である本社事業所はロボットの用途に応じた主力3工場体制となり、相乗効果を図りつつ、事業所全体として今後の需要増および市場の変化に対応できる最適生産を進めていくとした。合わせて、マザー工場としての製品・技術の研究・開発体制の強化を図るとする。また、中国およびアジア新興国対応については、中国(江蘇省常州市)における新工場建設を進めており、国内および中国を生産拠点としたグローバル展開を強化していくことも言及した。

なお中国の生産拠点とは、中国をはじめとしたアジア新興国でのロボット需要拡大に対応するために、中国江蘇省常州市にロボット生産子会社を設立するというもの。新会社の名称は安川電機(中国)機器人有限公司(現在申請中)で、所在地は中華人民共和国江蘇省常州市武進区。敷地面積は一期分が5万m2、2期分も5万m2(予定)。資本金は2250万ドル(約18億円)だ。事業内容は産業用ロボット(制御装置含む)の製造、販売およびアフターサービスで、従業員数は2015年度末予定で約200名。量産開始時期は2013年3月を予定している。

そして今回の新生産体制の概要は、以下の通りだ。

  • 所在地:北九州市八幡西区黒崎城石2番1号
  • 第1工場(現モートマンセンタ):一般産業向け小形ロボットの生産
  • 第2工場(新設):クリーン環境での生産(半導体・FPDパネル市場向け、食品製造業、医療(バイオメディカル)向けなど)
  • 第3工場(現モートマンステーション):一般産業向け中・大形ロボットの生産
  • ロボット信頼性センタ(拡張) 新工場(第2工場)
  • 延床面積:約1万7000m2(3階建て)
  • 2013年夏稼動予定
  • 月産生産能力(2015年度):国内工場3000台/月、中国工場:1000台/月

また同社の本社事業所の再編についても発表された。2015年に同社は創立100周年を迎えることから、前述の生産設備の再編や強化に加え、本社事業所内施設の再編を100周年事業の一環として行うという。本社事業所の所在する福岡県および北九州市は、成長するアジア新興国地域に近く、近隣諸国の玄関口として文化・経済面でも交流が深いことから、この地の利を活かしつつ、今後ともグローバルに事業を展開していくとしている。

事業所再編のコンセプトは、ロボット事業の拠点事業所として、事業所全体を「ロボット村」と位置づけ、顧客のみならず、広く市民や学校・研究機関に対して、ロボットに関する技術や情報をご提供していくという。また、事業所敷地に緑地帯などの開放部分を設定するなど、より社外の人々に親しんでいただける事業所を目指すとした。

また、事業所内施設の再編においては、新エネルギー・創エネルギーなど同社の新規事業への取り組みを活用したリニューアル計画とするとしている。そしてスケジュールは、2014年中までに建設完了を予定。正式オープンは2015年の予定だ。なお、前述の新工場の建設および事業所内再編投資として、総額約100億円としている。