米Appleは1月15日(現地時間)、サプライヤの雇用環境についてまとめた年次報告書の最新版「Apple Supplier Responsibility 2012 Progress Report」を発表した。同レポートの詳細はPDF形式のファイルで閲覧できる。また同日に2011年時点の同社サプライヤの一覧もPDFファイルとして公開している。同社がサプライヤの名前を公表するのは初のケースで、これまで噂でのみ知られていたサプライヤとの関係が明らかになった。
Appleはサプライヤの労働者の勤務環境について批判の持ち上がった2010年以降、サプライヤが従業員に対して適切な労働環境を提供しているかどうかを監査し、その結果を年次報告書の形でまとめている。2012年度版はその第3弾にあたり、Appleがサプライヤと締結したルールの違反件数ならびに、各労働者の勤務状況が公開されている。違反件数は全22件で、法律違反が2件、労働者が雇用される際にエージェントに支払う報酬の金額超過違反が15件、雇用者が就労年齢未満の違反が5件だったという。特に悪質なケースではサプライヤとの契約を解除し、別のサプライヤへと切り替えたケースがある。労働環境では、項目全体の平均で約7割がコンプライアンスに準拠していたものの、週60時間までと定めた労働時間を超過しているケースが多く、この項目の達成率のみ38%と著しく低かった。また超過労働分に対して適切な報酬が払われないケースも多く、Wall Street Journalのインタビューでも同社CEOのTim Cook氏は「労働時間は複雑な問題だ」とコメントしており、今後はこの改善が課題になるとみられる。
また今回の労働環境報告書発表に際し、同社が提携する156社のサプライヤ名がリストとして合わせて公開されている。Appleがサプライヤ名を公表するのは初のケースで、これまで各種のレポートや秘匿情報としてのみ語られてきたサプライヤの数々が明らかになった。ただし、これはAppleのサプライヤ全体のリストであるため、必ずしもiPhoneやiPadといった製品のカテゴリでサプライヤを特定するものではない。例えばiPhone 4Sでのカメラモジュール採用が噂となったソニーの名称が一覧にはあるが、別の製品への部品供給でリストに掲載されている可能性がある。