All Things DigitalのLauren Goode氏が12月1日(現地時間)に報じたところによれば、自販機向けの決済システムを開発する米Cantaloupe Systemsが現在Googleと共同でGoogleが展開するモバイルペイメントサービス「Google Wallet」サービスの組み込みを進めており、サンフランシスコ、シカゴ、中部大西洋岸地域の都市でNFC技術に対応した自販機の展開を進めているという。

Googleが展開するモバイルペイメントサービス「Google Wallet」が間もなく米国の自販機へとやってくるという。All Things DigitalのLauren Goode氏が12月1日(現地時間)に報じたところによれば、自販機向けの決済システムを開発する米Cantaloupe Systemsが現在Googleと共同でWalletサービスの組み込みを進めており、サンフランシスコ、シカゴ、中部大西洋岸地域の都市でNFC (Near Field Communications)技術に対応した自販機の展開を進めているという。

Google WalletはNFC技術を利用したモバイル端末による非接触での決済システムの名称であり、Google、Citi、MasterCard、ISISなどとの提携で、現在SprintのNexus Sユーザー向けにサービスの提供が行われている。日本でいう、いわゆる「おサイフケータイ」に該当する仕組みだといえばわかりやすいだろう。Google Wallet対応を直接うたう小売店など事業者の数はまだ少ないが、Google WalletはMasterCardのPayPassとの互換を持っており、PayPass対応リーダーであればGoogle Walletで決済が行えるようになっている。一方のCantaloupe Systemsは自販機向けの組み込みシステムを開発するサンフランシスコを拠点としたスタートアップ企業であり、自販機の売上状況を無線ネットワークを介してリアルタイムで集計する「Seed」というサービスのほか、これにキャッシュを使わない支払いシステム(例えばクレジットカードなど)を加えた「Seed Cashless」という2つのサービスを持っている。今回は、後者のSeed CashlessにGoogle Wallet対応のためのNFC機能を内蔵したものとみられる。

Cantaloupe共同創設者のAnant Agrawal氏によれば、Google Walletに対応した自販機には同サービスへの対応を示す専用のステッカーを貼附しておくとのことで、もし今後上記のエリアに出かけることがある場合、チェックしてみるといいだろう。ただし、NFCに対応した自販機の数はまだ6000程度であり、Cantaloupeが処理するネットワーク全体の8万という数字と比較すると、まだ1割にも満たない。さらに全米では600万台以上の自販機が存在するということで、いまのタイミングで対応端末に巡り会うのは至難の業かもしれない。

なおGoogle Walletだが、現在は「Sprintから発売されているNexus Sを利用するユーザー」という非常に限定的なサービスとなっているが、これはあくまでまだ実験段階であり、今後対応端末やキャリアを増やしていく意向だとGoogleでは説明している。Googleで同サービスの責任者の1人であるOsama Bedier氏は「当初サービス立ち上げに協力してくれたのがSprintであり、このサービスに賛同してくれるキャリアや端末メーカーがいれば、今後も順次サービスを拡大していきたい。まずはNexus Sの次のモデル(Galaxy Nexus)での対応のほか、準備が完了しだい順次アナウンスしていく予定だ。もちろん日本市場の重要性も理解しており、協力してくれるキャリアがいればサービスを展開していきたい」と語っている。Googleとしては端末やキャリア、そして方式(USIMあるいは組み込み)には特にこだわっているわけではなく、Google Walletとしてのシステムを利用できる仕組みであれば、器や経路は問わないというスタンスのようだ。

Google Wallet責任者の1人のOsama Bedier氏。PayPalの出身だ

ここでいうGoogle Walletのシステムだが、NFCによる非接触型決済という仕組みはその一面にすぎず、あくまでモバイル端末とともに持ち歩かれるユーザーに紐付けられたデータの数々だ。モバイルマネーやクーポンはその一例で、そのほかにもコンサートのチケットや航空チケット、ホテルの予約情報、家や車の鍵まで、あらゆるデータ化可能な情報をNFCのセキュア領域とGoogleのネットワークに封入し、一元管理することにある。こうしたトランザクションをGoogleが仲介することで、それにまつわるサービス連携や広告サービスなど、新たなビジネスとしようというのがGoogle Walletの究極目標だ。まさに万能の「Wallet (財布)」というわけだ。NFCによる非接触型決済システムには多くの事業者が興味を示し、参入を狙っているが、クーポン連携まで含めて踏み込んだロードマップを描いている事業者の数は少なく、その意味で業界からは非常に大きなインパクトをもって迎えられている。一方で日本では、おサイフケータイでクーポンやポイントプログラムがすでに実装されて運用されており、これを大々的にGoogleが世界中で展開しようとしているのが「Google Wallet」だといえるかもしれない。

Google Walletでできること。複数のカードやクーポンを持ち歩ける財布のようなものだ

また直近で気になる動きとしては、MasterCardがmFoundryに出資を行ったという話が出ている。mFoundryは日本では馴染みのない会社だが、同社は金融機関が提供するモバイルバンキングアプリの開発を行っているほか、日本人が利用できるものとしてはStarbucksのカード管理システムアプリを開発していることで知られている。MasterCardの狙いは、mFoundryが多くの金融機関向けモバイルバンキングアプリを開発していることを利用して、同社のPayPassを登録/利用できる仕組みをこれらアプリに導入するよう働きかけることにある。Google Wallet同様に急にサービス拡大につながるわけではないが、水面下での動きとして押さえておくといいだろう。

(提供:AndroWire編集部)

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