2012年はPC業界にとって、一大転換点となる年なのかもしれない。以前にも「もしタブレットをPCの範疇に含むなら、AppleはすでにノートPC界のリーダー」というDeutsche Bankの分析を紹介したが、11月21日にはCanalysという調査会社が同様の観点から「Appleは2012年後半にもHPを抜いてPC業界トップ」という予測を出している。HP自身もこのトレンドを認めており、来年はPCという概念を巡って大きく市場が動くことになるだろう。
先だって米Hewlett-Packard (HP)のCEOに就任したMeg Whittman氏は、前任のLeo Apotheker氏が表明していた同社のPC事業売却計画について撤回を発表し、引き続きPC業界での盟主の座を保ち続ける意向を決定している。そんな同氏にインタビューを行ったフランス紙のLe Figaroが引き出したのが、前述のCanalysの分析を認めるWhittman氏のコメントだ。この件についてはApple Insiderが報じている。
Canalysの分析によれば、iPad販売の好調によりAppleの2011年第3四半期における世界のPC市場でのシェアランキングは2位になるという。2011年通期のPC出荷数は4億1,500万台で、前年同期比15%増。中でもタブレットの出荷台数は2011年末までに5,900万台となり、第4四半期だけで2,200万台になるという。こうした数字の増加の多くはiPadによるものだが、米国市場ではこのほかにKindle FireやNook Tabletなどの端末も含まれるようだ。タブレットの出荷台数が増大した結果として、2011年だけでAppleのPC市場でのシェアは前年の9%から15%へと一気に跳ね上がり、同年第4四半期にはHPと首位の座を争うだけのポジションを占めるという。
混乱する話だが、同社のシェア分析では、いわゆる従来型PCとそれとは異なるOSプラットフォームを持つタブレットのような新しいデバイスが一緒に扱われている。このあたりはIDCなどが発表している最新データなどと比較してみるとその違いがわかるだろう。Le FigaroのインタビューにおけるWhittman氏のコメントも「もし(両者を)一緒に扱った場合、その分析は正しい」というもので、こうしたAppleとの戦いに勝ち抜けるような体制をHPとして整えなければならないという言葉で同氏はコメントを締めくくっている。
筆者自身はPCとタブレットを同列に扱うことに違和感を感じているのだが、来年以降はそうした境界線がより曖昧になり、実際にAppleがPC市場のトップベンダーとして君臨している可能性もゼロではないのかもしれない。