IBMは2011年11月15日(米国時間)、これまで以上に高速で、エネルギー効率に優れ、信頼性の高い高性能コンピューティング・プラットフォームとして、Blue Geneスーパーコンピューター・シリーズの第3世代となる次世代スーパーコンピュータ(スパコン)プロジェクト「Blue Gene/Q」を発表した。

Blue Gene/Qは、技術者や科学者が取り組んでいる難問解決に活用され、ハリケーンの進路予測、海底の石油埋蔵地の特定、核出力性能のシミュレーション、遺伝子配列の解読などに役立てられると同社では説明している。

Blue Gene/Qは、1Wあたり2GFlopsという、高い電力効率を実現しており、これを搭載し、2012年にローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)で本格稼働する予定の「Sequoia」は最大20PFlopsの演算性能を実現可能なスパコンとなっている。

LLNLは、米国エネルギー省の国家核安全保障局(NNSA)が所有する総合国立研究所で、核実験禁止下での国家核抑止力の維持や、電力グリッドおよびネットワーク管理、エネルギーの研究や気候変動といった問題に対して、世界最速クラスのスパコンを適用してきた。IBMでは2011年12月上旬から、96台のラックの納入を開始するとしている。

また、米国アルゴンヌ国立研究所(ANL)も経済成長促進や電気自動車向けバッテリーの設計、気候変動の研究、宇宙の進化の解明などの分野における米国の競争力を向上させる目的でBlue Gene/Qを活用し、「Mira」と名付けられた10PFlopsのシステムを構築することを計画している。

Blue Gene/Qは、新しいIBM PowerPC A2プロセッシング・アーキテクチャを採用することで、前世代機Blue Gene/Pのコア数から4倍の16個のコア(このほか、OSの管理系機能用に専用のコアと、もう1つ予備のコアも搭載)による並列処理と、最大100PFlopsまで拡張可能なスケーラビリティを有している。また、設置面積も小さく、省エネ設計が可能で、2011年6月に発表されたGreen500で、世界で最もエネルギー効率の良いスパコン選ばれているが、低遅延で、高性能なプログラム実行によって、プログラムのエラーの解析や性能最適化を効率よく行うことが可能であり、それらは、すべてオープンソースと標準の動作環境下で提供されているという。

また、冗長設計に基づいて少数の可動部品で構成されているため、信頼性の面でも、同等クラスのスパコンと比べても高い値を示すことが可能だと同社では説明している。

Blue Gene/Qシステムの外観