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MozillaはFirefoxをシングルプロセスアーキテクチャからマルチプロセスアーキテクチャへ移行させる研究的な取り組み「Electrolysis」を進めてきたが、当面の間、活動を停止すると発表した。再開の時期や開発スケジュールなどは発表されていない。少なくとも、当面の間「Electrolysis」として、Firefox全体をマルチプロセス化する取り組みは見送られることになる。

Firefoxはもともとシングルプロセスアーキテクチャで設計されている。これに対し、Chromeは最初からマルチプロセスアーキテクチャで設計されている。マルチプロセスアーキテクチャはタブを大量に開いた場合にメモリを大量に消費するという問題を抱えているが、タブを閉じることで利用中のメモリが確実に開放され、マルチコアの性能を発揮しやすく、セキュリティ上の利点もある。コンシューマPCがマルチコアであり、今後メニーコア時代に入ると見られている現在、開発の方向性はどちらかといえばマルチプロセスアーキテクチャにある。タブレットデバイスやスマートフォンもマルチコア化を進めており、ブラウザのマルチコア対応はひとつの方向性といえる。

こうした状況を受け、MozillaはFirefoxのマルチコア化を進める「Electrolysis」プロジェクトを発足。これまで取り組みを続けてきた。Electrolysisの最大の目的は、コンテンツプロセスからUIプロセスを分離して操作レスポンスを引き上げる点にある。このほかクラッシュプロテクション、マルチコアにおけるパフォーマンスのスケール、サンドボックス化によるセキュリティの向上なども掲げられている。

こうした目的を達成するには、「Electrolysis」プロジェクトの取り組みだけではなく、Firefox全域に渡ってさまざまなプロジェクトと協調しながら開発を進める必要がある。しかし、現在取り組まれているプラグインプロセスの外部化、データベースの最適化、インクリメンタルガベージコレクタの実現など、短期的に実現が確実視されている開発と比較すると、「Electrolysis」の作業は長期に及ぶ可能性が高い。確実に改善が見込める現在の取り組みに注力し、まずは直近のリリースでこうした成果をユーザに届けるというのが、今回「Electrolysis」を休止させる理由として挙げられている。

「Electrolysis」としての活動は休止することになるが、当面の間登場が予定されている各種機能は、Firefoxの操作のレスポンスを引き上げると見られており、ユーザは確実に性能改善の恩恵を受けられる。今後、個別プロジェクトの最適化の結果としてマルチプロセス化が進むのか、もう一度「Electrolysis」として全体として取り組みを続けることになるのか、現段階で公開されているデータからは判断が難しいが、こうした問題に対してMozillaが現実的なソリューションを模索し活動を実施していることは注目しておきたい。