トヨタ、次世代の介護・医療支援向けパートナーロボットを発表

トヨタ自動車は11月1日、新型の「介護・医療支援向けパートナーロボット」の発表を行った。お台場にある同社の無料自動車展示施設MEGA WEBのユニバーサルデザインショウケースで行われた技術取材会の模様は後ほどお届けするとして、まずは発表された4種類のロボットについて紹介する。

トヨタは「すべての人が明るく楽しく生活できる社会」の実現に貢献することを目指しており、2007年には「パートナーロボット」開発ビジョンを発表。人の活動をサポートすることによる新しいライフスタイルの提案として、最終的に人の生活に入ってすぐ隣でさまざまな手伝いをすることを目標とした「パートナーロボット」を開発中だ。

パートナーロボットが社会に役立つフィールドとして、「介護・医療支援」、「パーソナル移動支援」、「製造・ものづくり支援」、「家事支援」の4領域を想定している。技術開発に置いては、工場での重い部品の搭載・移動を容易にアシストする装置のような「人と協調する技術」、自律して動く「自動技術」、「道具を使う技術」などを念頭に取り組んでいる形だ。

今回発表されたのは、介護・医療支援領域で、4種類のロボットを公表した。「自立歩行アシスト」、「歩行練習アシスト」、「バランス練習アシスト」、「移乗ケアアシスト」の4種類である。

自立歩行アシスト(画像1~4)は、下肢麻痺などで歩行が不自由な方の自立歩行支援を目的に開発された。麻痺した脚に装着することにより、自然なヒザ曲げ歩行をアシストする。具体的には、脚を前方に降り出す「遊脚時」は、「大腿部姿勢制御センサ」と「足裏荷重センサ」で歩行委とを推定することにより、ヒザの振り出しをアシストするというもの。そして体重を支える立脚時は、確実に体重を保持する。

画像1。自立歩行アシストのプロトタイプ。装着しているのは、共同研究を行っている藤田保健衛生大学の才藤栄一教授。自身も脚が悪いそうで、自らが装着してフィードバックを行っているという

画像2。自立歩行アシストを真横から。ヒザは才藤教授の判断で、人のヒザのようなロールバック機構を持った複雑な構造ではなく、単軸となっている

画像3。自立歩行アシストのヒザの部分を後方から。メカニズムが見える

画像4。現在、まだ重量があるということで課題となっているバッテリなどを搭載したバックパック。現在は3kgだが、実際の製品になる際には半分にできるめどが立っているという

階段昇降、スロープの登り降り、イスに腰掛けたり立ったりも可能だ。階段はさすがに健常者のようには昇降できないため、健常な脚を1段進めたら自立歩行アシストを装着した脚をその段に移すという1段ずつの形になる形だ。

サイズは幅280mm×奥行き290mm×高さ620~770mm。重量は脚部の装着システムが3.5kgで、背部に背負うバッテリなどを含めたシステムは現状では3kg。装着者の体重は80kgまで。1充電での移動可能距離は現在は1万歩だが、もっと少なくても十分なのでバッテリを減らして背部のシステムは重量を半分以下にするとしている。

2つ目の歩行練習アシスト(画像5)は、前述した自立歩行アシストの技術を応用した歩行練習用装置として開発された。歩行が不自由な人の練習初期段階からの自然な歩行の習得を、段階を追ってアシストするという内容。

画像5。実機が持ち込まれていなかったため、歩行練習アシストは配布画像での紹介。回復具合に合わせてサポート力を変化させられるのが非常にメリットとして大きい

トレーニングマシンのトレッドミルのような仕組みで、体重を支えつつ歩行トレーニングを行う仕組みで、回復に合わせてサポート力を変更できるようになっている。また、関節の角度などの歩行データをモニタリングできるので、練習しながらその成果を確認しやすい見える機能も持つ。歩行練習アシストに関しては、技術取材会での実機の展示・デモは行われなかった。

サイズは自立歩行アシストと同じで、脚部の装置は若干重い4.0kgとなっている。

3つ目のバランス練習アシスト(画像6~9)は、バランス確保が不自由な方のバランス機能練習の支援を目的として開発中のロボットだ。同社がソニーから譲り受けて、現在開発中の立ち乗りの平行2輪倒立振子型パーソナルモビリティ「Winglet」をベースにしており、それにテレビゲームを加えたシステムとなっている。

画像6。バランス練習アシストのプロトタイプ。足腰が衰えてきた時に、このバランス練習アシストを使って、バランス感覚を取り戻すといった使い方をする。ゲームで楽しみつつ、目標を持ってトレーニングできるのがポイント

画像7。画面のゲームはサッカー。自分が左右にバランスを取ると、キーパーが左右に動くので、ボールを防ぐようにうまくバランス練習アシスト本体を左右に動かすのである

画像8。バランス練習アシストの下部を横から。平行2輪倒立振子であることがよくわかる

画像9。バランス練習アシストのハンドル部分

ゲームは、難易度の低い順からテニス、サッカー(ポジションはキーパー)、バスケットボールの3種類を用意。これらのゲームを楽しみながらトレーニングができるという仕組みだ。もちろん倒れないよう歩行練習アシストと同様に天井から利用者をサポートする転倒防止用の仕組みが用意されており、安心してバランス練習に励める。

テニスとサッカーは重心を移すことでプレイヤーキャラクターを操作し、飛んでくるボールを打ち返したりゴールを守ったりということができる。バスケットボールに関しては、バランス練習アシストがわざとバランスを崩すように動くので、それに反応してバランスをもとに戻すという内容になる。これらの結果は当然記録されるので、利用者がどれだけ進歩しているかと行ったことがすぐにわかるというわけだ。こうした仕組みで飽きずに取り組めるので、10回に満たない回数でも効果が現れる人もいるという。

サイズは、幅480mm×長さ700mm×高さ1100mm。重量は21.3kgで、100kgまでの体重の人が利用可能。

そして最後の移乗ケアアシスト(画像10~13)。これのみ要介護者だけでなく、その介護を行う介護士や看護士などの負担軽減も図ったロボットである。下肢障害のある人がベッドから車いすなどに移乗する際には、介護士らが全力でもって体重を支えてあげるわけだが、それで腰を痛めてしまう介護士らが非常に多いという事実は、長年介護の現場で問題になっている。移乗ケアアシストはそれを防ぐためのもので、要介護者が上半身ごと体重を預け、それを抱き留めるようなロボットとなっている。

画像10。移乗ケアアシストのプロトタイプ。体重100kgまでの人でも受け止めてもらえるので、かなり大型で重量感がある。体重のある人を支えるためには重量がないと安定しにくいわけだが、一般家庭向きには小型軽量化が望まれるという、相反する部分が今後の開発の課題

画像11。移乗ケアアシストを反対側、要介護者が体重を預ける側。要介護者が接する緑色の部分はもちろんソフトな作りになっている

画像12。要介護者は胸の辺りで身体を預けるようにして利用する形で、両脇をアームが挟んで支えてくれる状態になる。これなら介護士が腰を痛める心配がない

画像13。移動は、アシスト機能があるので介護士が力をかけずに押していける。また、少し移動に時間がかかる場合は、要介護者にはイスを引き出して座ってもらうことも可能

状況に合わせて移乗ケアアシストの上半身は、アームが閉じたり開いたり、全高も変わるので、上半身で体重を預けているだけでなく、備え付けのイスに座ることもできる。そして、搭乗したままアシスト機能があるので楽々トイレなどにも移動できるというわけだ。

介護者が1人で見守れる形になるので、現状は介護者が2人がかりで行っている要介護者のオムツの取り替え(1人が要介護者を抱きかかえ、もう1人が取り替えるという具合)も、障害者にとってプライバシーの面でも改善するというわけだ。

サイズは幅700mm×長さ995mm×高さ900mmと今回の中ではズバ抜けた大きさ。重量も140kgあり、体重100kgまでの人が利用可能だ。

なお、介護・医療の現場においては、病気・ケガなどで身体の不自由な人や高齢者の自立生活、および自立するためのトレーニングの支援、介護する側の体力的負担の軽減、といった面でロボットへのニーズが高いという現状を踏まえ、すべての人に移動の自由を提案するという観点から、同社はトヨタ記念病院など医療や介護の専門機関と連携して重点的に取り組んでいるとしている。

またいずれのロボットも、これまで同社が技術開発の中で培ってきた高速・高精度なモーター制御技術、2足歩行ロボット開発で進めてきた安定性の高い歩行制御技術やセンサ技術など先進的な要素技術を採り入れているのが特徴だ。

さらに、今回のロボットたちの開発は、愛知県の藤田保健衛生大学と共同で進めている。大学側の代表として開発に大きく関わっている才藤栄一教授の意見や、専門医療機関でのニーズなどをもとに今回の4台は開発が進められているとした。

そのほか、今回紹介した介護・医療支援以外の領域においても、パーソナル移動支援は商業施設などでの実証実験、製造・ものづくり支援は自動車製造工程での実用稼働を実施しており、家事支援についても研究開発を進めているとしている。

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