Freescale Semiconductorは、安全規格のIEC60730に準拠した32bit ColdFireの新製品であるMCU「MCF51AG128」を発表した。これは自動車用のみならず、洗濯機や食器洗浄機、冷蔵庫、オーブンレンジ、エアコンや産業用ポンプ/モーター、ファン/コンプレッサなど幅広い範囲のアプライアンス向けとされる。

AG128は2.7V~5.5Vの駆動電圧で50MHz駆動され、128KBのFlash Memoryと16KBのSRAMを搭載する。複数のパッケージオプションが用意されるほか、GPIOの機能が拡張され、レイアウトや量産に最適なフレキシビリティが提供される。内蔵する周辺機器には、3相モーター制御に適した16bitのFlexTimerと高速なアナログコンパレータ、PWMハードウェアトリガを内蔵した12bitのA/Dコンバータ(ADC)を含む。

「MCF51AG128」の機能ブロック図

また安全性関係では独立したクロックで動作するCOP(Computer Operating Properly)や外部のウォッチドッグタイマ、またIEC60730に定められた、メモリ内容の正当性確認やクロックエラー防止のためのCRCエンジンなどが含まれている。また。DMAエンジンとiEventモジュールにより、データトランザクションや割り込み制御をCPUからオフローディング可能であり、これによりCPUのオーバーヘッド削減が可能とトータルパフォーマンス向上が期待できる。

AG128を用いての開発を迅速に行うために、Freescaleは「TWR-MCF51AG」Tower Systemを提供するほか、ソフトウェア開発環境として「CodeWarrior Development Studio for Microcontrollers V6.3」を、またAG128をサポートするMQXソフトウェアソリューションでは、DMAやiEvent、周辺機器のドライバを含むBSP(Board Support Package)を提供する。またコンパレータを使った3相ブラシレスBLDCモーターの制御デモや、HMI(Human Machine Interface)用にeGUIや、タッチセンサ関連ソフトウェアも提供される。

MCF51AG128 MCUはすでに入手可能で、推奨価格は2.91ドルからとなっている。

加えて同社は、同社のDSP「MSC8156」の後継製品となる「MSC8157/8158」を発表した。これらの製品はFreescaleのSC3850コアを1.2GHz駆動で動作させたものである。

MSC8158はWCDMAネットワークをより低コスト/高スループットで構築することを可能にする製品であり、MSC8157は3G/4Gワイヤレスをフルにサポートする。どちらの製品も、従来の基地局構築に必要だったACICやFPGAを不要にすることで、部品原価を大幅に下げる事が可能としている。

MSC8157/8158は、高スループットへの要求に対応するため、従来のMAPLE-Bベースバンドアクセラレータの改良型である「MAPLE-B2」を搭載している。これにより、多くの算術演算やベースバンド処理に起因する処理をMAPLE-B2にオフロードすることにより、6つのDSPコアをその他の仕事に割り振ることが可能である。たとえばMIMOの浮動小数点処理をMAPLE-B2に行わせる事で、同じ処理をDSPコアに行わせた場合と比較してレイテンシを大幅に削減できるという。

MSC8157は3G-LTEの20MHzの帯域を使い、4×4 Download/2×4 UploadのMIMO構成で300Mbps Downlink/300Mbps Uplinkの転送速度を、さらにさまざまな電波干渉キャンセルの手法を使いながら数百人のユーザーに提供する能力を持つ。DSPコアはまた、42Mbps Downlink/11Mbps Uplinkの複数のWCDMAセクタを同時に処理することができ、これにより3G-LTEとWCDMAの同時サポートが可能である。内蔵するハードウェアアクセラレータにはFEC、FFT/DFT、MiMO MMSE(Minimum Mean Square Error)、MLD(Maximum Likelihood Decoder)などを含んでいる。

MSC8157はDDRメモリインタフェースやample内蔵メモリ、CPRI(Common Public Radio Interface)6Gアンテナインタフェースや2つのSerial-RapidIO Gen2を装備する。またMSC8157/8158はWCDMAチップレートアクセラレーション機能を持つDSPコアを内蔵しており、OEMが自身でASICあるいはFPGAを開発する必要がない。高スループットの柔軟なチップレートアクセラレータは、最大512物理チャネルをサポートしており、OEM独自のチップレートアルゴリズムを利用することも出来る。

開発に当たってはCodeWarrior suiteが提供されるほか、3G-LTEやWCDMA向けに最適化したソフトウェアカーネルを含むMSC8157ADS評価ボードも用意される。MSC8157/8158は特定の顧客向けに、2011年第1四半期にサンプル出荷を開始する予定とされる。