決算の概要を述べるルネサス エレクトロニクス代表取締役社長の赤尾泰氏

ルネサス エレクトロニクスは10月27日、2011年3月期第2四半期(2010年7~9月)決算ならびに同上期の決算概要を発表した。同第2四半期の売上高は前年同期比304億円増の2954億円、そのうち半導体売上高は同291億円増の2635億円、営業損益は同450億円改善し11億円の黒字となった。また、経常損益は441億円の改善となるも、為替差損や支払利息などの営業外費用により43億円の損失となり、同じく純損益も466億円の改善となるも30億円の特別損失の計上などの影響もあり82億円の損失となった。

これにより、同上期業績は、売上高が5874億6800万円、営業利益が7億2900万円、経常損益が78億200万円の損失、純損益が412億4100万円の損失となった。

2011年3月期第2四半期の業績概要

第2四半期の事業別半導体売上高は、マイコン事業が汎用マイコンが前四半期比で横ばい、自動車向けが国内メーカーを中心に需要減により減収となるも、前年同期比では17%増となり959億円、アナログ&パワー半導体事業は前年同期比では30%増となるが、前四半期比ではパワー半導体が堅調に推移したものの、大型パネル向けドライバICが減収となり、全体で横ばいとなる835億円、SoC事業は通信機器分野が国内携帯電話の需要低迷の影響を受けた結果、事業全体で前年同期比では5%減となるも、民生機器分野や産業機器分野向けシステムLSIを中心に前四半期比では増収となった結果、832億円となった。

同四半期の半導体売上高の内訳

今回の業績発表にともない、同社は通期業績の見通しの変更も発表している。これにより通期の売上高は、前回予想比で200億円減少となる1兆1700億円、そのうち半導体売上高は同400億円元となる1兆500億円を見込むも、営業損益、経常損益、純損益についてはそのまま70億円の利益、50億円の損失、800億円の損失を据え置いている。

下半期の売上高を下方修正するも、損益に関しては据え置きとした

また下期の半導体売り上げの見通しについては、マイコン事業が売り上げの55%を占めると見られる汎用マイコンについて、強みを持つインバータ機器向けマイコンが引き続き堅調であり、スマートメータ(電力メータ)向けマイコンをはじめとする中国市場向け製品についても拡大を見込んでいる。また、残りの45%の売り上げを占めると見られる自動車向けマイコンについては、日本市場における販売支援策の終了などにより下期前半にかけては減速感がみられるものの、中国、新興国市場は引き続き強い需要であり、日本市場においても下期後半から年度末にかけて需要の回復を見込んでいるという。

マイコン事業の下半期見通し

アナログ&パワー半導体事業については、売上高構成比をパワー半導体25%、化合物半導体20%、表示ドライバで20%、アナログICその他で35%としており、産業機器向けや中国、新興国市場に対する家電製品向けパワー半導体は引き続き堅調に推移すると見込んでいるものの、パソコン周辺機器の在庫調整などにより、アナログICにおいて需要減を見込んでいるという。

アナログ&パワー半導体事業の下半期見通し

そしてSoC事業については、売上高構成比を携帯電話向けで30%、民生機器で30%、PC周辺で20%、その他で20%としており、スマートフォンを中心とした先進国の買い替え需要や、新興国における需要増により、携帯電話端末向け半導体が伸張すると見込んでいるほか、日本におけるアナログ停波の影響や、LED、3Dテレビなどによる需要喚起により、デジタルテレビ向け半導体においても、引き続き堅調に推移すると見込んでいる。

SoC事業の下半期見通し

同社では、いずれの事業においても、出荷数量ベースでは引き続き堅調な推移を見込むものの、特に対米ドルにおいて円高が進行していることによる為替インパクトが大きいことなどにより、下期の半導体売上高は上期比で横這い程度になると見込んでおり(通期業績の見通しに関する通貨レートは1ドル82円、1ユーロ110円を前提に計算)、来年度の黒字化および中期的な営業利益率2桁の実現を目指し、各種構造改革を着実に進めていくとしている。

なお、同社は構造改革の一環として、取締役会において早期退職優遇制度を実施することを決議した。これは、すでに通期業績見込みに織り込んでいる生産構造対策で約530億円、人的効率化対策で約240億円、合計で約770億円の特別損失の具体策の1つであり、対象者は2011年3月31日時点で勤続5年以上かつ満40歳以上の同社および国内連結子会社の社員で、募集期間は2011年1月17日から2月15日の間で退職日は3月31日としており、1200名程度の応募を想定しているという。優遇措置としては、通常の退職金に特別加算金を加算して支給するほか、希望者に対しては、外部の就職支援会社による再就職支援を実施する予定。

構造改革の全体的な流れ。人的効率化の1つとして、早期退職を実施

また、併せて携帯機器やカーナビゲーション向けを中心としたSoCなどを手がけるモバイルマルチメディア事業を、吸収分割の方法により、新たに設立した連結子会社「ルネサス モバイル株式会社」に対し、2010年12月1日を効力発生日として承継させることを決議したことも発表している。

新会社には11月30日に完了するNokiaのワイヤレスモデム事業の買収により得られる各種権利義務なども譲渡・継承される予定で、フィンランド、インド、英国、デンマーク、中国などに拠点を構えるNokiaのワイヤレスモデム事業の従業員も承継する。このためフィンランド、インド、中国に地域会社を新たに設立、各地の従業員を11月30日付で新地域会社に移管するほか、これらの地域会社に加え、既存のSoC設計会社であるルネサス デザインフランスも、新会社の傘下とし、約1,800人の従業員(内海外従業員比率は約75%で、Nokiaから移る人員は1100名程度)を抱えるグローバルなマーケティング・設計開発企業となる予定。

モバイル関連事業として、SH-Mobileやカーナビ関連のチップ事業を移管するほか、RFIDなどの無線通信関連もルネサス モバイルに移管される予定

2010年度第4四半期にはLTE/HSPA+技術を搭載した初のモデムチップセットをサンプル出荷し、Nokiaなどのカスタマに提供していく予定としており、マルチメディア事業の売り上げを2009年度実績の900億円から、2012年度には2倍へ、海外市場を中心に拡大していくことを目指すとする。