CSRは、次世代コネクティビティプラットフォーム「CSR8000」を発表した。同プラットフォームは、ワイヤレスで接続されたデバイスの音質向上を実現するもので、BluetoothおよびBluetooth low energy(BLE)デバイスなどのエコシステムを拡大するものとなる。

同プラットフォームの第1弾製品としては、携帯電話向け「CSR8810」「CSR8811」、PC向け「CSR8510」、車載機器向け「CSR8311」の4製品がラインアップしており、2010年末ころのBLEのプロファイルの策定が終えた後に、同プロファイルに対応した「CSR8511」の発表する予定としている。

CSR8000シリーズのラインアップ

CSR8311はQFN 0.5mmパッケージを採用しており、モジュール開発用にUSBとUARTの両方の使用を可能としている。また、CSR8510はタブレット、ノートパソコン、ネットブックなどのPCアプリケーション向け製品で、Bluetooth v4.0への対応と共に、Bluetooth v3.0システムに完全準拠。フルスピードのUSB 2.0インタフェースを搭載している。CSR8511は、CSR8510の機能にBLEを搭載したものとなる。

CSR8000の概要

CSR8510/8511の概要

CSR8311の概要

そして、CSR8810/8811は、Bluetooth v3.0およびBluetooth v4.0をサポートすると共に、IEEE 802.11との共存、およびWideband Speech(HD Voice)を提供する。音声処理用DSP「Kalimba」を搭載しており、これによりオーティエンコーディングやノイズキャンセレーションなどを実現することが可能なほか、すでにOrangeなどの日本国外のキャリアで用いられている通話技術であるHD Voiceも実現することが可能となっている。

CSR8810/8811の概要

HD Voiceは、音声リンク帯域を従来の黒電話並みの4kHzから、8kHzに向上させることで、音声の明瞭度を増し、ノイズの多い場所などでも音声識別を容易にする技術。これにより、ノイズが乗って聞き取りづらい携帯電話の会話や、車載機器での音声操作の認識率向上などが可能となる。

HD Voiceへの対応により、音質改善が可能となる

シーエスアール代表取締役社長の横山崇幸氏

なお、CSR8000シリーズの開発に伴い、Kalimbaの性能も従来の60MIPSから80MIPSへと向上させれおり、「すでに一部の海外携帯電話キャリアでHD Voiceを実用化しているが、せっかくの高音質化も、最後のBluetoothヘッドセット部分で音質が劣化していた。それではまったく意味がないので、CSR8000は、ハンズフリーでも高音質を実現できることを目的にDSPの強化を行った」(同社日本法人シーエスアール代表取締役社長の横山崇幸氏)とのことで、強化されたDSPに加え、同社が2010年8月に買収した放送局向けネットワークCODECベンダのAPT Licensingの低遅延オーディオ圧縮CODEC「apt-x」と組み合わせることで、CD品質のステレオ音声も実現可能となるとする。

同プラットフォームは、用途に応じて同社のコネクティビティ・ソフトウェア・フレームワーク「CSR Harmony」(PC向け)もしくは「CSR Synergy」(携帯機器、車載機器向け)をホストプロセッサに搭載。同ソフトがCSR8000側を制御することで、プロセッサパワーに頼ることなく、CSR8000が音声処理や無線通信を行うことが可能なため、Bluetoothなどの技術に精通していなくても、これらの技術を容易に扱うことが可能となる。

CSR8000のアーキテクチャのイメージ図。BluetoothとBLEはRF部は共有しており、プロトコルが異なるという構造になっている。ちなみにアーキテクチャの各種処理を行うプロセッサは無線処理に特化した独自開発のRISCコア「XAP」を用いているとのこと

各製品の出荷スケジュールは、CSR8810およびCSR8811がすでに量産出荷を開始しており、CSR8510およびCSR8311も2011年初頭までには量産出荷を開始する予定としている。なお、同社ではすでに大手ハンドセットベンダ4社がCSR8000シリーズの採用を決定しており、2010年末までに少なくとも2モデルが発売される予定とするほか、2011年にはさらに多くの機種が登場する見込みとしている。