ばら星雲(ロゼット星雲ともいう)の名で親しまれている散光星雲は、地球から約5,000光年離れたところにある。残念ながら肉眼では確認することはできないが、望遠鏡に特殊なフィルタを付けて撮影すると、バラの花飾り(ロゼット)のように、深紅の美しい星雲が映し出されることからこう呼ばれている。今回紹介するのは、通常の望遠鏡では捉えることのできない、"大輪のバラ"を詳細に表現した一枚だ。

チャンドラX線観測衛星のデータと、光学写真データベース「Digitized Sky Survey(DDS)」の画像および米アリゾナ州ツーソンに設置されているキットピーク国立天文台の撮影画像(可視光)を合成することで鮮やかに浮かび上がったばら星雲の姿

ばら星雲はいくつかの星団やガス、ちりなどが組み合わさってその姿を成している。中央部に位置する星団はNGC 2244と呼ばれ、数百個の星で形成されている。そして右側の点々と赤く見える光を放っている星団がNCC 2237だ。雲の部分がひび割れたように見えるのは、巨大質量星の強い放射がガスを浸食しているからだと思われる。

チャンドラが捉えたX線の光は赤く表示されており、白線で囲んである部分に存在している。右側のNGC 2237には、これまで恒星の数は36個しか確認されていなかったが、チャンドラの観測により160個はあることが判明した。

最近の研究により、ばら星雲はまず中央のNGC 2244が形成され、それからちりやガスが拡がって星雲となり、その星雲から新たにNGC 2237を含む周囲の星団が形成されたことがわかってきている。このエリアでは新しい星々が続々と誕生していると見られており、今は暗く見える部分も近い将来(といっても数億年後だろうが)には明るい光があふれ、深紅のバラの花はさらに大きく美しく咲き誇ることになるのかもしれない。