産業技術総合研究所(産総研)および名城大学大学院の研究チームは、高純度の単層カーボンナノチューブ(単層CNT)を電極とするキャパシタを試作、その性能を評価し、従来の活性炭電極キャパシタよりも高い電圧で安定に動作することを確認したことを発表した。
キャパシタの電極としては従来、比表面積が大きな活性炭が使用されてきたが、粉末である活性炭を電極に成形するには導電性の結合剤が必要で、結合剤や活性炭表面の不純物、官能基が劣化を促進するため、3V以下の電圧しかかけられず、3V以上の電圧をかけると寿命が短くなる問題があった。
単層CNTは、繊維状の構造を持つため結合剤を使わずにシート化することができ、かつ導電性があり、比表面積が大きく、表面に官能基がないなど、キャパシタ電極として理想的な特性を持つことから研究開発が進められてきた。しかし、従来の合成法では触媒を取り除く際に表面に官能基が付加されてしまうため、キャパシタ電極としての十分な性能が確認されていなかった。
今回、研究チームでは、電極に用いた単層CNTをスーパーグロース法により合成、金属触媒の除去など、特別な処理を行わない状態で使用した。この状態でも、炭素純度は99.98%を実現しており、CNT以外の炭素不純物は2%以下、CNTの99%が単層CNTで多層CNTがほとんどなく、大きな比表面積(1300m2/g)を持つ。合成した単層CNTは一方向に配向しており、それを圧縮した後、電解液(テトラフルオロホウ酸テトラメチルアンモニウム/炭酸プロピレン)に浸すことで高密度化して電極を作製した。
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a)単層CNT電極の走査型電子顕微鏡画像。白矢印はCNTの配向方向を示す。b)活性炭電極の走査型電子顕微鏡画像。c)集電体なしの単層CNT電極を用いたキャパシタの構造。d)集電体つきの単層CNT電極を用いたキャパシタの構造 |
単層CNT電極は21S/cmと集電体がなくてもキャパシタ用電極として十分な導電率を持つため、試験用キャパシタはセルロースセパレータを挟んで電極シートを重ねただけで集電体を使わない構造のもの、および白金メッシュを集電体として用いたものの2種類が試作された。また、比較のため、活性炭YP17、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カーボンブラックを材料とした電極も作製。集電体は白金メッシュとし、電解液も単層CNT電極と同じものが用いられた。
これら3種類の電極を用いて試作したキャパシタの性能試験の結果では、単層CNT電極キャパシタはどちらも0~4Vで安定した動作を示したほか、定電流放電を行い比キャパシタンスとIRドロップを算出。単層CNT電極キャパシタはどちらも比キャパシタンスが活性炭電極より大きく、IRドロップは小さくなり、集電体なしの単層CNT電極を用いたキャパシタのエネルギー密度は67Wh/kg、パワー密度は93kW/kg、また集電体がある場合は、それぞれ94Wh/kg、210kW/kgとなった。
さらに単層CNT電極キャパシタについては0~4V、活性炭電極キャパシタについては0~3.5Vの動作電圧で1000回の充放電試験を実施。単層CNT電極キャパシタは集電体の有無にかかわらず、キャパシタンスの減少率は3.6%であったが、活性炭電極キャパシタでは46%減少したことが確認された。
今回の単層CNT電極をキャパシタデバイスに用いた場合、パッケージされた製品としての性能を試算してみると、市販の電気2重層キャパシタデバイスよりも高いエネルギー密度(17Wh/kg)と高いパワー密度(24kW/kg)となることが判明した。これは、集電体が不要なのでデバイスを軽量化できることと、不純物を含まず比表面積の大きい単層CNTを使用することで動作電圧が上がったためであると研究チームでは説明している。また、一般にキャパシタは2次電池に比べてエネルギー密度が小さいが、今回の電極を用いると、重量当たりのエネルギー密度では市販の鉛2次電池と同程度のデバイスを実現できる可能性があり、集電体を使用しないキャパシタは、軽量化に加えて、構造がシンプルなため製作工程が簡素化できるほか、電解液中に金属があることによる電解質の分解・劣化を防ぎ、長期間使用できるメリットもあるという。
なお、研究チームでは今回の成果を踏まえ、高純度単層CNTキャパシタ電極を利用して、集電体を使わず構造が単純で、軽量なマイクロキャパシタ開発を目指すとしているほか、さらに高い電圧で動作するキャパシタの実現も目指し、将来は、小型軽量で、かつ高出力を必要とする携帯電話・モバイルPCなどの携帯電子機器やユビキタスデバイスへも応用していきたいとしている。
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