清水建設は、カーボンナノチューブ(CNT)の分散化技術を開発したことを明らかにした。

CNTは高い素材特性からさまざまな応用が期待されているが、炭素繊維でできたチューブが絡み合ったバンドル状態のため、分散性、可用性が欠けており、それが普及を妨げる要因となっていた。

同技術は、同社が7年かけて開発してきた技術。高速気流中でCNTのバンドルを衝突させると、バンドルがほどけ、球状粒子の集合体に変化、親水性が備わることを発見。同分散化技術を「高速気流衝撃処理法」と命名し、最適な気流発生装置や気流速度、処理時間を求めることで、特許の申請も行っているという。

従来のカーボンナノチューブ

高速気流衝撃処理により球状化したカーボンナノチューブ

具体的には、ファンの回転で高速気流を発生させる装置の中にCNTを投入、10分程度の間、100m/秒の回転気流によりCNTに衝撃を与える処理方法。この処理を施したCNTは、バンドル状態がなくなり、直径が1~5μm前後の球状粒子の集合体に変化する。親水性が向上する理由は、球状粒子の表面に酸素が付着し親水性の官能基(水酸基・カルボキシル基)が生じること、そしてゼータ電位(液体中に分散された粒子の分散安定性=凝集しにくさの指標)が上がることと考えられている。

また、この処理により、CNTのかさ密度が未処理の場合の2~5倍になるため、容器などへの充填性が向上するとともに飛散防止にも貢献できるようになるほか、各種の樹脂・金属などとの混合・成型が容易になるなどの特長が生じる。

さらに、添加剤や溶剤、特殊な処理装置が不要なことから、CNTの物性変化の防止と素材処理費用の削減も可能だという。