「いまだから言えるちょっとした話」というのだろうか、米Oracleに買収された米Sun Microsystemsの元CEOだったJonathan Schwartz氏が、最近Appleが特許侵害でAndroid携帯の主力メーカーである台湾HTCを訴えたことを受け、「Googleの心中を察します、私も(Apple CEOの)Steve Jobsに訴訟をちらつかされました」と告白している。
これはSchwartz氏がSunの元CEOとして、そして当時言えなかったようなことや興味あることなどをつづっているブログ「What I Couldn't Say… (私が言えなかったこと)」の3月9日の最新エントリー「Good Artists Copy, Great Artists Steal (よいアーティストはコピーし、偉大なアーティストは盗む)」での発言だ。2003年当時、Project Looking Glassと呼ばれるLinuxデスクトップのプロトタイプをSunが公開したが、Jobs氏がSchwartz氏のオフィスを呼び出して「これらはすべてAppleのIP (知的所有権、つまり特許)を侵害しているぞ」と述べ、もし製品化するようなら「訴える」と脅してきたという。
このときSchwartz氏は「先日、あなた(Jobs氏)のプレゼンテーションを拝見しましたが、そこで使われた"Keynote"は"Concurrence"に非常に似ているようですが、あなたはそのIPをお持ちですか?」と返事したという。Concurrenceとはプレゼンテーション用製品で、Lighthouse Designによって開発された。このLighthouse Designは1996年にSunが買収した会社だが、もともとLighthouse DesignはJobs氏の会社NeXTがリリースしていたNEXTSTEP向けのアプリケーションを開発していた会社であり、Jobs氏自身がConcurrenceを長年にわたって使用し、Keynote開発にインスピレーションを受けていたとしても不思議ではない。しかも現行のMac OS XはNEXTSTEPを源流に持っており、そのカーネルはUNIXベースで開発されている。「私が調べたところによると、Mac OSは現在UNIXで作られているようですが、Sunも幾分かのOSに関する特許を持っていると推察します」とSchwartz氏が言葉を続けると、Jobs氏は押し黙ってしまったという。
最終的には多くの読者の方がご存知のように、このLooking Glassの製品化プロジェクト自体が終了してしまい、現在はオープンソースとして生き残っているに過ぎない。Schwartz氏の主張は、こうした脅しにも関わらずSunの計画自体を曲げることはできなかったというものだ。そもそものLinuxデスクトップの発想は「企業が新しいデスクトップ環境を欲している」からきたものだが、結果論として「CIOではなく開発者に意見を求めるべきだった」として、間違った対象の意見を反映してしまったことが戦略ミスにつながったと結んでいる。
なお、Schwartz氏の「Good Artists Copy, Great Artists Steal」のエントリーではこの後、SunにMicrosoft会長のBill Gates氏が訪問した際のエピソードや、過去のJava技術などにまつわる特許紛争の裏話などが記載されている。もし機会があるようだったら、後日改めて紹介したい。