日立情報通信エンジニアリング(日立JTE)は3月9日、AlteraのFPGA「Stratix IV GX」を搭載した次世代規格の画像処理に向けた開発検証ボードおよび関連ソリューションを発表した。

日本アルテラのマーケティング部 ディレクタの堀内伸郎氏

同ボードおよびソリューションを提供することに関して、日立JTEと共同開発を行ったAlteraの日本法人である日本アルテラのマーケティング部 ディレクタの堀内伸郎氏は「組み込み開発においては、さまざまな開発ボードがこれからも提供されてきたが、そのまま開発に持ち込めるボードというものは少ない」とし、一般的な組み込み機器向け開発ボードが、さまざまな用途に対応するため汎用的な機能を付けすぎていること、ならびにボード単体の提供のため、複雑化する機器に対し、アプリケーションやインタフェースなどの開発をカスタマ側で行う負担が増大した結果、カスタマからは余分な機能を省き、各アプリケーションに特化した状態で、基本的なソフトウェアなども付与したソリューションとしての提供が求められるようになってきたことを指摘する。

これについて堀内氏は「今までFPGAベンダとして我々はFPGAの提供を行ってきたが、ではそれぞれの分野に対するソリューションとしてはどうだったかを考えると、それは弱かったというしかない」と述べ、その補完の意味として日立JTEと共同でパッケージとして提供することで、互いの強みをセットして提供することができるようになった、と説明する。

今回提供されるソリューションは主に次世代ハイビジョンとされる「4K2K」や、次々世代と目されるハイビジョンの16倍の解像度を持つ「スーパーハイビジョン」といった次世代画像を採用した機器の開発に向けたもの。

同ソリューションの活用により次世代画像処理開発の効率向上と開発コストの削減が可能となる

日立JTE側の組み込み開発加速ソリューション「DesignBench」とAlteraのハイエンドFPGAの1つであるStratix IV GXを採用したことで、各種IPコアやカスタム機能などの提供が可能となるほか、IPコアにはAlteraの開発ソフトウェア「Quartus II」に標準搭載されているシステム統合ツール「SOPC Builder」を利用できるように設計されている。

同ソリューションの活用によりハードウェアとソフトウェアの協調開発ができるようになり、結果として開発効率の向上と短納期化を実現できるようになる

では何故今回アプリケーション特化型ソリューションの第1弾として画像処理が選ばれたのか。ターゲットは先述もしたが次世代ハイビジョンなどの高解像度分野の画像処理やビデオプロセッシングなど。放送、メディカル、産業機器などの分野では、これまでもFPGAを活用して画像処理アプリケーションを活用してきたが、今後は次世代ハイビジョンなどの高精細な画像が求められることとなるためである。

日立JTEの経営・事業企画本部 企画部部長である海老名修氏

同ソリューションを活用することで、どのような効果を開発者が得ることができるのか。これについて日立JTEの経営・事業企画本部 企画部部長である海老名修氏は、ボードのみならずソリューションとしてインタフェース部分などのIPなどを含めて提供することで、開発の品質向上および開発期間を最大30%短縮できるものとの試算を出している。

開発ボードにはFPGAとしてStratix IV GXが2つ。そしてCPLDであるMAX IIが搭載される。このうち、2つのStratix IV GXはメインロジック部分と、システムの制御などを行う部分を別々に収納するために分けられている。メインロジック部にはロジックエレメント(LE)数22万8,000の「EP4SGX230」もしくはLE数53万1,200の「EP4SGX530」の2種類のStratix IV GXが、システム制御部分には同230とLE数10万5,600の「EP4SGX110」を選択可能。ただし、基本的な組み合わせとしては、ロジック部/システム部として530/110もしくは230/230の2つとなっており、その他の組み合わせについては、個別対応となる。

開発ボードの構成説明(左)と実ボードの画像(右)

ちなみにロジック部とシステム部に分けたことについて海老名氏は、「こうすることでロジック部の書き換えを行っても、システムのリブートを行わなくて済む」と説明するほか、日立JTEの提供する拡張インタフェース「LogicBench」を活用することで、さらにFPGAを追加してロジック部のLE数を増設することが可能となる。

また、IPとしては、画像入出力インタフェース(3G-SDI、HD-SDI、DVI、HDMIなど)のほか、チップ間バスブリッジ、JPEGエンコーダ、画像処理向けメモリ制御「DMAC」、CPUコアなどが基本IPとして提供される予定。こうしたIPを用いることで余計なインタフェース部分などの開発に煩わされることなく、カスタマは独自部分に注力して開発できるようになることを海老名氏は強調する。

ソリューションとして提供されるため、各種IPなども合わせて提供されるほか、個別のIP開発も対応するという

なお、価格としてはソリューションとしての提供のため、個別相談となるが、最低限の基本構成としてはボード500万円、インタフェースなどの基本IP各種で200万円、サポートなどで300万円、合計1,000万程度からとしている。また、日立JTEでは第2弾、第3弾として無線通信分野や光通信などを検討しており、今回のボードにオプションとして提供する可能性もあるとする。