アダプテックジャパン 代表取締役で北アジアセールスの稲葉知彦氏

Adaptecは11月12日、同社が9月9日に発表したデータセンタやクラウドコンピューティング環境下でのパフォーマンス向上を実現することが可能なSSDキャッシュパフォーマンスソリューション「MaxIQ」に関するテクノロジーセミナーを開催、ユーザーへの機能紹介などを行った。

同社日本法人のアダプテックジャパン 代表取締役で北アジアセールスの稲葉知彦氏は、同製品について、「サーバの性能を向上させるポイントはどこかを常に社内で検討してきた。その中で、1996年から2009年までの間、CPUのパフォーマンスは175倍に向上したのに、HDDのパフォーマンスはわずかに1.3倍。このパフォーマンスの差分をいかに埋めるかがポイントになると考え、SSDの活用に至った」と、その開発経緯を説明する。

CPUとHDDのパフォーマンス向上速度は桁違いの状況となっている

MaxIQは、ランダムリード負荷の大きいアプリケーションへ注力した製品であり、「リード系が多発するアプリケーションでの性能が見込める」(同)という。同社が実施したベンチマークでは、MaxIQとしてSSDを1台、Seagateの15,000rpmのSAS HDDを12台接続、ランダムリードで約11倍、Webサーバで約5倍、ファイルサーバで約4倍、OLTP(Online Transaction Processing)で約4倍のパフォーマンス向上が確認されたという。

MaxIQはランダムリードの大きいアプリに特化した製品という位置づけ

非使用時との比較では4~5倍のパフォーマンス向上が見込めるという

A.T.WORKSによる評価結果が公開

技術的な概要については、既報のとおりなので、詳細は省くが、同セミナーではリンクと共同で専用サーバサービスなどをat+linkとして提供するエーティーワークス(A.T.WORKS)が、実際に自社サーバにMaxIQを搭載した評価結果を公開した。

評価方法は、自社サーバである「radserv XG1」(CPU:Intel Core 2 Quad Q9000、メモリ:2GB、HDD:Adaptec 5405を用いた320GB2台によるRAID1、OS:Windows Server 2008)4台(内1台にMaxIQをインストール)と、クライアントPCを接続。テストツールとしてMicrosfotの提供するWCAT 6.3を用い、クライアントPCに仮想クライアントを複数作り、負荷を与えた。

テスト環境の概要

静的Webコンテンツでのテストでは、11S 7.0にて、約750のhtmlファイルを公開(コンテンツ合計約7.5GB)。クライアントはWCATを用いて、仮想クライアントからこれらのファイルをランダムに数時間アクセスさせた。確認方法としては、サーバのパフォーマンスカウンタを使用して「Disk Read Bytes/sec」および「Requests/sec」の値を取得した。

結果は、Disk Read Bytes/secの方はMaxIQが105.79MB/sとなり、非搭載版(スタンダード)が56.65MB/sとなった。これは、複数評価を実行したため、スタンダード、MaxIQともに最初からキャッシュされている状態の可能性があるとするほか、スタンダードもクライアントのシステムキャッシュからデータを読んだことが推測されるが、それでも単純に性能比較をした場合、これだけの性能差は評価できるとした。なお、使用したネットワークの回線速度が1Gbps(128MB/s)であり、MaxIQの速度がほぼ理論値ということもあり、さらに速い回線を用いた場合、性能差はさらにつく可能性があるとした。

静的Webコンテンツでのテスト結果(Disk Read Bytes/sec)

また、Requests/secの方の試験結果は、MaxIQが10.64 Requests/secとなり、スタンダードが5.46 Requests/secとこちらも2倍程度の差となった。

静的Webコンテンツでのテスト結果(Requests/sec)

一方、動的Webコンテンツでのテストも実施。こちらはIIS 7.0にてデータベースアクセス(2000レコード中からランダムにセレクト)を行うASP.NETアプリケーションを公開、クライアントはWCATを使用して仮想クライアントからこのアプリケーションに4時間アクセスさせるというもの。確認方法としては、静的Webコンテンツと同様のことと行い、「Disk Read Bytes/sec」と「Transactions/sec」の値を比較した。

結果としては、Disk Read Bytes/secの方の試験結果は、最大値と最小値の差が激しいため平均値を取り、MaxIQが38.4MB/s、スタンダードが28.1MB/sとなった。また、Transactions/secの方は、MaxIQが254.65 Transactions/sec、スタンダードが214.00 Transactions/secとなった。この差については、良いか悪いか微妙な値としながら、原因として、単調かつレコードサイズの大きくないアプリケーションであったために、効果が出にくかったのではないかとしている。

動的Webコンテンツでのテスト結果(Disk Read Bytes/sec)

動的Webコンテンツでのテスト結果(Transactions/sec)

ただしそれでも評価中の相性問題などのトラブルは発生せず、パフォーマンスの向上が確認されたこと、ならびにインストールの簡易さなどを考えると、高速回線が構築できる社内向けのWebサーバやファイルサーバに最適ではないかとし、A.T.WORKSのオンラインショップのラインナップに追加するほか、少なからずWebアプリに効果があることが実証されたことから、at+link専用サーバサービスのオプションとしても提供を行うことを決定したとする。