京都大学とロームの研究グループは、SiCを用いた大面積トレンチゲート縦型MOSFETで、単チップ300A駆動に成功したことを発表した。

今回の開発成果は、結晶欠陥の低減による大面積化(従来のチップ面積3mm角から4.8mm角)と、トレンチゲート構造による低オン抵抗化(従来の3mm角のものに比べ約20%低減)の実現によるもので、Siデバイスの電流容量に大きく近づいたことで、従来のSiデバイスをSiCデバイスに置き換えるだけで電力変換モジュールの小型化と高効率化ができるめどがついたこととなる。

今回開発された大面積SiCトレンチMOSFETのオン特性(左)とチップ写真(右)

これは、エピ工程におけるプロセス技術を改善したことで、ウェハに存在する結晶欠陥の影響を低減、チップ面積を従来の約2.5倍に拡大できる技術を確立したことに起因するほか、デバイスの耐圧構造の改善を行ったことによるもの。

今回開発された大面積SiCトレンチMOSFETのL負荷スイッチング波形(左)と測定回路(右)

これにより、単チップでの電流容量は従来の100Aから300Aへと引き上げられることとなり、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)、送電、鉄道などの分野で用いられる大電流Siパワーデバイスを低損失のSiCデバイスに置き換える可能性が高まることとなった。

なお、同社では、評価用サンプルを2010年春頃をめどに出荷、ユーザーの評価を得ながら早期の実用化に向けた信頼性や量産性の検証、改善を行っていくほか、さらなるオン抵抗の低減や1mΩ・cm2で1200Vの耐圧を目指した開発を行っていくとしている。