米ハワイ大学の後藤友嗣研究員を中心とした日本人研究チームは、国立天文台のすばる望遠鏡(米ハワイ島)を用いて地球から128億光年先にある超巨大ブラックホール「CFHQSJ 2329-0301」の周囲に、これを取り巻く巨大銀河(ホスト銀河)が存在することを突き止めた。

宇宙最遠方の巨大ブラックホール「CFHQSJ2329-0301」の3色合成図(中央の白い部分がブラックホールで、それを取り巻く赤い部分がホスト銀河を示している(RGBの各色はそれぞれz'(λe=911nm)、zγe=988nm)、i'(λe=768nm)のフィルタを通した色)

発見された銀河の大きさは地球の属する天の川銀河と同程度(7万2,000光年)ながら、その中心には太陽の10億倍の質量を有する巨大ブラックホールが存在する。

通常のブラックホールは星が死ぬときに発生するが、そうして発生するものは小型のもので、今回のような巨大ブラックホールの起源はまだ明らかにされていない。現在の有力な理論では、いくつかの中間質量ブラックホールが合体することで、巨大ブラックホールへと成長すると考えられており、今回発見されたホスト銀河は、中間質量ブラックホールが存在する場所であると考えられる。

また、巨大ブラックホールでは、周囲の物質をその巨大な重力により飲み込みながら成長を続けるため、その過程において、ガスなどの物質が重力エネルギー(位置エネルギー)を失い、高速運動を行うようになり、ガスどうしの衝突、摩擦などの結果、超高温となったガスから紫外線から可視光線にかけた光が放射されることとなり、明るく輝くため、周囲の光を発しない暗いホスト銀河を発見、研究することが難しかった。

今回は、同ブラックホールの周辺観測のために、すばるの焦点カメラに高感度CCDが取り付けられ(z'(λe=911nm)バンド帯で1.3倍、zγe=988nm)バンド帯で1.9倍の改善)、全体の光からブラックホールからの光を差し引くことで、ホスト銀河の存在を確認した。

z'、zγ、i'のそれぞれから得た画像データ(左)にブラックホールからの光をモデルを用いたのが中央であり、それを差し引いた各結果が右のものとなる

カラーによる解析により、9100Å付近の光は、40%がホスト銀河からであり、60%がホストを取り巻く電離ガス雲からであることも判明した。このガス雲は、巨大ブラックホールにより電離されたものと考えられるという。

後藤氏は、「宇宙の年齢がわずか現在の1/16だった時代に巨大銀河が存在し、太陽の10億倍の質量の巨大ブラックホールを持っていたことは驚くべき事実。巨大銀河とブラックホールは宇宙初期に急激に進化したに違いない」と話しており、巨大ブラックホールを詳しく調査することで、長年の課題でありブラックホール-銀河共進化の理解が進み、宇宙初期における巨大ブラックホールとホスト銀河の進化解明の糸口になるとする。