NASAが誇る宇宙望遠鏡といえば、ハッブルのほかにも本コーナーでもたびたび取り上げるX線観測衛星チャンドラ、そして地球の周りではなく太陽を中心とした軌道をとっている赤外線宇宙望遠鏡「スピッツァー(Spitzer Space Telescope)」がある。今回紹介するのはそのスピッツァーが捉えた、赤々と燃えるように輝きながら再び太陽への接近を試みている彗星の姿だ。

2008年3月にスピッツァーが捉えたホームズ彗星(17P/Holmes)。約6年の周期で太陽に近づく、短周期彗星(公転周期が200年未満の彗星)のひとつ

6年に一度の頻度で近づいてくる彗星と聞くと、今年の春に観測されたルーリン彗星のような長周期彗星と違って、どうもありがたみが薄れてしまう。実際、2007年10月にこの彗星が近づいてきたときも、一部のマニアックな天文ファン以外にはほとんど話題にも上らない天体だった。

ホームズ彗星が脚光を浴びたのは、2007年10月25日、火星と木星の間にある小惑星帯の付近で突然大バーストを起こし、40万倍以上も明るくなったからである。肉眼でもはっきり確認できるその輝きに、多くの人びとが夢中になった。

上の画像は、その大バーストから5カ月後のホームズ彗星の姿である。

ちなみにこの天体が発見されたのは1892年だが、そのときも同様の大バーストを起こしたらしい。そして、人類がその存在を忘れかけた116年後にまた大爆発を起こした。公転周期以外にも、独自の"バースト周期"らしきものがホームズ彗星にはあるのかもしれない。

次回、ホームズ彗星が近づくのは2014年だという。彗星のように太陽を周る望遠鏡のスピッツァーも、きっと別の表情を捉えてくれるに違いない。