衛星通信事業者のJSATは12日、捜索救助衛星システム「Cospas-Sarsat(コスパス・サーサット)」の地上設備について、海上保安庁より受注したことを発表した。受注金額は8年間でおよそ3億円。従来は海上保安庁自らが運用していたが、初めて民間へ委託した。すでに4月1日より本格稼働が開始されている。

Cospas-Sarsatは、船舶・航空機などが遭難したときに出す信号を受信して、最寄りの救助機関に対して連絡を行う衛星通信システムだ。38カ国・2地域の機関が参加する世界的な枠組みになっており、1985年より正式運用を開始。2005年末までに、2万人以上の人命救助に貢献したという。一方、長く利用されてきた遭難通信としてモールス信号のSOSがあったが、こちらは1999年1月末で廃止されている。

システムの概要。日本では、MCCは霞ヶ関の海上保安庁、RCCは各管区海上保安本部や羽田空港などになる

発信機の種類。船舶用、航空機用などがあり、GPSを内蔵したタイプでは位置情報も送ることができる

現在、Cospas-Sarsatで利用できる衛星は、低軌道(LEO)に7機、静止軌道(GEO)に5機がある。船舶や航空機に搭載された発信機(ビーコン)から遭難信号が出された際には、これらの衛星で受信、LUT(地上受信局)を経由してMCC(業務管理センター)へと情報が伝達され、最寄りのRCC(救難調整本部)に通達が行く仕組みだ。

衛星システム。現在は低軌道(LEO)と静止軌道(GEO)で運用されているが、将来は中軌道(MEO)での運用も開始される見込み

LEOとGEOにはそれぞれ長所と短所があるが、MEOはその両方の長所を併せ持つという。GPS衛星などに組み込まれる計画だ

日本はこれらの衛星は打上げていないが、1993年より地上設備の提供国として参加。これまでは海上保安庁がLUTの維持・管理を行ってきたが、今回、この部分をJSATに委託し、今後はMCCへのデータ提供サービスを受けることになる。LUTは群馬県内のJSAT関連施設に設置されており、海上保安庁(霞ヶ関)内のMCCとは専用線で接続している。

JSATは、1985年に設立された日本初の民間衛星通信事業者。今月2日にスカイパーフェクトコミュニケーションズと経営統合し、共同持株会社スカパーJSATが設立されている。現在、8軌道に9機の通信衛星を保有しており、ネットワーク関連サービス、映像関連サービスなどを提供している。