デジタルクリエイション! もう、今更な言葉ですが、「おー! まさにこれはデジタル・クリエイション!」と叫ばずにはおれない瞬間が、これまでも何度かありました。今回はモーションキャプチャー。これも今更な感じありますが、俳優が装着してる姿など、映画のメイキングなどで見たことある人も多いと思います。装着したことのある人はまだ一部の人、映画やゲーム特別な環境で制作を行ってるごく一部の方しか体験がないハズです。このモーションキャプチャーが登場してから何年くらいになるのでしょう……。光学式、機械式、磁気式などがあるらしいですが、この特殊なマシーンがついに、個人購入できるような金額に! いやいや、新品はまだまだ高額で手がでませんが、中古であればいけそうですよ! 友人のCGマンガ家 菅原そうた氏から「カツキさ~ん、買いましたよ~~!」という連絡があり、さっそく彼のスタジオで買ったばかりのモーションキャプチャーを装着させていただきました!

本体はかなり重いです。さすが一昔前のタイプ。こんな重いものを体に付けて役者はアクションをやってたんですね、凄いわ。装着後、自分の体のサイズをパソコンに入力して、パソコンの中のモデルデータと同期させます。初期設定に時間かかりますね。用意ができるまで、菅原そうたという人物を紹介させてください。彼こそ、デジタルクリエイションの申し子! だと僕は思ってます。彼はCGマンガ家として、月刊誌にマンガ連載をしているのですが、驚くべきことに絵がいっさい描けません。絵が描けないのに、なぜマンガ家で、さらに連載も持つことができているのか! それは最新デジタル機器を最大限まで活用し、マンガ原稿を捏造(失敬!)しているのです! 下図を見てみて下さい。

下絵(画像左) 完成原稿(画像右)
(C)『未知次元』(アクションコミックス)菅原 そうた(著) 双葉社

左が彼の絵(元になるイメージ画ではありますが、彼の画力はここが限界なのです)右が完成原稿。左の絵と右の絵、この間に一体何が起こったのか。次を見てください。これが完成原稿になる一歩手前の原稿です。

そうです。人物はもれなくカメラ撮影したものをトレース。トーン&ベタはもちろん「Photoshop」、背景や集中線、フキダシは購入したマンガ素材(※『マンガライン―デザイン・アイデア素材集』など様々な書籍や素材集が発売されています)、背景の妙な物体は3Dモデリングをしてトゥーンレンダリング(※3DCG技術だが、手描きイラストのような質感でレンダリングさせる技術)で書出し、このページにはありませんがマンガ特有の擬音の表現なども商品になってる素材を利用してます。自分が筆やペンを使った箇所は一切ありません。絵を描ける人が技術をお手軽便利に利用してるのとはわけがちがいます。彼は絵が描けないのにここまでもっていってるんですね。昭和のマンガ家がこんな作り方をみたらどう思うのでしょう? いや、昭和のマンガ家(筆者も含む)もコピー機や、スクリーントーン、当時の最新ツールは使いこなす性格や好奇心豊かなクリエイターさんたちでした。その延長、これも堂々としたマンガ制作、デジタルクリエイションによるマンガ制作なのでしょう。もちろん、人の手が描く絵の魅力、筆致の問題もありますが、読んで面白いかどうかですよね。

今回はここまで。次回! 実録モーションキャプチャーの続きをお送りします。

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タナカカツキ


1966年、大阪府出身。弱冠18歳でマンガ家デビュー。以後、映像作家、アーティストとしても活躍。マンガ家として『オッス! トン子ちゃん』、『バカドリル』(天久聖一との共著)など作品多数。1995年に、フルCGアニメ『カエルマン』発売。CM、PV、テレビ番組のオープニングなど、様々な映像制作を手がける。映像作品『ALTOVISION』では「After Effects」や「3ds Max」を駆使して、斬新な映像表現に挑んだ。