初めての一眼レフカメラはレンズキットで購入される場合が多いようですが、次のレンズは何を選ぶでしょう? 2本目のレンズを選ぶ基準はいろいろありますが、今回は私が写真にハマったきっかけでもある単焦点レンズを取り上げたいと思います。安くて楽しい、ぜったいオススメのレンズです。

明るいレンズならではのボケ味

当たり前ですが、単焦点レンズはズームしません。画角が一定です。ズームレンズに比べて不便に感じるかもしれませんが、単焦点レンズにはちゃんとメリットがあります。一般的には(1)明るい(2)安い(3)小さい、という3点ですが、特に「明るい」という特長はズームレンズでは得られないものです。

明るいということは、絞りが大きく開けられるということ(F値が小さい)。つまり大きな美しいボケが手に入るのです。このあたり説明するのがちょっと面倒なので端折りますが、絞りを開けるとそれだけボケが強くなって、かっこいい写真が撮れるわけです。

私が初めて触った一眼レフカメラは、父からもらった「ニコンFE」と「Ai Nikkor 50mm F1.4」でした。ちょうど女子中高生が「写るんです」を持ち歩き、プリクラがブームだった時期で、見かける写真はパンフォーカス(近景から遠景まで全部ピントが合ったような写真)ばかり。はじめてF1.4の開放値で撮った背景のぼけた写真は、とても新鮮でした。写真が上手くなったような気になり、開放での撮影に夢中になったものです。

以下の画像はF値を変えて撮影した画像です。一般的なズームレンズの開放値はF3.5~5.6程度ですが、下のF1.4と比べるとボケが足りないと思いませんか? それと、レンズが明るいと速いスピードでシャッターが切れるので、手持ちでもブレにくいというメリットもあります。私のように三脚があまり好きでない人には特にオススメです。

絞りを変えて撮影。これはF11。奥の猿は少々ボケているが、だいたい顔まで見える

F5.6で撮影。標準ズームではこの程度のボケが精一杯なことも多い

F2.8で撮影。かなり強いボケ。葉のすき間の光が絞り形状の多角形になっている

F1.4。使用した50mm F1.4Dの開放状態。メインの被写体を強調できる

明るいレンズは、シャッタースピードが速くできるので、フラッシュが使えない場所や照明の光を活かした撮影でもブレが少なくてすむ。撮影協力「Take free Market
α7 DIGITAL+AF50mm F1.4/50mm(75mm相当)
マニュアル(F2、1/60秒)
WB:オート
ISO 800
オリジナル画像はこちら

夕暮れ時の光も手持ち撮影が可能
D80+シグマ30mmF1.4G/30mm(45mm相当)
絞り優先AE(F2.8、1/50秒)
WB:オート
ISO 400
オリジナル画像はこちら

標準50mmにこだわるなら

さて単焦点レンズを買おうとします。どのくらいの焦点距離のレンズがいいでしょうか? 一昔前は50mmが標準レンズと言われてきました。しかしデジタル一眼レフは撮像素子がフイルムより小さいものが多いので、一般的に1.5~1.6倍相当の焦点距離(画角)になります。例えば、ニコンD80に50mmのレンズを付けると、75mmのレンズを付けたのとほぼ同じ画角になってしまいます。ただし画角は変わっても、ボケ量(被写界深度)は元の焦点距離のままです。

50mm相当の画角にこだわるならシグマの「30mm F1.4 EX DC/HSM」がオススメです。このレンズはデジタル専用設計で、カメラにもよりますが、35mm判換算で45~60mm程度の焦点距離になります。スナップから風景など幅広いシーンで使いやすく、開放値も明るいF1.4です。旧来の単焦点レンズに比べるとちょっと重いですが、気持ちよく使えるレンズです。

画角の変化を見る。これは36mm相当の画角。Ai AF Nikkor 24mm F2.8D使用、絞り:F5.6で撮影

75mm相当の画角。Ai AF Nikkor 50mm F1.4D使用、絞り:F5.6で撮影

127mm相当の画角。Ai AF Nikkor 85mm F1.8D使用。絞り:F5.6で撮影

単焦点はやっぱり楽しい

私が単焦点レンズを好きな理由のひとつは"カメラらしいから"です。一眼レフでもエントリー機ではボディがプラッスチック製で、どこか安っぽく感じてしまいます。でも、単焦点レンズは小さいながらにずっしりとした重みがあって、安いカメラに付けてもカメラらしい出で立ちになってくれます。そのあたり、カタチから入る私にとっては、けっこう"ツボ"だったのです。

私は単焦点から始めたこともあって、ズームレンズを使うと、その便利さに甘えて自分が動かなくなってしまうようです。"動かなくちゃ良い物は撮れない"とわかっていても、怠け者なので知らずに動かないで撮影しています。単焦点レンズは自分が動かないとファインダーの絵が変わりません。だから覗きながら動くわけですが、すると「ここだ!」とシャッターを切りたくなるポイントがあります。私が撮っている写真がいいかどうかはわかりませんが、帰ってきてから写真を見て納得がいくのは、やっぱり自分が動いて撮影したものが多いようです。自分が動いて撮影して、新しい光や被写体の一面を見つけると、「写真って楽しい!」と思います。だから、私にとっては単焦点レズのほうが気持ちいい撮影だと思っています。

葉っぱに透けた光がきれいだった。いい光を探すのも撮影を楽しみのひとつ
D80+Ai AF Nikkor 85mm F1.8D(127mm相当)
絞り優先AE(F2.8、1/250秒)
WB:オート
ISO 400
オリジナル画像はこちら

45mm相当の画角はスナップ撮影でも使いやすい
D80+シグマ30mmF1.4G(45mm相当)
絞り優先AE、補正-0.3EV(F11、1/640)
WB:オート
ISO 320
オリジナル画像はこちら

開放にこだわりすぎたかも。1~2段絞ったほうがよかったかもしれない
D80+Ai AF Nikkor 85mm F1.8D(127mm相当)
絞り優先AE(F1.8、1/160秒)
WB:オート
ISO 100
オリジナル画像はこちら

ピーカンに晴れた日なのにISO 200で撮影してしまった。でも背景のざわざわしたボケの感じは好き
D50+Ai AF Nikkor 85mm F1.8D(127mm相当)
絞り優先AE、補正-5EV(F1.8、1/4000秒)
WB:オート
ISO 200
オリジナル画像はこちら

被写体との距離があるときは、85mmぐらい長めの焦点距離がスナップでも使いやすい
D80+Ai AF Nikkor 85mm F1.8D(127mm相当)
絞り優先AE、補正+0.3EV(F1.8、1/320秒)
WB:オート
ISO 320
オリジナル画像はこちら

望遠系の画角は密集した被写体では面白い撮影もできる
D80+Ai AF Nikkor 85mm F1.8D(127mm相当)
絞り優先AE(F7.1、1/160秒)
WB:オート
ISO 320
オリジナル画像はこちら

背景と手前をボケさせて、主役を浮かび上がらせるのが浅い被写界深度の魅力
D80+Ai AF Nikkor 85mm F1.8D(127mm相当)
絞り優先AE(F2.8、1/50秒)
WB:オート
ISO 400
オリジナル画像はこちら

手前に合わせて穂の後側はボケている。肉眼でもこうは見えない
D80+Ai AF Nikkor 50mm F1.4D(75mm相当)
絞り優先AE(F4、1/640秒)
WB:オート
ISO 100
オリジナル画像はこちら