私たちの生活に欠かせない存在となったコンピューター。しかし使用者みんなにプログラムの知識があるとは限らないのが現状です。今回取材するライフイズテック株式会社は中学生、高校生のためにITキャンプを主催し、プログラミング教育を行う事業を行っている会社です。代表の水野雄介さんにプログラミングと数学の関わりについてうかがいました。

—水野さん、本日はよろしくお願いします。まずはライフイズテック株式会社の事業内容についてお聞かせ願いますか?

はじめまして。ライフイズテック代表の水野です。私たちの会社、ライフイズテックは中学生、高校生のためのITキャンプを主催しています。プログラミングやデザインを学びながら、AndroidやiPhoneのアプリケーション、3Dゲームなどを最終的に作り上げられるようになるプログラムですね。

—学校の時間内ではなかなか習得できないスキルですね。でも子どもたちにとってプログラミングは難しくないのでしょうか?

私たちがめざしているのは、ITのディズニーランドのようなものなんです。キャンプを実施する場所は大学。子どもたちを教える講師として優秀な学生が集まりやすいですし、子どもたちにとっても大学の見学を通して将来の自分の姿を想像する良い機会になりますからね。

—子どもたちにとって自分の未来をイメージする場にもなり得る、ということなんですね。でも、子どもたちにプログラミングを教えることって難しいように思うのですが。

アメリカで行われているテクノロジーキャンプからノウハウを学びました。あちらのキャンプは人材育成という目的が明確に意識されています。私は高校教師の経験もありますので、難しいことをわかりやすく伝えるにはどうしたらいいのか、ということも教育現場に出て試行錯誤した経験がありました。それらの知識や経験を使ってこの教育プログラムのモデルを作っていきました。

—現場はどのような雰囲気なのでしょうか。

子どもたちとの関わりを深めれば私たちも色々なことを学べます。みんな吸収が早いんですよね。「プログラミング言語を取得する」というと物怖じしてしまう子もいるかもしれませんが、「手の中で動くアプリケーションや遊べるゲームを作ることができる」という結果としてのモノを提示してあげれば、自然と興味を持ち自ら学ぶようになるんです。実際にアプリケーションのストアに並ぶ自分の作品を見て、ITを学べば大人と同じ土俵で戦えるという自信が生まれます。社会に求められる存在となれる可能性が自分に秘めていることを、子どもたちが自覚できるようになるはずですよね。ITキャンプがその足がかりになればな、と思っています。

—水野さん自身はどのような学生時代を過ごされてきたのですか? ITが大好きな学生だったのでしょうか?

大学院では物理を専攻していました。医療系のシステム理論を研究していましたね。子どもが好きだったので教員を志望し、実際に物理の教員免許も取得して非常勤講師も務めていましたが、いったんはコンサルタント業に就職しました。会社設立はそのあとですね。だから私自身はすごくプログラミングが得意というわけではないんですよ。ただ、得意じゃないからこそ、僕もわかりやすく教えるために色々と試行錯誤できたとも思います。

—目的意識がはっきりされているんですね。数学はお得意でしたか?

好きでしたね。というか最初から結構できたんです。できるから好きというか。

—でも、数学が得意だということが、何か具体的に仕事につながるというイメージがなかなかわきにくいという声も多いようです。

そもそもプログラミングってアルゴリズムを組みますから直球で数学ですよね。ゲームなんかも当たり判定に座標軸を使いますし、条件分岐や二次平面の計算が不可欠ですね。

—確かに数学が好きな人とプログラミングとはとても相性が良さそうですね。

数学が好きな人がプログラミングをやれば、より世の中の流れを意識できるようになると思いますね。数学が好きな子どもたちにとっても、将来やりたいことが具体的に見えてくる。数学とプログラミングはそのような相乗効果の可能性があるかもしれません。

—プログラミングというのは数学を学ぶ目的のひとつになり得るというわけですね。

目的意識をもつと、学ぶ意欲は段違いに向上します。これからもそのような体験をできるだけ多くの子どもたちに提供して、人材育成をしていきたいですね。

—水野さん、お忙しい中貴重なお話をありがとうございました!

子どもたちが興味を持っているゲーム。水野さんのお話を聞き、ゲームを作るというアプローチから数学やプログラミングへの興味を引き出していく方法は、とても有意義だと感じました。大学という、将来自分が学ぶかもしれない場所でそれを体験できることは、子どもたちが学びの目的意識を考えるきっかけになる素晴らしい機会になるのでしょうね。水野さん、プログラミングと数学のお話ありがとうございました!

今回のインタビュイー

水野 雄介(みずの ゆうすけ)
慶応義塾大学理工学部物理情報工学科、同大学院在学中に、開成高等学校物理非常勤講師を2年間勤める。卒業後、人材系コンサルティング会社に入社。教育変革を掲げ、退社後、2010年7月、ライフイズテック株式会社(旧社名:ピスチャー株式会社)を設立。

このテキストは、(公財)日本数学検定協会の運営する数学検定ファンサイトの「数学探偵が行く!」のコンテンツを再編集したものです。

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