「コストを抑えてパーツを製作してもらえる方法はありませんか」という質問は珍しくないものです。そこで、今回は、Protomold射出成形でパーツを製作するにあたってコストを抑えるためのコツをいくつかご紹介します。ただ、ご理解いただきたいのは、ほとんどの場合で設計変更が必要になってくるということです。もちろん仕様上、設計の変更が無理であれば、コストよりも設計を優先しなければいけませんが、設計変更が許容できるのであれば、コストを削減する方法はあります。パーツの用途や目的が優先されるべきですが、当記事で紹介させていただくコスト削減のコツもご参考にしてください。Protomold(R)短納期射出成形でギアを成形する場合のプロセスと設計にあたって考慮していただきたいポイントをご紹介してまいります。

Protomoldは試作、小ロット生産、先行量産にご利用いただいています。試作でご利用いただく目的は、嵌合、見栄え、製造プロセスの検証、強度試験などが挙げられます。強度試験であれば、表面仕上げは最小限にすることでコストを抑えることが妥当ですが、商品サンプルとしての利用が目的であれば、表面仕上げのコストは抑える対象ではないことになります。試作が目的であれば、金型費を抑えることに注力することは大きな意味を持ちます。量産が目的の場合は、金型費が上がったとしても、パーツ一個あたりのコストを抑える方法を検討するための試作を実施することが理にかなっていることもあるでしょう。以下に順不同で、日ごろお客様にご案内させていただいているコストを抑えるコツを5つご紹介します。

1. アンダーカットがないようにする

アンダーカットがある形状は、スライドの追加、無理抜き、置き駒などが必要となるため、コストが増加します。置き駒(図1)を例にあげると、パーツを一つ成形するごとに、作業者が毎回置き駒を金型にセットし、成形後に置き駒を取り外すという作業が伴うからです。

図1:置き駒の例。成形後に置き駒を手で取り外す作業が加わるため、コストの増加につながります。

2. パーツを小さくする

パーツを小さくできれば、大幅なコスト削減を実現できます。小さいパーツであれば、金型の加工面積が少なく、使用する樹脂も少なくなるため、材料費も減らすことができるというメリットが出てきます。

3. できるかぎり微細な形状を作らない

Protomoldで使用できる最小の工具径はφ0.50mmです。微細な形状を加工するためには、非常に細いエンドミルを使うことになります。細いエンドミルの場合、短いものでも加工のスピードは遅くなります。特に、深いところを掘るような細長いものになると、加工速度はさらに遅くなります。もっとも細かい形状でも、φ1.27mmよりも大きなエンドミルで削れる形状にできれば、加工時間を短縮することができます。成形性解析結果を図解するProtoQuote®見積りでは、形状によるコストを簡単に比較することができます。ProtoQuoteは何度でも無料で利用できますので、複雑で微細な形状がある場合と、コストを抑えるために形状を変更した場合の比較を気軽にお試しください。平均で4時間以内に回答をお送りしています。

パーツに文字やロゴを付与する場合も、金型の加工にかかる時間が増えるため、コストも増えます。特に、パーツへの凹文字(金型上に文字を突起させる加工が必要)は、加工時間が大幅に増えます。小さな文字の加工には、放電加工が推奨されることがありますが、これはコストの削減にはつながりません。結局は電極を製作する必要があり、放電加工も必要となるからです。

リブもコストを増やす要因になります。リブを成形するためには、金型に細長い溝形状を切削する必要があります。その溝形状がより薄く深い場合には、細長いエンドミルが必要となり、結果として金型の加工時間が長くなるのです。小さな複数のリブを統合して、少ない数の大きめのリブに置き換えられるなら、金型費を抑えることも可能です。肉抜きを追加してリブで補強し、樹脂の使用量を減らすという場合がありますが、パーツ一個あたりの製造コストがそれほど気にならず、またヒケやソリも最重要項目でないのなら、パーツの肉厚を厚くすると同時にリブそのものを無くすことで、金型費の削減につなげることができます。余談ですが、弊社のエンジニアには、リブを減らすことを「ワッフルでなく、ホットケーキで」と表現する者がいます。

4. 粗めの表面仕上げを選択する

表面の仕上げは金型を手作業で磨いて行いますので、最もコストのかかるプロセスの一つです。見栄えが重視されないパーツであれば、コストが加算される磨き仕上げを選択する必要はありません。最終製品では外観部品に用いられるパーツでも、当面は、嵌合性や人間工学的な確認に使われるというような場合、表面仕上げは粗くても良いのではないでしょうか。金型表面は、設計が確定した段階で磨くことができます。仕上げレベルの見栄えは、弊社の「デザインキューブ」でご確認いただくことができます。まだデザインキューブをお持ちでない場合には、担当させていただいている者にご一報ください。こちらのサイトからご請求いただくこともできます。また、サンプルプレート(図2)をご用意しておりますので、同じ表面仕上げでも、材料によってどのような見栄えになるかをご確認いただくことができます。担当者にリクエストいただきましたら、お送りします。

図2:Protomold仕上げサンプルプレート。プロトラブズが在庫している各種樹脂での表面仕上げを確認できます。ご希望の方にはご連絡いただければ、無料で差し上げます。

5. 二次加工することを考えましょう

Protomoldでは二次加工はお受けしていませんが、実のところ、最終的に求められる品質にもよりますが、すべてを金型で作ってしまうよりも、一部の形状は二次加工で作ったほうが早くて安いということがあるのです。例えば、穴形状の場合、スライドか置き駒で作らず、成形後にドリルで穴をあける方法があります。他の例としては、内部のアンダーカットを置き駒で成形する代わりに、二次加工で切削したり、また、場合によっては、親パーツを成形してから、それを切削して子パーツ、あるいは派生パーツに作り変えるという方法もあります。そうすることで必要とする金型を一つで済ますことができるのです。

ご参考:

プロトラブズ樹脂部品設計ガイド
ProtoQuote(R)無料解析&見積り
動画によるプロトラブズの表面仕上げに関する解説

本コラムは、プロトラブズ合同会社から毎月配信されているメールマガジン「Protomold Design Tips」より転載したものです。