最終回となる今回は、会計ソフトの決算機能や申告書作成機能、データ連携について見ていきましょう。これまで同様、「財務応援Lite」を例にとり、主な機能について紹介していきます。これらの機能を有効に活用し、ぜひとも"前向き"の経営を実践してください。

決算機能

本連載で取り上げている財務応援Liteでは、個人事業主と法人企業の双方の決算に対応。青色決算申告書の作成から、貸借対照表などの企業決算書の作成まで幅広く対応することができます。

以下、順に見ていきましょう。

個人事業主の申告書

個人事業主において重要になるのが青色決算申告書です。財務応援Liteでは、確定申告の時期に税務署へ提出しなければならないこの書類も比較的簡単に作成することができます。種別は、一般用、不動産用、農業用、それぞれに対応しています。

青色決算申告書(一般用)

青色申告書の作成では、決算機能の「提出用青色申告書」の入力機能を利用します。

この機能を利用する際には、申告時に必要なデータを再集計する必要があります。すなわち、すでに入力されているデータがそのまま申告書として出力されるイメージではなく、本機能で申告書に記載する情報とデータを編集するというかたちになります。

このような形式になっているのには理由があります。例えば、申告書に記載できる科目や科目数には制限があるため、規定外の科目、科目数を利用している場合は、科目の集計や申告書への割付を変更しなければなりません。これを自動で出力するようにしてしまうと、普段使用している科目をこれに合わせなければならなくなってしまいます。そのため、上記のような編集形式になっているわけです。

初めて利用する方はちょっと複雑に感じるかもしれませんが、さまざまなケースを考えるとこの機能は便利に思えるはずです。

提出用青色申告書の入力の際には、そのほか、以下のような機能も利用できます。

まず、財務応援Liteで使用している社名とは別の申告用に記載する屋号や住所等の基本情報を入力できます。また、提出用青色申告書では、申告書の損益計算書や貸借対照表、月次売上、仕入金額のデータがあらかじめ表示されますが、この画面で再度編集することができます。そして、青色申告特別控除はここで計算され、損益計算書に自動反映されます。

その他、専従者控除や減価償却費の計算、地代家賃の内訳等の申告書へ記載する各項目も同画面で入力します。なお印刷用紙はOCR用紙と白紙のいずれかを選択できます。

法人企業の決算

個人事業主とは異なり、法人の場合、会計ソフトで作成できるのは決算書のみです。個人事業主のような税務申告書が作成できるわけではありません。

決算処理に必要な仕訳(決算整理仕訳)は、13月で入力します。また、1年間の仕訳を一括で入力しているという方は、例えば平成21年13月31日という日付を指定することになります。

決算書の書式は、報告式と勘定式のいずれかを選択ができます。報告式は、貸借対照表に資産と負債が上下に印刷され、罫線は出力されません。一方、勘定式では、貸借対照表の資産と負債が左右に印刷されます。罫線も印字され、科目も均等割付されています。

申告用の決算書としては、どちらでも利用できます。

報告式の貸借対照表

勘定式の貸借対照表

合併処理

財務応援Liteでは、複数の会社データをひとつの会社に合併できる「合併処理」という機能も用意されています。本店と支店や、本社と店舗でそれぞれ別の財務応援Liteで仕訳入力し、決算時に全体の帳票を作成する場合などに便利です。

ただし、支店や店舗の入力では、本稿で解説している財務応援Liteが利用できますが、合併の処理を行う本店、本社では、「財務応援SUPER」という高機能版が必要になります。データの通信方法には、インターネットによる送受信※1のほかに、FD転送(フロッピーディスク)や電話回線※2などの方法が用意されています。

合併処理のイメージ

※1: エプソンの提供するデータ通信サービスを利用します。データ通信サービスは無料で利用いただけますが、事前の登録作業が必要となります。
※2: 電話回線を利用して、合併処理を行う場合は、本店・支店側と合併会社側においてモデムが必要となります。

合併には試算表合併と仕訳合併の2つの方法があります。

試算表合併

試算表合併は、月次残高を合併する機能です。前期残高や予算などのすべての残高を合併します。仕訳データとして合併するわけではないので仕訳レベルの帳票は、本店と支店それぞれで出力することになります。毎月の試算表レベルで合併の金額を出したい場合は、こちらの処理体系のほうが管理しやすく簡便です。

仕訳合併

仕訳合併を選択した場合は、仕訳レベルの帳票も作成できます。分散入力を行いたい場合は、この機能を利用することになります。本店、支店での合併の場合は、残高の調整が必要になり、合併会社で決算書や試算表を作成する場合は、期首残高を合併会社に設定する必要があります。

仕訳合併処理画面

データ連動機能

会計ソフトの多くは、他のソフトとの連携機能も備えています。これらをうまく利用すれば、さらなる業務効率化が望めます。本連載のしめくくりとして、サンプルとして取り上げてきた財務応援Liteのデータ連携機能についてご紹介しましょう。

応援シリーズでのデータ連動

まずは、姉妹製品間の連携です。

財務応援Liteは、エプソンの「応援シリーズ」の1つで、そのほかにも販売管理ソフト「請求応援Lite」や給与管理ソフト「給与応援Lite」といった製品が用意されており、これらの製品とのデータ連動機能も搭載しています。

特に、請求応援Liteとの連携機能は、得意先や仕入先の多い会社では有効です。例えば、以下のような使い方が可能です。

売上と入金をすべて請求応援Liteで入力: 請求応援Liteで入力した売上、入金データを財務応援の仕訳として取り込めます

<請求応援入力データ>
(1)掛売上 売上100,000
(2)掛入金 入金100,000
  ↓
<財務応援連動データ>
(1)売掛金/売上100,000
(2)現金/売掛金100,000

売上は請求応援Liteで入力、入金は財務応援Liteで入力: 売上データは販売管理ソフトの請求応援Liteで管理し、入金データは会計ソフトの財務応援Liteで管理する、といった使い方も可能。両ソフトを連動させれば整合性を損なうこともありません

<請求応援入力データ>  <請求応援連動データ>
掛売上 売上100,000    掛入金 入金100,000
  ↓            ↑
<財務応援連動データ>  <財務応援入力データ>
売掛金/売上100,000     現金/売掛金100,000

ファイル出力

財務応援Liteには、応援シリーズ以外のソフトとの連携を実現するためにデータ出力機能も用意されています。

ユーティリティメニューのテキストファイル作成機能で、財務応援LiteのデータをCSV形式(カンマ区切りテキスト)で出力することができます。このデータを使えば、Excelなどの表計算ソフトをはじめ、さまざまなソフトで利用することが可能です。

なお、この機能は以下の帳票で利用できます。

  • 試算表
  • 推移表
  • 部門別試算表
  • 部門別総括表
  • 部門別推移表

加えて、以下のようなファイルも出力できます。

  • 科目残高テキストファイル
  • 仕訳テキストファイル

ファイル取込

上ではデータの出力機能について触れましたが、財務応援Liteには当然、データを取り込む機能も用意されています。

対象となるのは、テキストファイルの仕訳及び科目データ、残高データ、部門データです。これらは、先に解説した合併データの作成にも利用できますが、最大のメリットは他社ソフトの会計データを財務応援Liteに取り込める点です。

たいていの会計ソフトには、同様のテキストデータの書き出し機能がありますので、そのデータを財務応援Liteが取り込み可能なデータに編集することにより、データを移行することができます。

他社ソフトからのリプレイスで財務応援Liteを利用する場合は、過年度データをコンバートしたいとのニーズが必ず出てきます。しかしながら、会計ソフトのデータはワープロや表計算のデータとは異なり、開発会社が異なるとデータを直接読み込むことはできません。そこで、こうした機能によりデータコンバートを実現しているわけです。データ形式の変更等が必要なのでExcelなどを利用することになると思いますが、数年分のデータがある場合は、トライしてみる価値があるはずです。