Wave 14 - マイクロソフトに新しい"波"を巻き起こすことになるのか

マイクロソフトの社内には、「Wave 14」という言葉がある。「14の波」という意味を持つこの言葉は、実は、マイクロソフトが来年前半に発売する予定のMicrosoft Office 2010製品群のことを指す。現行のOffice 2007は、バージョンでいうとOffice 12。その順番からすれば、Office 2010は、本来ならばOffice 13となるところだが、13という数字が不吉であるといった理由から、13をとばして、14になったという経緯がある。

Wave14と呼ばれるOffice2010関連製品群

Wave 14は、Office 2010を構成するWord 2010、Excel 2010、PowerPoint 2010、Outlook 2010のほか、今回新たにOneNoteが追加されている。さらにエディションによって、AccessやPublisher、Bussines Contact Manager、InfoPath、SharePoint WorkSpace、Communicatorなどが搭載される。

一方、Wave 14にはこのほかにも、11月から製品提供が開始されたExchange Server 2010、来年前半に発売が予定され、今回の製品からOfficeの冠がとれたSharePoint 2010、Visio 2010、Project 2010が含まれ、さらに、オンラインでメールや予定表、情報共有などの機能を提供するMicrosoft Online Servicesも、Wave14の波のなかにある。

マイクロソフトの業務執行役員 インフォメーションワーカービジネス本部 横井伸好本部長は、「ひとつの仕事を複数の人たちが共同で行う『よりより共同作業』の実現、必要な情報をピックアップし、思い浮かんだことを形にする『アイデアの実現』、PCや携帯電話、ブラウザといった環境において、相互に互換性を持ち、さらにシームレスに活用できる『どこでも使えるOffice』、IT管理者のコスト削減要求に応え、セキュリティ、パフォーマンスでも威力を発揮する『実用的な生産性プラットフォーム』といった4つの開発コンセプトを持つのがOffice 2010。そして、PC、携帯電話、ブラウザで最高水準の生産性を実現したのがOffice 2010である」とする。

Officeシリーズの基本的な考え方

Office 2010のエディション別の製品構成

Excel 2010の画面

複数の利用者が同時に文書に修正を加えるといったコラボレーション機能、オンプレミス環境のクライアントPCとWebで閲覧している環境、携帯電話で利用している環境のすべてにおいて、同じ画面表示が可能となるなど、共同作業や複数の利用環境をまたがった用途にも大きな威力を発揮するようになっている。

「個々のアプリケーションを機能強化するというこれまでの延長線上の進化ではなく、携帯電話やブラウザでの利用も可能にした新たなレベルのコミュニケーションとコラボレーションを可能とするソフトウェアである」とするのも頷けよう。すでに11月19日から日本語ベータ版が配布されており、マイクロソフトが語る進化を、ひと足早く体感することができる。

これまでのビジネスモデルを変えるOffice Web Apps

マイクロソフトが説明するように、Office 2010においては、パッケージ版に加え、携帯電話で利用できる製品、ブラウザから利用できる製品が用意される。

なかでも、注目されるのがブラウザから利用できるOffice Web Appsという製品だ。

製品の定義を「対価」を得るものとすれば、Office Web Appsは製品という定義から外れるものとなる。というのも、この製品は、機能が限定されるものの、無償で提供されるからだ。

横井本部長は、「ブラウザ版は、クライアント版に比べると開発が遅れており、どの機能を搭載するのかは最終的には決定していない。いまの段階では、右クリックで出てくるメニューが、クライアント版と異なったり、印刷エンジンに別のものを搭載するといったことが見込まれる」とする。

だが、その一方でこうも語る - 「ブラウザ版は、クライアント版を置き換えるものではなく、活用する選択肢を増やすもの。一方で、クライアント版が、すべての機能を搭載したスーパーセットになるわけではなく、携帯電話版には入っている機能が、クライアント版には入っていないものも考えられる」

ブラウザ版のWord 2010で文書を表示したところ

左がクライアント版、右がブラウザ版。同じ内容を表示できる

全世界のWindowsの利用者は10億人に達する。これに対して、Microsoft Officeの利用者は約5億人と半分に過ぎない。企業ユーザーでは、ブラウザ版を利用しながらもクライアント版を導入すること、個人ユーザーでも家庭ではクライアント版を利用しながら、外出先などでブラウザ版を利用するといつた利用形態を想定。クライアント版を補完する利用を可能にする製品とする一方で、無償で提供することで、残る5億人に対しても訴求ができるとし、現行のOfficeユーザーの利用者を減らすのではなく、むしろユーザー数を増やしていくという戦略として位置づけているのだ。

果たして、このビジネスモデルが成立させことができるのかどうか。マイクロソフトの今後の手の打ち方は注目されることになろう。