外国語ってなんとなくカッコいいんですよね。この感覚は世界共通らしく、米国でも英語の中にちらりとフランス語が使われていたりします。フランス語ばかりではなく、日本語もやっぱりカッコいいようです。日本語(あるいは漢字)が書いてあるTシャツを着ていたり、タトゥーが日本語だったりして、日本語以外の外国語こそカッコいいと信じている日本人には不思議な光景です。ただ、中には「意味わかっていないよね」と思うような日本語がプリントされていることもあり、アドバイスしてあげたい気分になることも。これは日本で使われている英語にも言えることで、「その英語は何? ヘンじゃない!?」という単語や表現もまかり通っているようです。今回はへんてこ英語で有名なサイト「Engrish.com」に掲載されている写真を例に日本人のヘンな英語の話をしましょう。

日本人を苦しめ続ける"l"と"r"

まずは簡単な例、間違った発音、綴りのままアルファベットにしてしまったヘンな英語からはじめましょう。2007年9月24日に掲載された写真にはほほえましい女の子と男の子のイラスト、そして"Anger"の文字……ん、怒ってるの? とてもそんなイラストじゃないし…あ、そうか! "Angel"ね……日本人の苦手なlとrの発音ですからね、やむをえません。私も経験があります。遅れて教室に入ってきたブラジル人のクラスメートに「Did she これくと our homework?」と聞かれたとき、"これくと"を"correct(訂正する)"と勘違いし、「I don't think so.(そうは思わないけど)」という妙な返答をしてしまいました。もちろん、クラスメートは「Did she collect our homework?(先生は宿題集めた?)"」と聞いたのです。気を付けましょう。

そのネーミングはヤバすぎる

次はかっこよく英語のネーミングをしたものの、それは欲しくないかも……と思うようなヘンな名前になってしまった例です。1つめはSnacksのカテゴリの2006年12月13日に掲載されたクッキーのChokiesという名前です。もしかすると、ChocolateとCookieを合成して"Chokies"にしたのかもしれません。造語で、そのような単語はないのですが、choke(喉をつまらせる)を思い起こさせるネーミング…た、食べると喉がつまるの? うーん、"I'd better stay away from this snack.(手を出さないほうがよさそう)"と考える人が多そうです。

もう1つの欲しくないかも…のネーミングは同じSnacksのカテゴリの2003年11月10日に掲載された"GERM BREAD"です。きっと、ジャムを伸ばした「ジャーム」をカッコよく英語で書いてみたのでしょう。が! "germ"といえばハンドソープ系の品のパッケージにはおなじみの単語です。わかりますね、ばい菌の類です。この名前をよりによって食べ物に付けてしまったのです。造語のつもりがそうではなかった、しかも「ぜったい欲しくない!」と思わせるようなヘンな英語にになってしまいました。英語を使うときには辞書を引くのをお忘れなく。

"GERM"は「ジャム」じゃなくてバイキンですよ! 食べ物の名前に使っちゃダメですよ!!

他人のヘンテコ英語で知る文法の重要性

お次は、英文法を理解していればこうは書かなかったかも…という例です。Computerのカテゴリの2004年11月24日に掲載された写真です。読者のみなさまにはお馴染みのCD-Rですが、"For Computer Burning"…うーん、気持ちはわかる。でも違うでしょう、コレは。これではコンピュータが燃えているか、熱くなっているか、とにかく何か通常の状態ではないときのために使う品になってしまいます。というのも、これは文法的には"for a computer that is burning(燃えているコンピュータのために)"の"that is"がreduced(省略)されていると考えるのが妥当で、burningはcomputerをmodify(修飾)しているからなんです。「フリーズしたときにこの商品を使うと熱くなって動きだすのかも」という意味のコメントには笑ってしまいますね。

直訳しただけで英語らしい表現になっていない例も見てみましょう。Signs/Postersのカテゴリの2007年5月25日に掲載された名古屋城のサインです。これは誤訳だと思われますが、「あなたは危険人物だから入ってはいけません」という意味になっているので、「文句をいわれてしまった」というコメントにはうなずけます。ただ、同時に英語でこういう言い方はしないという良い例でもあります。このサインは日本語にありがちな「これこれじかじかだから、こうである」という最後まで読んで、ようやく意図や目的がわかる構文になっています。英語ならシンプルに"Do Not Enter"や"Keep Out"のように最初に一番言いたいことを書くのが普通です。そして、理由の説明のために、2行目に"Danger"を追加することもあるでしょう。こんな短いサインの英語も、やはり会話やライティング同様、最も言いたいことを最初に述べて捕捉していくのが基本ですね。

英語の基本はつねに「言いたいことはいちばん最初に」

最後に、私がYellowstone National Parkに行ったときに撮ってきた本場の英語のサインを紹介しましょう。左の写真は「trail(ハイキングルート)をはずれて立ち入ってはいけません」というサインです。"No"で始まるサインは"No Food"などいろいろなところで目にします。また、右の写真は「(Yellowstoneの貴重な財産である)バクテリアマットに落書きしてはいけません」というサインです。よくある"Do Not"で始まっているので、何をしてはいけないのかすぐにわかります。

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ただのGERMとはちがう、大切なBACTERIAを傷つけてはいけない

そして、最後の写真はめずらしく詳細が書かれているサインです。このサインがあったのはいわゆる地獄谷的な場所で、熱湯を土で覆ったような場所でした。こんな怖いことを書かれると言われなくても安全なところにstayしたくなりますね。親切にも「ぬれていたり、凍っていたりするとtrailは滑りやすいですよ」という注意書きまであります。美しさとダイナミックさ、そして危険がミックスした、地球の歴史を感じさせてくれるYellowstoneに思いを馳せながら、これらのサインを堪能してください。

一見、危険には思えないけれど、すぐ下にはBOILING WATERが…

今回は日本人のヘンな英語をとりあげましたが、どこがヘンなのかわかったでしょうか。ついうっかり…といった間違いばかりかとは思いますが、英語を使うときはぜひとも辞書を引くことをおススメします。