世の中には、科学的に作られた製品や物質がいっぱいです。そして、その挙動は、常識ではとらえられないものもあり、時に悲劇をもたらします。ということで、やってはいけない!サイエンスネタを集めてみました。けして試してはいけませんゾ~。

やってはいけない1:電子レンジで水を沸かす

結論からいいます。爆発します。

電子レンジでも、もちろん水を温めることはできます。我が家の電子レンジには「ミルクあたため」というモードがあって、時々使っております。ただし、ヤカン代わりに使うと、時に悲劇がおこります。

電子レンジで「沸かした」はずの水は、ぶくぶくしません。じゃあ、ぬるいのか? とカップの水にティーバッグでもいれようものなら、いきなり熱湯が飛び散ることになります。「突沸(とっぷつ:突然沸騰する)」という現象ですな。水が100℃を超えているのに、沸騰していないお湯でおこる現象です。

ふつうにヤカンでお湯を沸かすと、下が熱くなり、それが上の冷たい水といれかわる=対流がおこります。水がグラグラと動き回るのですな。動き回ることで、熱い水は水面までいき、そこで蒸発がおこります。また、ヤカンに接しているところでも同じことが起こります。

ところが、電子レンジだと、全体の温度が均一にあがっていきます。すると対流がおこらないで、100℃になったところが水面や容器の側面にいかないのですね。そして、100℃を超えて加熱されるのです。

そこにティーバッグなどいれようものなら、一気に沸騰が起こり=爆発となるわけなんですねー。

突沸現象の概要と注意点(出典:パナソニックWebサイト)

やってはいけない2:瞬間接着剤を水ではがそうとする

よけい、はがれなくなります。

瞬間接着剤は便利ですねー。本当に一滴で、強力に接着できますからねー。私もなんどもたすかったことがあります。最近は、手術などでも使われるようになりました。

この瞬間接着剤がくっつくのは、ミクロな世界で分子がクサリのようになり、それがぐちゃぐちゃに絡まるからです。からまった糸をほどくのは、たいへんでしょ? あれがミクロな世界で一気におこるのが瞬間接着剤なのです。

もちろん、すぐにぐちゃぐちゃになってしまっては、保存もできなければ、もちろん販売も不可能です。ぐちゃぐちゃになるのをコントロールしないといけません。そのポイントは水分なのです。

瞬間接着剤の成分(シアノアクリレート)は、水にふれると一気にクサリ状になってからまります。いわゆる触媒になるんですね。だから、水をシャットアウトしておけば、くっつかなくて済むのです。逆に水をつかったら、さらに強固にくっつくようになってしまうのですなー。

もしくっついてしまったら、マニュキュアの除光液などが溶剤になりますのでお試しあれ。

やってはいけない3:塩素系漂白剤と酸性洗剤をまぜる

致死性の毒ガス(塩素ガス)が発生します。

塩素系漂白剤や酸性洗剤には、おもいっきり「まぜるな危険」と書かれていますので、危ないのは知られているとは思いますが、ちょっと汚くなってしまった便器を、なんとかピカピカにしよう!とかいって、酸性洗剤に塩素系漂白剤を追加すると、危険な毒ガスである、塩素ガスが発生することになります。

塩素ガスを吸うと、呼吸器や粘膜がやられて、激しい咳や嘔吐、そして呼吸不全で死に至ることもあります。第一次世界大戦では兵器として本格的に使用され、多くの犠牲者を出しました。その時の司令官はノーベル賞学者でもあるハーバーでした。ちなみに彼は化学肥料を発明し、世界を飢餓から救った人でもあります。皮肉なもんですなー。

ということで、間違えて塩素ガスにふれたら、ただちに身体を洗い、服を着替えるとともに、病院で治療ということだそうです。

そもそも、塩素系の漂白剤は単独でも危険なものなので、酸素系の漂白剤などを利用するほうがいいでしょうね。いや、すごくきれいに漂白されるので、すてがたいんですけどね。

やってはいけない4:ブルーレイディスクをDVD用の袋ケースにしまう。

映像が読みだせなくなったり、ディスクドライブが使えなくなることがあります。

地デジ放送に切り替わってから、ハイビジョンがふつうになりました。あわせて録音もアナログのビデオデッキがなくなり、ハードディスクレコーダーになってきましたね。いや、もう録画せんでVODの方がいいってなってきている気もしますけど。

で、視聴するのはいいのですが、ハイビジョンで録画した連続ドラマなどしばらくおいておくと、あっという間にハードディスクの容量がなくなります。また、これはとっておきたいとなると、ブルーレイの出番というわけですな。ブルーレイは一番容量の小さいものでも、DVDの5倍、それ以上の録画ができます。まあ、他に選択肢がない感じです。

ただ、ブルーレイはDVDやCDと同一サイズ。そこに、ものすごい容量のデータを詰め込むのですから、そのぶん繊細になります。同じようなものにハードディスクがあって、こちらはブルーレイよりもさらに大容量ですけど、密閉されていますね。ブルーレイはむき身。ということでケースにいれないといけないわけです。

そのさいに、DVD用として売られているファイルに入れたくなるのが人情です。サイズ同じだし、コンパクトに収納できますしね。ところが、ブルーレイはだいぶ脆弱なのです。

その理由はブルーレイのデータ収納部を保護するコートが0.1mm厚でDVDの0.6mmに比べるとだいぶ薄いことがあげられます。また、ピックアップとの距離も0.3mmで、DVDの1mmに比べて狭いです。ということでちょっとしたホコリでも、すぐにダメになってしまうのですね。当然振動にも弱く「車用のブルーレイ」がなかなか出ないのもそのせいです。

もちろん、技術開発は進んでいて、丈夫なブルーレイディスクというのも出てきていますが、当分は表面をひっかかないように、ハードケースに入れるのが吉というわけですな。

このシリーズ、自分で書いてておもしろいので、評判がよければ、またやると思います~。

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。