デジタルハリウッド講師が、業界の動向や最新事情について解説していく本コラム。 今回は、デジタルハリウッド大学大学院・産学官連携センターの沖昇さんが3D立体映像についてわかりやすく解説してきます。(監修:羽倉弘之氏/東京大学情報学環)

2005年3月にラスベガスで行われた「ShoWest2005」で立体映画の可能性を語るイベントが開催されたのを機に、新たな立体映画ブームが始まりました。2009年には、邦画『戦慄迷宮3D』、『侍戦隊シンケンジャー銀幕版 天下分け目の戦』、洋画では『カールじいさんの空飛ぶ家』、『クリスマスキャロル』などが公開されました。また『AVATAR(アバター)』は世界興行収入で歴代1位の記録を更新しています。

先日電車内で年配の方が、「映画『アバター』はもう観たけれど『アリス・イン・ワンダーランド』に期待している」という話をしており、立体映像の注目度の高さに驚きました。

映画『アバター』

(C)2009 Twentieth Century Fox. All rights reserved.

そんな注目を集めている3D立体映像ですが、なぜ平面のスクリーンを見ているのに立体的な映像が見ることができるのでしょうか。
答えは「両眼の視差(ズレ)」にあります。人は、左目と右目の網膜に写った像の少しの違いを脳が処理し、奥行きを感じることができると考えられています。この処理にはまだ解明されていない要素も多く、現在、研究が盛んに行われています。この視差の巾は骨格や年齢など違いにより数mmの差は生じますが、基本的には約65mm~70mmといわれています。左右の映像が合成された映像から、左目用の映像は左目だけ、右目用の映像は右目だけで見ることができれば、後は脳内の処理で映像を立体的に見ることができるのです。しかし、立体視には個人差があり、なかには立体映像視聴ができない、あるいはしにくい人もいるようです。

3D立体映画の上映方式

立体映画では、この両眼視差を利用した上映が主流になっています。その際に使われるのがいわゆる「3Dメガネ」です。これまでに、立体映像・立体視を体験した方は、「赤青メガネ(アナグリフ)」をイメージする方が多いのではないでしょうか。現在の上映方式には、「偏光式」と「シャッター式」、アナグリフ方式の一種である「カラーフィルター方式(カラーフィルターを使用したドルビー方式)」の3方式が多く採用されています。それでは、この3つの上映方式について簡単に説明していきましょう。

・偏光式
映像(光)は色々な方向に振動する波です。この中から特定の方向のみに振動する光のみ通過させるフィルターを使った方式を「偏光式」といいます。現在の方式では、光が特定の方向にだけ振動するものを取り出した「直線偏光」フィルターと螺旋状に円を描きながら進む光のみ通過させる「円偏光」フィルターがあります。プロジェクターのレンズの前に設置したフィルターで左右の映像を分離する方式で上映を行います。現在、IMAX3DとRealDで採用されています。

偏光式

・シャッター式
左右の映像を交互にスクリーンに投影し、3Dメガネに組み込まれた液晶シャッターを左右交互に開閉して右目には右目用映像、左目には左目用映像が見えるようになっています。スクリーンの映像とシャッターの開閉を同期させるために赤外線受光部があります。電池を使う必要がある為若干重たくなります。現在、XpanDで採用されています。ちなみにXpanDでは、両目で144コマ/秒の映像を切り替えています。

シャッター式

・カラーフィルター方式
Infitecフィルターを使用して波長別に6バンドに分けるRGBの波帯を各々二分割して(RGBそれぞれの高低で合計6バンド)、左目用と右目用の波長に割当てる方式で、通常のスクリーンでカラー画像を見ることができます。現在、Dolby3Dで採用されています。

方式はそれぞれ違いますが、左右の目にそれぞれ視差のある映像を送るというところは一緒になります。何箇所か劇場を変えて『アバター』をご覧になっている方も多いようです。IMAXでの視聴が高い評価を受けていますが、個人的には多少首を傾けてもきちんと立体に見る事ができるRealD方式が好きです。

次回は立体テレビについて説明していく予定です。