ドコモが日本のキャリアとして初めてVoLTEのサービスを開始する。同社では、サービスインを6月下旬としている。2014年5月14日に開催された同社の「2014夏モデル 新商品・新サービス発表会」で明らかにされた。ここでは、そのそのあらましについて見ていくことにしよう。

いよいよ始まるVoLTE

VoLTEは、LTEのデータ通信の一部としてIP通信による音声通話を実現する技術だ。現状のドコモの携帯電話網は、たとえ、端末がLTE対応機であったとしても、音声通話の際には3Gに切り替わっている。これをCSFBという。CSは回線交換を意味するCirkit Switchedの頭文字、FBはFallbackを意味する。

どうしてそういうことをするかというと、新しい技術であるLTEに対応した基地局が、全国津々浦々、すべてのサービスエリアで使えるとは限らないからだ。そこで、LTEエリアにおいては、待ち受けだけをLTEで行い、実際の通話は3Gに落とす仕組みが採用されてきた。

今回は、これをLTEエリアにおいてはCSFBせずに、LTEで完結させることにしたわけだ。それがVoLTEだ。ちなみにドコモのLTE基地局は2014年末に95,000局に達する計画で、その時点で現在の3G基地局に匹敵する数になるという。そうなれば、3Gのエリア=LTEのエリアということになり、理論的にはCSFBが起こらないということになるように思える。

ところがそうではない。通話は自分以外に相手が必要なのは、VoLTEでも3Gでも違いはない。今回のドコモの仕組みでは、相手がドコモのLTE対応機でない場合は、これまでどおりCSFBしての接続になるのだという。

相手がLTE圏内にいても、端末が非対応機であるとき、また、auやソフトバンクの電話番号にかけようとしたとき、さらには固定電話にかけようとした場合も、CSFBしての接続になり、VoLTEの恩恵は受けられない。これが他社との相互接続をしていない現時点でのドコモのVoLTE設備側の仕様だ。

VoLTE、4つのメリット

それでは、そのVoLTEは、そんなにいいものなのだろうか。

ドコモは4つの特徴を挙げる。

1. 高音質通話

音声の周波数特性を、これまでの300Hz~3.4KHzから、50Hz~7KHzに拡げ、低域、高域ともに周波数特性が拡がる。ちなみに固定電話は300Hz~3.4KHzなので、今までの音質が仕様上では固定電話と同等だったというのが、ちょっとにわかには信じられないのだが、今回は固定電話よりもかなり拡がっている。

発表会では、あの「リカちゃん」の声で、音質のよさがアピールされていた。ただし、前述の仕様のために、固定電話相手の通話ではCSFBが起こり、VoLTEの恩恵は受けられない。

2. スピーディな発着信

CSFBのための時間が必要ないため、相手の呼び出しにかかるまでの時間が短い。発表会では2.66秒と、現状のほぼ半分の時間でつながるとされていた。

3. 高速マルチアクセス

CSFBによって3Gに落ちてしまうと、せっかくのLTEの高速データ通信ができなくなってしまう。だが、VoLTEでは、それがなく、通話しながらデータ通信をする場合も、ほとんど影響を受けることがない。会話をしながら地図で場所を確認するといった比較的大きなデータがやりとりされる場合でもストレスがない。通話と併行して高速大容量の通信ができるわけだ。

4. ビデオコール

いわゆるテレビ電話も、これまでとは比較にならない高画質、高音質で楽しめる。

相手あっての通話

ドコモでは、音声、パケットの双方をAll LTE化することによって、周波数効率が向上し、効率はこれまでの約3倍になるという。

なお、これらVoLTEの恩恵が受けられるのは、この日発表された6機種のみだ。これらは5月15日から順次発売されるが、購入時に機能が実装されているわけではなく、6月のサービスインの時期になってソフトウェア更新によって対応することになる。既存機種を含む非対応端末がバージョンアップによって対応することはないという。

現時点で、今回発表の新製品のうち6機種のみがVoLTE対応。既存機種を含む非対応端末には対応予定が無い

VoLTEは、LTEのデータ通信として通話を実現するものだ。いわば、IP電話とどこが違うのだろうかという疑問も起こる。

ドコモによれば、3Gでの通話と同様に、しっかりと帯域制御が行われ、通話品質を損なわないようになるという。夕方の渋谷駅前といったパケ詰まりで有名なシチュエーションでも、VoLTEの通話には特別な帯域が割り当てられて、会話に支障がないように制御されるという。

さらに、そこで消費されるパケットは、一般のインターネットアクセスで消費されるパケットとは別計算となり、速度規制に至る上限までの値には含まれないということなので安心してほしい。料金なども、カケホーダイを含む、これまでのサービスと同等だ。

音質が悪い、遅延が気になるといった理由で携帯電話網での通話を嫌うユーザーは少なくない。ぼく自身もその傾向があって、自分のスマホでの通話時間は著しく少ない。だが、もしVoLTEで満足できる音質が確保されるのであれば、考えを改めるようなこともあるかもしれない。

そうはいっても相手が必要なのが通話である。ドコモのVoLTE対応機のみが対象というサービスイン時点での仕様では、まるで内線電話で、その恩恵を得ることができるのはごくわずかなユーザーに限られそうだ。せめて、固定電話相手では実現できるように早期の対応を望みたい。

今回の2014夏モデル 新商品・新サービス発表会の会場で「最高のコミュニケーションを」という"書"を掲げたNTTドコモの加藤薫社長

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)