【コラム】

兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃

49 安直?楽勝?作家から見た「過去のヒット作のリバイバル」

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今回のテーマは「近年多い『リバイバル』漫画・アニメについて」である。

漫画・アニメに限らず、リバイバルやリメイクは昨今まったく珍しいことではない。昔のドラマを今の俳優でやってみたり、古いゲームを最新の技術で作り直してみたり、解散したバンドが再結成したりするのも、これに含まれるだろう。「中学生の時お世話になっていたエロコンテンツを何の気なしに見返したら、逆に今のモノより使えた」という現象と同じように、当時楽しめたものは今でも大体楽しめるものである。

こういったリバイバルが発表されると、素直に喜ぶ当時のファンも多いだろう。だが中には、例えばバンドの再結成なら「解散後ピンでパッとしなかったから、金に困っての再結成だろう」など、過去の威光の使い回しに苦言を呈する者もいる。

私自身、そういったリバイバルに対してどう思うかというと、「いいな~!」と思う。羨まし過ぎる。私だって一発当てて、あとは一生それに縋って生きたいと思うが、それはできない。なぜなら、一発も当たっていないからだ。

カレー沢薫、「一発屋」のすごさを語る

リメイク商品に対し「安易な金儲け」と言う人もいるが、あれは全然安易ではない。前述の通り、過去のヒットをあてにするには、当然ながら一発ヒットを出さなければいけない。「一発で食っていきたいなら、まず一発当てろ」というのは、「モテたい」と願う男に「まずイケメンになって年収を1000万まで上げろ」と答えるぐらいのクソリプである。

結局、新作で当てるのも過去の当たりを使うのも、とにかく一回は当てないといけないことに変わりはないので、作者にとっては全然簡単ではないのだ。安易に儲けようとしている奴がいるとすれば「過去のヒット作でもう1回儲けましょうよ」と持ちかける第三者の方だろう。

作家によっては、いつまでも過去作品のことについて触れられることを好まない人もいるようだが、私に関して言えば褒めてくれるなら何でも構わない(ただし、過去作品に比べて今は面白くないという話なら、そいつの眉間に風通しの良い穴を開ける所存である)。

デビュー作が好きだったと言われればそれは素直に嬉しいし、仕事としてデビュー作をリメイクして描けと言われれば喜んで描く。当方が初期の作品のリメイクを描かないのは、どこも描けと言ってくれないからに他ならない。

そもそも 、リバイバルというのは過去に売れた物でやらなければ全く意味がない。リバイバル商品のターゲットは当時のファンなので、売れなかった物をもう一回やっても同じように売れないし、もっと売れない可能性の方が高いに決まっている。美味いカレーをリメイクして美味いカレードリアを作ることは出来るが、ウンコをリメイクしてカレーを作るのが至難の業であるのと同じだ。

過去の威光に縋るのもあまり良い事ではないかもしれないが、売れなかった物に執着する方が5億倍ヤバいので、そこは諦めて次を作るしかないのである。

リメイク作品のやさしさと「ゾンビ化」の恐怖

受け手として考えても、私自身、リメイク作品はかなり好きな方だ。単に懐かしいというのもあるが、年を取って「全く新しい物」を取り入れる力が落ちているからというのもあると思う。

ゲームをするにしても、新しいゲームのシステムを1から覚えるのは面倒だし、映画を見ていても、登場人物の名前と顔がなかなか一致せず、「おい!なんでこいつ生きてんだよ!じゃあさっき死んだの誰だよ!」ということが平気で起こる。その点、リメイクものなら新情報を仕入れる必要がないため、簡単に入り込むことができるのだ。

人によっては「リメイクされているとはいえ、同じ物を見て楽しいか?」と思うかもしれないが、この「知っている」というのが逆に頼もしいものである。当方、加齢と共にフィクションに対する鬱耐性がドンドン落ちてきているので、自分の心に傷をつけるような作品は見るのを避けたいと思っている。だから、何の予備知識もなく見た映画が「主人公は世界を救った。だがしかし、彼女は寝取られた」みたいな結末では困ってしまう。オチまでわかっている作品の方が逆に安心して見られるのだ。

とはいえ、周知の通り、リバイバルが全て成功するとは限らない。久しぶりに再会した初恋の彼女が金髪のパンチパーマになっていたら、誰しも「再会なんてしなきゃよかった」と思うだろう。やらない方が良かったリバイバルも多く存在する。

別の例えで言えば、「美しい盛りに死んだ彼女を、半分溶けたゾンビとして蘇らせました」みたいなことになっている下手なリメイク、下手な続編を出してしまったばっかりに、過去の威光さえ汚してしまう場合もある。 よって、過去作品のリメイクや続編を持ちかけられた作家は相当緊張すると思う。下手を打つと当時のファンさえ落胆させてしまうからだ。

結局リバイバルというのも、少なくとも作り手にとっては楽ではないことなのだと思う。では作家にとって何が一番楽かというと、「昔の作品が今になって突然売れる」ことである。リメイクする手間もなく、最も手っ取り早い。

私も、当時売れなかった自著が今売れても全然困らない。読者におかれましては今すぐAmazonなどの通販サイトの検索窓に「カレー沢薫」と入力していただき、検索結果に出てきた物を何でもいいからご購入いただければ幸いである。


<作者プロフィール>
カレー沢薫
漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。連載作品「やわらかい。課長起田総司」単行本は1~2巻まで発売中。10月15日にエッセイ「負ける技術」文庫版を発売した。

「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は2016年2月16日(火)掲載予定です。

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インデックス

連載目次
第87回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(28) ゼロデイアタック
第86回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(27) 生体認証
第85回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(26)CPM
第84回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(25)NAS
第83回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(24)デジタルサイネージ
第82回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(23)テキストマイニング
第81回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(22)ファビコン
第80回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(21)ERP
第79回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(20) オンデマンド
第78回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(19) VoIP
第77回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(18) ディープラーニング
第76回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(17) テレワーク
第75回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(16) 5G
第74回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(15) O2O2O
第73回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(14)SaaS
第72回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(13)シングルサインオン
第71回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(12)オムニチャネル
第70回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(11)ユビキタス
第69回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(10)ホワイトハッカー
第68回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(9)ビッグデータ
第67回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(8)ランサムウェア
第66回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(7)クラウド
第65回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(6)ドローン
第64回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(5)人工知能
第63回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(4)マルウェア
第62回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(3)FinTech(フィンテック)
第61回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(2)VR
第60回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(1)IoT
第59回 mixi時代のリア充アピールと「消灯」
第58回 春の花粉症と個々人の「体質」
第57回 飲み会に誘われた→たたかう、にげる?
第56回 SNS疲れと「インターネット上の友達」
第55回 カレー沢流・「真の親孝行」と「かんぴょう巻」
第54回 地方在住のオタクと「ガンジス川のまんじゅう」
第53回 カレー沢薫が激賞する「別腹で食べるべきスイーツ」
第52回 カレー沢薫、「ゆとり」「さとり」を語る
第51回 もしカレー沢薫の作品がアニメ/実写化したら
第50回 兼業漫画家が語る「健康法」と「クソゲー」
第49回 安直?楽勝?作家から見た「過去のヒット作のリバイバル」
第48回 兼業作家とマイナンバー
第47回 デザインを学んだカレー沢薫の「卒論」
第46回 カレー沢薫が「最後の晩餐に食べたい」一品
第45回 オタクがオタクであり続ける理由
第44回 漫画家・カレー沢薫がはじめてコラムを書いた日
第43回 カレー沢暴力からの卒業
第42回 兼業漫画家と女の「諦め」
第41回 カレー沢暴力(薫)が語る、「お断り」な仕事の依頼
第40回 女が「美」を希求する理由、そして“ありのまま”の罠
第39回 上京の旅路のロハスな過ごし方
第38回 酒もたばこもやらない兼業漫画家が愛する「嗜好品」
第37回 兼業漫画家と怒りの賢者モード
第36回 福山雅治の結婚と「公式設定」
第35回 もし「カレー沢薫」が改名するとしたら?
第34回 漫画家デビューしたいなら、まず石油王になってから
第33回 猫もまたいで通る「老後」の話
第32回 兼業漫画家が考える、「前の作風の方がよかった」と言われた時の対処法
第31回 カレー沢薫が偏愛する、ある猫の物語
第30回 「結婚すればリア充」なのか? 非リア充/リア充の境界線
第29回 猫派の兼業漫画家、「犬」を語る
第28回 漫画家の仕事をクールに演出する「作業用ドリンク」
第27回 続・「カレー沢薫先生サイン会」の開催動機
第26回 兼業漫画家の「作業用BGM」
第25回 カレー沢薫が語る「恋愛」~壁ドンは本当にときめくのか~
第24回 兼業漫画家とLINEスタンプ
第23回 兼業漫画家に学ぶタスク管理の極意
第22回 酒やたばこより健康を害する、たったひとつの事柄
第21回 兼業漫画家の「夏の風物詩」
第20回 漫画家の夫になるということ(あるいは、夫婦が暮らすということ)
第19回 漫画家という職業選択と親心
第18回 二次創作の醍醐味と争いを生まないための「注意」
第17回 漫画家・カレー沢薫が語る「アイデアのつくり方」
第16回 猫よ、人の望みの喜びよ
第15回 カレー沢薫というペンネームを生んだ「病」
第14回 コミュ障界の石川五ェ門が人間観察をしない理由
第13回 「カレー沢薫先生サイン会」の開催動機
第12回 兼業漫画家の美容意識と"オタクの美醜"
第11回 あなたは米に「萌え」られるか
第10回 健康で文化的な兼業漫画家の生活
第9回 漫画家の絵の上達と「オウンゴール」
第8回 漫画家の夫をめぐる「傾向」と「受難」
第7回 カレー沢薫の華麗なる交友関係
第6回 漫画家は怒り、編集者はスコップを持つ
第5回 兼業漫画家は"大平原"の夢を見るか
第4回 カレー沢流・漫画制作におけるライフハック
第3回 "兼業まんがクリエイター"の日常を徹底解剖
第2回 確定申告、その経費と内訳~カレー沢薫の場合~
第1回 "漫画を描かない漫画家志望"がデビューするまで

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