図1 DS.1000の本体

はじめまして、スマイルリンクの大林万利子と申します。当社は大田区にある工場で、国産のパーソナル3Dプリンタ「DS.1000」を開発・販売をしております。おかげさまで多くのお客様からご支持をいただき、2013年12月から出荷を開始しています。

今回から3Dプリンタがどんなものなのか、どういった用途で役立つのかなどをDS.1000を使って具体的ご紹介していきたいと思います。3Dプリンタに興味がある、または導入を考えている方はぜひ読んでください(図1)。

立体物を出力するのが3Dプリンタ

記念すべき第1回目はパーソナル3Dプリンタの基本を紹介しましょう。名前を見てもわかるように、3Dプリンタはプリンタの仲間です。でも、プリンタと聞くと用紙に出力するものを思い浮かべてしまう人が多いでしょう。私は3Dプリンタのことを"3D造形機"と表現したほうがフィットする気がしています。

パーソナル3Dプリンタを使うメリットは、大きな設備がなければできなかった立体物の造形がカンタンに"おうちプリント"できること。これまで3Dプリンタは高価であったこともあり、主にメーカーの開発部門の試作やデザイン事務所、フィギュア作りなどで使われてきました。現在は低価格化にともない、用途が広がっています。実は、DS.1000の部品の一部を3Dプリンタで製造しています(計5部品 図2)。「自分の部品を自分で製造する」というこれまでにない"ものづくり"のプロセスを実現できるのです。

図2 3Dプリンタで作成したDS.1000の部品

私が初めて3Dプリンタに触れたのは意外と遅く、2013年の初頭でした。驚いたのはその作り方(造形方法)。これまでのプラスチック部品の作り方(金型を使った射出成型)に比べてあまりにもカンタンにできること。熱を加えて溶かした糸状のプラスチックを上から堆積させ(図3)、プラスチックは下から冷えて固まっていくのでその上に積み重ねていきます。まだ実際に3Dプリンタを見たことがない人は、ソフトクリームを作る要領に近いと言うとイメージしやすいと思います。

図3 実際に3Dプリントしているときの様子

3Dプリントするのに必要なもの

3Dプリントを使って立体物を作るには、大きく分けて以下の4つのモノが必要です。

  • 3Dプリンタ
  • パソコン(Windows7/8対応が望ましい)
  • フィラメント(図4)
  • 3Dデータ

「フィラメント」は聞きなれない言葉かもしれませんが、ひと言でいうなら3Dプリントするための材料です。DS.1000の場合はプラスチックを材料として利用します。プラスチックを糸状(直径1.75mm)にしてボビンのようなものに巻き付けます。値段は1kgで6000円位(種類によってさまざま)で、材質はABS、PLA、ナイロンがあり、カラーも複数あります。

図4 プラスチック製のフィラメントはカラーが豊富にそろう

なお、プラスチックを利用するパーソナル3Dプリンタ以外にも、石膏や金属といった材料を利用する工業用の3Dプリンタがあります。機種によって値段はまちまちですが、数百万、数千万、ものによっては1億円を超えるものもあります。

立体物を成形するには、自分で作成した3Dデータにプリント指示を出します。すると、3Dプリンタから出力が始まります。この連載のタイトル画像に使った「3」(高さ8cm)の字を出力するには20分ほどかかりました。図5の右は、当社でお客様にコーヒーと一緒にお出ししている砂糖入れです。これもDS.1000で5時間かけて成形しました。夜寝る前にセットすると朝にはできています。

また、自分でデータを作成しなくてもインターネット上には多数(10万件以上)のデータが存在しているので、そこから自由にダウンロードすることもできます。私自身はダウンロードしたデータを利用して、会議コーナーのディスプレイ作りをしています。そのほかにも、トイレ、キッチンの表示サインやクリスマスツリー、はてはお正月のおもち(図6)など、季節のディスプレイ作りにも活用しています。

図5 3Dプリンタで出力した「3」(左)、砂糖入れ(右)

図6 出力したおもち

持っている家具にサイズを合わせて"自分仕様"のものを作ることができるのも、3Dプリンタの良さですし、小物を自分の好きな色で統一するなど、これまでできなかった自由度もあります。このように生活に密着した雑貨などの出力は今後ますます盛んになるでしょう。

次回からは、3Dプリンタについてどう使うのか、3Dデータはどう入手するかなどを具体的にお話していきたいと思います。