【レポート】

激動の半導体メモリ業界はどこに向かうのか? - Micronへの人材流出が相次ぐWestern Digital/SanDisk

東芝と米Western Digital(WD)を中心とする「日米連合」が東芝メモリの売却交渉で最終調整に入ったと一部のメディアが報じているが、その陰で、当のWestern Digitalおよびその子会社である米SanDiskから社長・副社長などのトップクラスから一般技術者に至る幅広い人材が、NAND型フラッシュメモリでライバル関係にある米Micron Technologyへ続々転出している様子が浮き彫りになってきた。

WD/SanDisk出身者で固められたMicronのNAND関係の役員陣

SanDiskの共同創業者の1人で2016年まで同社の社長兼CEOを務め、その後Western DigitalのSanDisk買収に伴い、Western Digitalの取締役に就任していたSanjay Mehrotra氏が、2017年5月8日にMicronの社長兼CEOならびに取締役会メンバーに就任したことはすでに報じられたとおりだが、それに続いて、以下の3名がWestern Digital/SandiskからMicronへと移籍し、副社長以上の重要な地位に就任していることが分かった。

  • Sumit Sadana氏 2017年6月22日付けでエグゼクティブ・バイスプレジデント(EVP)兼チーフ・ビジネス・オフィサー(CBO)に就任。4ビジネス部門を統括するほか、戦略立案やビジネス開発も担当。Sanjay Mehrotra社長に次ぐ地位にあると言える。

前職は、SanDiskのEVP兼チーフ戦略オフィサー(Chief Strategy Officer:CSO)で、エンタープライズ・ソリューション担当ゼネラルマネージャーを兼務していた。

  • Jeff VerHeul氏

2017年6月26日付けでノンボラタイル(不揮発性)エンジニアリング担当シニア・バイスプレジデント(SVP)に就任。Micronの生え抜きSVPに替わり、NAND型フラッシュメモリの技術開発の陣頭指揮を行う。

前職はSanDiskのCorporate Engineering担当SVPとして、NAND型フラッシュメモリの技術を統括していた。

  • Anand Jayapalan氏

2017年8月21日付けでMicronのストレージ・ビジネス・ユニット 担当VPに就任。NANDフラッシュ・ストレージのビジネスを担当する。

前職はWestern Digitalのエンタープライズおよびクライアントコンピュート・ソリューション・マーケティング担当VPであった。

Sanjay Mehrotra社長は東芝とNAND型フラッシュメモリの開発・製造に関する協業を提案し、17年間にわたりその協業を推進し、東芝の技術内容を熟知した人物と知られているが、同氏が、古巣のWestern Digital/SanDiskから引き抜いた3名の幹部は、いずれも東芝四日市工場で製造されているNAND型フラッシュメモリの技術やビジネスを熟知した人物である。

いままで、半導体メモリ技術全般を担当してきた、Micron生え抜きのBrian M. Shirley氏(1988年にMicronに入社以来29年にわたってDRAM設計・開発中心に従事してきた人物)は、6月以降、DRAMおよび新規メモリ・エンジニアリング担当SVPとしてNAND以外を担当する。ここで言う新規メモリとは、Intelと協業している3D X-pontメモリやその他の次世代メモリを指す。

SanDiskや東芝の技術者もMicronへ移籍が進む

この動きがどういうことかというと、Micronは伝統あるDRAMビジネスを、生え抜き組に任せて、NANDの開発からビジネスの展開まで、Western Digital/SanDisk出身者に新たに担当させ、彼らにかつての協業相手だった東芝を打倒させるとともにトップのSamsung Electronicsに追い付く作戦へと戦略を練り直したようだ。これだけ東芝の内情を熟知したトップがMicronに結集すると、東芝にとっても脅威となろう。

しかし、Micronへの移籍はWestern Digital/SanDiskトップだけにとどまらない。

WDやSanDiskのエンジニアに話を聞くと、「東芝を買収するようなことになると、ダブってしまう回路・システム設計や開発などの人材がリストラされる」ことを心配しており、そういった人々がMicronをはじめとした他のメモリベンダに移籍し始めているという。

もう一方の話題の主である東芝のエンジニアからも同様の動きを対する声が聞こえてきている。2016年のISSCCで、3ビット/セルのフローティングゲート方式を適用した、世界最大級の容量を実現した768Gビットの3次元NAND型(3D NAND)フラッシュメモリ(読み出し速度は、800Mバイト/秒)を発表したMicronの社員は、元東芝のNAND開発担当のキーメンバーであった人物である。東芝からの移籍組が、いまやMicron本社でNAND開発の主役として活躍している例と言えるだろう。

Micronは、日本での人材採用を強化しており、積極的に日本に居るメモリ関連のエンジニアをヘッドハンティングしていると言われており、SanDiskや東芝のNANDビジネスで活躍してきた多くの人物がすでに、米国アイダホ州ボイジーにあるMicron本社に集結しているという。ちなみに、すでにDRAMの分野において、破産し、Micron子会社となったエルピーダメモリからの転籍組の日本人技術者たちがボイジーにて活躍しているといわれている。

なお、Micronは、2017年8月に2015年10月より進めてきた本社R&Dセンターの増築工事を終え、研究開発用クリーンルームを従来の2倍の広さに拡張した模様だ。また、併せて、Micron傘下のすべての半導体メモリ工場と研究開発センターとのビッグデータをやり取りする高速通信網も整備されたとのことで、ここでMicronは、次世代半導体技術、特に「微細化したDRAM」、「多層化した3D-NAND」、「高集積化した3D Xpointメモリ」の研究を強化するとしており、新たな研究者や技術者を受け入れる態勢作りに余念がないようである。

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