【レポート】

マインドストーム歴6カ月の高校生チームが国際大会に挑戦!- WRO2016インド国際大会で世界4位に輝くまでのキセキ

教育版レゴマインドストーム(マインドストーム)を使った国際ロボットコンテスト WRO(World Robot Olympiad)。同コンテストはプログラムにより自動制御する技術を競う「レギュラーカテゴリー」、テーマに沿って設計・デザインしたロボットをプレゼンテーションする「オープンカテゴリー」の2カテゴリーで構成される。2016年11月25日~27日に開催されたWRO2016インド国際大会では、マインドストーム歴わずか半年の横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校のチームnorn(ノルン)がオープンカテゴリー高校生部門で第4位に入賞した。今回、同校の綿貫巌先生にその舞台裏をレポートしてもらった。


WRO2016インド国際大会の会場

私が勤めている横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校では授業の一環としてマインドストームを扱っています。本校では高校2年生になると生徒が理科、数学、情報分野の好きなジャンルの研究を行います。大学でいう研究室に入るようなイメージです。そして8月、12月に大学教授の前で研究発表をする機会や、海外研修でポスター発表を行う機会を設けています。マインドストームを選択した12名の生徒は1年間かけて自分が作りたいロボット作ります。

私は2015年に、マインドストーム歴2年目にして生徒ともに日本代表としてWRO2015ドーハ国際大会に出場し、今回はWRO2016インド国際大会で世界4位という結果を残すことができました。そこで、本レポートでは私がどのように生徒を指導してきたか、WRO2016インド国際大会に参加した生徒が世界4位に輝いた勝因はなんだったのか、生徒と教員がこの大会のこのカテゴリーから何を学べるのかを紹介したいと思います。

WROオープンカテゴリーとは

オープンカテゴリーでは、競技者(生徒)2~3名とコーチ(20歳以上)1名でチームを結成し、指定されたテーマのロボットを作成します。予選ではビデオとレポートを提出、そこで選ばれるとWRO Japan決勝大会に出場できます。決勝大会では当日審査員へ手渡しをするレポートと5分間のプレゼン、そして5分間の質疑応答で優秀チームと国際大会選抜チームが決まります。そして国際大会では事前に提出するビデオとレポート、そして当日手渡しをするレポートと5分間のプレゼン、そして5分間の質疑応答で審査されます。事前に提出する資料および大会当日のプレゼン・質疑応用は全て英語を用います。また、ロボットの出来はもちろん、プレゼン力も試されます。そのため、大人がロボットに口を出しすぎると子供たちがプレゼンに苦しむということで、コーチと競技者の距離感も非常に大事な要素となります。

WROオープンカテゴリー出場までの経緯

まずは、WROに出場するまでの経緯からご紹介します。2015年にマインドストームの取引でお世話になっているアフレルの方からWROを紹介していただきました。私自身、当時マインドストーム歴2年目だったため、まずは自分でWROのことを調べ、生徒に呼びかけました。すると1人の生徒が出たいと言ってきました。生徒はマインドストーム歴3カ月でしたが、それでもプレゼン力と企画力で予選を突破し、WRO Japan決勝大会で最優秀賞を取り、国際大会出場を果たしました。残念ながら、国際大会では結果が残せませんでした。

2016年度の取り組み

2016年度は本校から3チーム、オープンカテゴリーにエントリーしました。1チームは3年生で編成され、部活動で参加ということでコーチも私ではありませんでした。私がコーチを務めた2チームの内、1チームは2015年度に国際大会へ行った生徒2名を含む3年生チーム、そしてもう1チームが2年生女子3名で編成されたチームnornでした。部活動チームは予選敗退、2015年度に国際大会出場経験のあるチームはWRO Japan決勝大会敗退。そしてnornは優秀賞ながら見事国際大会への出場を決めました。

nornのロボット

nornが作成したロボットは植物由来のペットボトルと石油由来のペットボトルを分別し、植物由来のペットボトルをカッターで糸状に加工し、その糸を編んでエコたわしを作るというものです。既存のリサイクルは多くの熱エネルギーを必要とすること、回収されたペットボトルは経済発展の著しい国へ売却されているということを知って、ペットボトルをより効率よくリサイクル出来る方法を探り、このロボットのアイディアがでました。

2016年度のオープンカテゴリーのミッションは「Rap the scrap」;廃棄物を削減し、削減し、リサイクルするというもので、このミッションを自分たちで解釈し自分たちのロボットの資源循環型社会における役割は何なのかを考え、レポートとプレゼンでそのことを伝えました。nornのロボット「温・巧・紬」というのは資源を長くもう一度活用し資源循環の大切さを人々に伝えるという社会的な役割を担っており、モノがあふれる日本には欠かせないロボットだと思っています。

チーム「norn」のブース

nornのロボット「「温・巧・紬」」

WRO Japan決勝大会でのnornの勝因

nornはコーチの私から言えば「勝つべくして勝ったチーム」でした。

2015年度に国際大会に出場したチームはどうしてもプレゼン時間を守ることができませんでした。また、ロボットが100%できていないのに150%のロボットを作ろうとしたため無理がたくさんでてきて、プレゼンもボロボロ、ロボットも完成しませんでした。

私は彼女たちにその経験をしっかり伝え、3年生チームには同じ失敗をしないよう話しました。結果nornは私のいうことをしっかり飲み込んでくれました。特に「どんなに忙しくてもリハーサルと時間を守ることを徹底すること」という部分は忠実に守ってくれました。この信頼関係こそ国際大会へつながった勝因だと考えています。

国際大会に向けたnornの活動

WRO Japan決勝大会でnornのロボットは完璧に動きませんでしたが、自分たちできる限界を見極め、できるところから取り組んだため、国際大会にむけて100%以上のロボットを作るのではなく、100%のロボットを作り、それと並行してプレゼン作りに力を入れました。

私も含めてnornのメンバーは国際大会3週間前からほぼ不眠不休で作業にあたりました。教育者として、これをやらせていいかは疑問に残る部分ではありますが、そのくらいWRO国際大会に日本代表として出るということにやりがいを感じていました。

いざ国際大会!

国際大会は初日がブース設営、2日目が午前、午後で計2回のプレゼン。3日目が午前中に1回のプレゼンを行います。3日目のプレゼンは前日のプレゼンで上位入賞候補に絞られたチームのみ行います。

ブース設営当日、生徒は私服で、私はスーツで準備をしました。この日はとにかく準備に没頭し、夜は一睡もすることなくプレゼンの最終確認と準備で不備が見つかったロボットの手直しを行いました。

初日の準備風景

2日目、私も生徒も和装を衣装にしました。これはオープンカテゴリーでは賭けです。衣装を民族衣装にすることにより目立ちはしますが、ロボットに対する目は一層厳しいものになります。ロボット以外の部分(衣装、ブース等)が目立つことにより、ロボットのプレゼンが不十分だと「ブースや衣装だけは派手なのに…」とあまりいい印象が持たれません。また、インドに渡ってもロボットの不調が解決されておらず、またプレゼン練習も不十分であったため、nornにとっては大きな「賭け」でした。それでも私達は和装で勝負にでることにしました。

私も含め、3歩歩けば写真撮影を求められるような状況で1、2回目のプレゼンも100%の力を出し切ることができました。この日も一睡もすることなくプレゼンの練習をしました。明日、最後のプレゼンができることを信じて…

nornのメンバー

そして、いよいよ最終日。10時頃審査員が来て下さることがわかりました。最終審査ではロボットが100%動かず、質問も高度になっていたため対策不足だと感じました。具体的に説明すると、1、2回目のプレゼンでは審査員から比較的優しい内容(「それぞれの生徒の役割」、「なぜこういうロボットにしたか」という導入部分など)について質問されますが、3回目は機構面を中心に物理的発想、プログラミングもアルゴリズムが質問の中心になります。さらに、審査員もネイティブではなかったため、コミュニケーション部分で苦戦を強いられました。もう少し専門的な知識を英語で言える練習をしておけば良かったです。

この大会ではきれいな英語を求められているわけではなく、英語をしゃべることができる(ネイティブではない)審査員と如何にコミュニケーションが取れるかが重要です。

想定内の質問練習だけでなく第3者(できればネイティブレベルに英語はしゃべれない、英語ができる人)の前でプレゼン練習をさせておくべきだったと思いました。

nornの勝因は?

それでもnornが、世界4位という結果を収められたのは、ビデオとレポートの出来です。ただの説明ビデオ、説明レポートにならないようにしました。これは彼女たちの芸術センスによるもので、ロボットの知識がそこまでない人から専門知識まで持ち合わせている人にまでうけるようなものになりました。

また、ロボットにおいても機構はとても単純で、しかし強度をだすために工夫したパーツ部分や機構面は高く評価して頂いたと思います。また、会場内でも大会でありながらとても楽しんで大会に参加していました。そういったところも審査員はみていたように感じます。

オープンカテゴリーから学べること

オープンカテゴリーでは他国の学生との交流が盛んに行われます。これはなかなかできないことだと思います。英語も完璧でなくてOKです。身振り手振りも入れて相手にうまく伝わったときの生徒の表情は大変生き生きしています。私も今回生徒にはホワイトボードを持たせました。これはとても効果がありました。

ホワイトボードは大事なコミュニケーションツールの1つです

また、プレゼンの大会ですから主観的にだけでなく客観的に物事を捉える力が鍛えられます。最近の生徒はプログラミングばかりに目が行きアルゴリズムを考えない傾向にあるので、この対策にも最適です。

コーチもたくさん学ぶことがあります。それは「大会における生徒との距離感」です。教員であれば生徒が作ったロボットに口を挟みたくなると思います。しかし、あまり挟みすぎてしまうとプレゼン自体は生徒が行うということ、またその際コーチであっても大人は干渉できません。ただただ生徒を見守るプレゼンの10分間はとても長いですが、そこはあくまで生徒を信じます。

また、国際大会は英語で行われるため担当教科に関係なく英語力も求められます。審査員は全員ネイティブではないので、如何なる英語にも対応でき、また英語が閃かなかった時の対応(ジェスチャー、母国語まじりでの対応など)が求められます。 ルール変更などはコーチを通じて伝達されるので、全てを生徒に任せてしまうと、非常に苦しむことになると思います。

最後に「チームジャパンのコーチになる」ということです。国際大会まで進めば強化合宿があり、合宿の中でレギュラーカテゴリーの日本代表チームとも接点ができます。また、オープンカテゴリー間では他チームにアドバイスを求められることもあります。自分がコーチを務めるチームが結果を残すよう指導するのは当然ですが、日本代表のコーチという意識が芽生えるのはこのカテゴリーのよさであり、コーチ間の付き合いは一生ものになります。他にも体験できることはたくさんあります。コーチ、選手にもぜひ体験して頂きたいです。

 毎年WROに関われる学校の先生がうらやましく、そのような学校でマインドストームの指導ができるなら、そうしたいと本気で思っています。そのくらい大変魅力のある大会、それがWROであり情報(科目)の教員である私が力を発揮できたのがオープンカテゴリーでした。

今回、このような機会を与えてくださったすべての方に感謝いたします。

閉会式にて

著者紹介

綿貫巌
大学卒業後、私立学校にて受験数学を指導。2014年、横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校にて情報専門の教員として教鞭を取る。それに合わせてマインドストームの指導を開始。2015年にはWRO Japan決勝大会オープンカテゴリーにて最優秀賞チームのコーチを務める。2016年にはWROインド国際大会にてnornを世界4位に導く。


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