3D NANDの生産拡大を目指して新棟を建設

東芝は、3D NANDの生産拡大を目的として、Y5(第5製造棟)隣接地に新製造棟(図5上)の建設を2017年2月に着手する。新製造棟は、N-Y2同様、3D NAND固有の製造工程を行う予定であり、第5製造棟と空中搬送路で結ばれるものとみられる(図3右側に白棒で表示)。市場動向を見極めながら最適な生産スペースを確保するという観点から第5製造棟と同様に2期に分けて建設することとし、今回は第1期分を建設する予定で、竣工は2018年夏の予定である。

また、同工場内に分散していた開発部門を集結させ、3D NANDに留まらずReRAMや新規メモリの開発を加速するための開発センター(図5下)を新製造棟の隣接地に建設することにしている。

新製造棟における具体的な設備導入・生産開始の時期、生産 能力、生産計画などは、市場動向を踏まえ、投資パートナーである米Western Digitalとの協議の上、共同投資を今後進める予定であるという。

図5 新築が計画されている東芝四日市工場新製造棟(上)と開発センタ―(下) (資料提供:東芝)

設備投資は毎年2000億円規模を継続

「2013年から2015年にかけて、第5製造棟第2期増設や第2製造棟の建て替えのために、2013年は2000億円、2014年は2200億円、2015年は2008億円とコンスタントに2000億円規模の投資を続けてきた。2016~2018年は3年間で総額8600億円投資計画をたて、2016年度は3D NANDへの移行のために2850億投資した。2017~2018年は、3D NAND増産や新棟建設に投資する」と同氏は継続して設備投資を行ってきていることを強調したほか、「メモリ事業は、3D NANDおよびSSD事業を加速し、売上高・営業利益の拡大を図る。具体的には、市場の伸び(ビット基準で40%)を上回る伸長をめざす。NANDの売値ダウン(年25-30%)に追随できるコスト削減を追求していく」と、生産性の改善や取れ数の増加などによる売り上げの拡大と利益確保も併せて進めていくとした。

全製造棟の統合生産を目指す

巨大化する四日市工場で高能率なオペレーションをめざし、Y3、Y4、N-Y2、Y5の各製造棟は500mmを超える棟間搬送で接続され、4棟それぞれの製造装置能力を相互補完する世界初の統合生産の確立が進められており、将来的には新製造棟(Y6)とも繋げる予定だという。そのため、「ビッグデータを活用した生産システムを導入し生産性向上を推進していきたい」としており、1日あたり20億件という膨大なデータを処理し、生産性向上、歩留まり向上、信頼性向上に向けて分析し、解析結果のリアルタイムの見える化を進めていくとする。また、マシンラーニングやディープラーニングなどの人工知能(AI)による業務効率の向上も図ることで、将来の生産拡大に備え、「人はより高度な業務を行うようにしていきたい」と将来を展望する。

マシンラーニング/ディープラーニング活用で成果

人間では処理できないビッグデータの解析にマシンラーニングやディ-プラーニングなどのAI技術を活用、適用する取り組みはすでに進められており、実際にウェハ検査画像解析に適用し、1日あたり30万枚の画像解析を行ったところ、100種類の不良モードに自動分類する成功率は49%から83%に改善することができたとする。また、AI技術を製品歩留まりの監視に適用し、原因設備の特定自動化を図ったところ、そのための平均時間が一件6時間から2時間に短縮できたという。

成毛氏は「ビッグデータやAI技術はストレージ需要拡大の起爆剤にもなる。半導体・ストレージ技術の発展で豊かな価値を創造し、情報化・省エネ社会のインフラ造りに貢献していきたい」と話しを結んだ。