携帯電話が安く使える格安通信サービス。人気の高まりとともに、サービスを提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)は急増したが、その結果として今では生き残りをかけた戦いに突入したという見方もある。事実、撤退を表明した事業者もいる状況だ。そうした中で、インターネットイニシアティブは、MVNO事業を進化させる「フルMVNO」への取り組みを進めることを表明した。これにより、MVNOは多様なサービスの提供が可能になり、格安SIM新時代の到来をも予感させるが、実際はどうなるのだろうか。

IIJが何をするのか

インターネットイニシアティブ(IIJ)は8月29日、国内初の「フルMVNO」への進化を図り、2017年度下半期にサービス提供すると発表した。

MVNOは回線を借り受け、通信サービスを提供する事業者のことだが、機能制限があることで、大手携帯電話会社のように自由度の高い通信サービスの提供が困難なのが実態だ。そうした問題を解消し、MVNOができる範囲を拡大したのが「フルMVNO」というわけである。

IIJがフルMVNOへの進化を目指す理由は、MVNOの事業環境の変化にある。ここ数年、格安SIMが流行になりつつあり、それとともにMVNOが増加。その数は550社以上に上る。事業者が多数いる中で、料金競争も過熱化しており、いわば"レッドオーシャン"の状況に置かれているのだ。この状況を打開するためには、先に述べた機能の制限を外し、フルMVNOになるのがいいというわけである。

MVNOはいわば"レッドオーシャン"の状況。競争が激化している

では、制限のかかっている機能とは何か。それは、加入者管理機能(HLR/HSS)である。これは、SIMカードを管理するためのデータベースであり、SIMカードのIDをもとにスマートフォンの所在地を記録したり、ネットワークへの接続認証を行ったりする役割を持つ。そして、この機能を管理するNTTドコモなど大手携帯電話会社がSIMカードを発行している。多くの人は気づかないだろうが、格安SIMを使っていても、SIMカードをつぶさに見れば、NTTドコモと記載されていたりする。

フルMVNOになることでSIMカードの発行が可能になり、料金プランも多様化できる

逆に言えば、フルMVNO化を果たすことで、MVNOがSIMカードを発行できる。つまり、MVNOがSIMカードの発行を発行することで、MVNOの役割が大きく変わることになるという論理だ。それでは、SIMカードが発行することで何ができるようになるのだろうか。