青森県は三方が海に囲まれ、山もあれば平野も深い森もある恵まれた環境。農産物と畜産物、水産物をバランス良く生産しており、「食材の宝庫」と表現されることもしばしばだ。しかしながら、実は日本穀物検定協会が実施する「米の食味ランキング」における最高評価「特A」を取得した米はこれまで誕生していなかった。
そんななか、いわば青森県のフラッグシップ米といえる「青天の霹靂」が悲願の特Aを取得。2016年秋に県外での本格デビューを迎える。
青森の米作り
北海道と東北の米は、日本穀物検定協会が実施する「米の食味ランキング」における最高評価「特A」の常連だ。しかし、2014年産で"初めて"特A評価(参考品種として)を取得したのが青森県の「青天の霹靂」だ。逆にいえば、それまで長きにわたって青森には特Aのブランド米が存在していなかった。
青森の米作りは低温との闘いだ。これまでも、寒さに強いこと、安定した収量があることを重視して品種開発されてきた。現在の主力品種である「つがるロマン」「まっしぐら」は、寒さに強く食味も良い。なおかつ値段にお手頃感があることから、県内では家庭用、県外では業務用として重宝されてきた。でもこれは逆にいえば、多く収穫しないと農家へ収入として還元されにくいということでもある。
実際に、「青天の霹靂」の生産に携わって4年目を迎える工藤憲男氏は「安い米をたくさん作るスタイルでは収量が求められる。でも食味の良い米をブランド化すれば価格を高くできるので、作業量も少なくて済む」と語る。
さらに、「青森の米はおいしい」というイメージが定着すれば、既存の青森の米、「つがるロマン」や「まっしぐら」にも良い影響を与えられるかもしれない。そうして、青森県では特A取得への気運が高まっていった。2015年産でのデビューを目指し、「青系187号」という品種を新たなブランド米候補として選出。その「青系187号」こそがのちに「青天の霹靂」となる。