イー・ラーニング研究所は、その名のとおりオンラインで学習するeラーニングを提供する企業で、アクティブ・ラーニングにも積極的に取り組んでいる。ちなみに、厳しいといわれている教育産業においてeラーニング市場は堅調。前出の矢野経済研究所の調査によれば、2015年は1,745 億円という市場規模となり、これは前年比 15.7%増だという。企業研修などでの利用が拡大したほか、ICTを活用した学校教育現場にも浸透し始めているのが要因だ。

さて、このイー・ラーニング研究所が主催する「子ども未来キャリア塾」の授業を見学させていただいた。その名前からわかるとおり、将来、ビジネスに役立つ思考力を育てるのがねらいで、小学校高学年向けには「ビジネススキルを学んでみよう!」という副題がついている。

当日は、自己紹介を最終目的とした、コミュニケーション能力を高める内容で授業が行われた。まず、マインドマップを用いたゲームから開始。「夏」や「クリスマス」といった“お題”をもとに、子どもたちが“思考”をつなげていく。

写真左:マインドマップに夢中になって書き込む生徒。写真右:生徒たちの手によるマインドマップ

集中力を途切れさせない授業

そして授業中、とにかく目立ったのは、子どもたちが質問に答えるシーンが非常に多かったこと。担当講師によれば、意図的に質問回数を増やし、子どもたちに“答えざるをえない”状況を作りあげているのだそうだ。受講した生徒のうち一人は、普段は物静かであまり口を開かないそうだが、筆者にはまったくそんな印象は受けなかった。

そしてもう1点気づいたのが、子どもたちの集中力が途切れる様子がないこと。小学校の授業は通常40~50分間だが、この授業は90分間とかなり長い。おそらく、子どもたちにとって初めての“長丁場”だったにちがいないが、最後まで集中力が途切れた感の素振りは見られなかった。

自分で考えたキャッチコピーを使って自己紹介する生徒。この生徒は「モデルになった私」「パン屋さんになった私」と、2種類の未来を自己紹介で披露した

さて、授業最後にいよいよ自己紹介に取りかかる。「自分のこと」「今」「昔のこと」「将来」というお題の入ったシートを使い、マインドマップの要領で“自分を構成する要素”を書き込んでいく。そしてそのシートをもとに自分のキャッチコピーを考え、それを発表して授業は幕を閉じる。

このキャッチコピーに必ず“将来やりたい仕事”について触れているのがユニークだった。アクティブ・ラーニングの第一人者で子ども未来キャリア塾のアドバイザーでもある緑進学院 代表取締役 石田勝紀氏によると「なりたい職業がある子どもの場合、将来、仮にその職業に就けなくとも、なりたい職業がない子どもに比べ、何かしらの仕事に就く確率が高くなる研究結果が出ています」という。アクティブ・ラーニングを通じ“将来あるべき自分の働く姿”を意識させているというワケだ。