バッファローのIEEE802.11ac 4×4 MIMO対応Wi-Fi(無線LAN)ルータ「WXR-2533DHP」について、過日は簡単なレビューをお届けした。ここでは、WXR-2533DHPの開発コンセプトやユーザーへの配慮などに関して、バッファローのネットワーク事業部の富山強氏と成瀬廣高氏にお話を伺った。

【レビュー】
バッファローの11ac無線LANルータ「WXR-2533DHP」- 4×4 MIMOで最大1733Mbpsはどこまで速いか

「WXR-2533DHP」は、横置き、縦置き、壁掛けの設置に対応。どの置き方でも、外部アンテナゆえに、電波の飛びにはあまり影響を与えない。縦置きだと隠れる位置にバッファローのロゴを配置してあるが、全体としてはおとなしいデザインだ

11acもついに4×4 MIMOですが、商品企画として重視したところはどこでしょうか?

富山氏「11acが規格化された時から、4×4製品は視野に入っていました。4×4 MIMOによる最大1,733Mbpsの速度はインパクトがあり、WXR-2533DHPも実測で1,258Mbpsの転送性能は持っています。ただ、スピードは大切ですが、WXR-2533DHPの開発でもっとも重視したのはスピードではありません。

「スマホは小さいだけでなく、立てても横にしても利用する。どんな状況下でも安定した転送を行うというのが基本コンセプト」と語る富山氏

現在、無線LAN市場の主役はパソコンではなく、スマホやタブレットです。家の外では3GやLTEで使わざるをえないことが多いと思いますが、自宅の中ではWi-Fiを使うことで、転送量制限を気にせず大容量のコンテンツを利用できます。ただ、スマホやタブレットが11acに対応しているといっても、ほとんどは1×1のシングルストリームですから、規格上の最大速度は433Mbpsです。

さらに、パソコンでの利用と大きく異なるポイントは、端末が小さく、よく動くという点です。スマホやタブレットは、リビングでも使えば、ベッドで横になって使うかもしれない。トイレにこもってみたり、防水機種が増えてきたのでお風呂でも見たい。パソコン以上に『家の隅々まで電波が届く』ことが重要視されるようになっています。

WXR-2533DHPとは直接関係ありませんが、弊社は無線LANの中継機もラインナップしておりまして、ここ一年で急成長しました。家のどこでも使いたいというニーズから、市場が拡大したと思います。また、子機側の11ac対応が広がったため、昨年(2014年)は親機販売の60%が11n製品でしたが、今年(2015年)は60%が11ac製品になりました。

スマホは小さいので内蔵アンテナの位置にも制約があり、向きによる感度差があります。立てて使っている場合は速度が出るけど、ベッドで横になったとたんに速度が低下するのはストレスがたまります。そこでWXR-2533DHPでは、インライン配列の外部アンテナを採用したわけです。WXR-2533DHPのアンテナを立てる、横にする、角度を変えるというセッティングによって、設置場所や気になる利用場所で最適なアンテナ展開にすることが可能です」

従来の製品と比べて、かなり大型の印象がありますが?

富山氏「これには2つの理由があります。一つはアンテナの配置です。いくつかのパターンを試した結果、一直線に並べたほうが様々な環境で使いやすく、設定の幅も広がるのです。たとえば、本体の四隅にアンテナを配置するパターンだと、アンテナが重なりあって効率が落ちてしまいます。また、アンテナ間が短いと干渉の原因になります。安定した動作のためには、ある程度の長さも必要でした」

バッファローの成瀬氏。スマホを試作ボードに見立てて、こんな感じに色々と配置したテストを行ったという

成瀬氏「1cmごとに穴を開けた試作ボードを作って、そこにアンテナを固定して検証を繰り返した結果、WXR-2533DHPのアンテナ配置になりました。内蔵アンテナだと電波の飛ぶ向きを調整できず、スマホでも安定して利用するという企画意図にそぐわなかったのです。WXR-2533DHPのアンテナは、周囲にまんべんなく飛ぶ素直な特性のものを使っています。そのため、アンテナの角度と方向を調整することで、使用環境に合わせて最適に設定する自由度が高くなりました」

富山氏「もう一つの理由は、安定した動作のためで、WXR-2533DHPの内部はこのようになっています(と筐体を開けたものを見せていただいた)。ご覧のとおり、ヒートシンクが付いています。本来ならば一枚のアルミ板で済ませたいところですが、速度アップしたCPUなどの放熱を考えました。室温40度くらいの使用環境を想定すると、コストアップになりますが、ヒートシンクを付けなければなりません。

WXR-2533DHP本体内部のエアフローも考えると、これだけの本体サイズが必要だったのです。見た目を重視して小さく作ることも可能なのですが、問題なく動作しても、放熱がうまくいかないと徐々に実効速度が下がってしまうのです」

成瀬氏「また、USB 3.0ポートは無線LANと干渉することが多いのですが、配置を見直すことで、追加のシールドパーツなしで設置できました」

WXR-2533DHPの内部を開けたもの。言葉は悪いが意外とスカスカ。本体サイズを小型にすることも不可能ではないが、安定性や実効速度を考えて、この大きさになったという。左下に見えるUSBコネクタは、この位置にすることで追加シールドをなくすことができたという

富山氏「本体が大きくなったぶん、シンプルなデザインにして部屋に溶け込むように考えました。設置も、スタンドで立てる、スタンドなしで横置き、そして壁掛けと、3通りの方法を想定しました。本体のインジケーターLEDも、かなり暗めにしてあります」

そのほか、配慮した点があれば教えてください。

富山氏「自宅に来たお客さんに無線LANとインターネット接続を提供する、ルータ側の機能「ゲストモード」を見直しました。ゲストモード自体は従来の製品にもありましたが、管理者が設定しないといけなくて、『お父さんがいないから友達が来てもゲストモードが使えない』という点が問題でした。

WXR-2533DHPには、ゲストモードのボタンを用意しています。友達が来たら、お母さんでも子供でも、ワンプッシュでゲストモードにできるようになりました」

*IMG_5199.jpg* AOSSボタンの下にあるのがゲストモードボタン。これを2秒ほど押すと、ゲストモードが動作する。ボタンの中間にゲストモードのランプがあり、一目でわかるのもうれしい

尖った仕様だけではなく、無線LANを快適に使いたいユーザーが安心して利用できる配慮がよくわかりました。ありがとうございました。