最近、女子中高生を中心に、キスなどのカップルのラブラブな動画をインターネットにアップするのが流行っているのを知っていますか。SNSをきっかけに報道番組などでも紹介され、話題となっています。キスなどは本来、二人だけの秘め事のはず。どうして女子中高生たちは、ラブラブな動画をアップするのでしょうか。

ちょっと前だと、駅のホームなど人前でキスをするなアリかナシかということが、話題になることが多かったですよね。それがここに来て、インターネットを使った世界的な公衆の面前でラブラブぶりを見せつけるカップルがでてきたということで、すごく飛び抜けた感じがしています。

自己顕示欲と承認欲求

どうして、ラブラブな動画をアップするのか、そこには自己顕示欲や承認欲求が存在するでしょう。

自己顕示欲とは、簡単にいえば、他人との関係のなかで自分が優位な存在として認められたいという欲求です。自分が世界の中心、自分が主人公になりたいという欲求ともいえるでしょう。ラブラブな動画を公開することは、私はこんなに幸せなんだよということをアピールしたいということ。

(動画を公開した時点では) ハッピーエンドの物語のプリンセスになったことをアピールして、他の誰よりも幸せなんだ、私はあなたたちとは違うのよということを主張しているのかもしれません。

承認欲求とは、他人から認められたいという感情のこと。これは、フェイスブックで「いいね」されることに共通しているかもしれません。ラブラブな動画を撮影して投稿する。そして、それを見た人に評価してもらう。それは自分自身や自分の幸せを受け入れてもらったってことですよね。

インターネットの普及で変わった世界

昔だと、先生や親、友達、恋人といった身近なリアルな環境のなかで自分を認めてもらうことが精いっぱいの自分の世界の広がりだったわけですが、インターネットの普及によって、その世界が大きく広がりました。

以前、電車のなかで化粧をする若者が問題視されたとき、リアルな世界は自分の知っている人のあいだだけで、たまたま乗り合わせ乗客などはリアルに存在してもリアルな世界の住人ではないため、なにをやっても恥ずかしくないという批判がでたことがあります。

個人的にはむしろ、会ったことがない人たちが住むリアルではない社会もリアルな現実として存在するようになったからこそ、そこでも認められたいと動画を投稿しているんだと思うんです。

今の子どもたちは、もしかしたら褒められること、認められることに飢えを感じているのかもしれません。もちろん、動画を投稿すること自体が問題行動ではありませんが、もっと身近なリアルな世界で認めてあげることが必要なのかもしれませんね。

※写真と本文は関係ありません

著者プロフィール

平松隆円
化粧心理学者 / 大学教員
1980年滋賀県生まれ。2008年世界でも類をみない化粧研究で博士(教育学)の学位を取得。京都大学研究員、国際日本文化研究センター講師、チュラロンコーン大学講師などを歴任。専門は、化粧心理学や化粧文化論など。魅力や男女の恋ゴコロに関する心理にも詳しい。現在は、生活の拠点をバンコクに移し、日本と往復しながら、大学の講義のみならず、テレビ、雑誌、講演会などの仕事を行う。主著は『化粧にみる日本文化』『黒髪と美女の日本史』『邪推するよそおい』など。