クリエイター、という単語には個のイメージがある。各々がとがった光るものを持つ者だからこそ、フリーランスで個人活動をしたり、小規模の企業・グループで活動したりするケースも多い。そんな一筋縄ではいかない"ぶっとんだ"面々のPR代理店が「QREATOR AGENT」だ。11日には、同社がPR業務などを担当しているクリエイターたちの情報を網羅した新Webサイト「QREATORS.JP」をオープンし、Web上でクリエイターたちの活動歴などを知ることができるようになった。

「QREATORS.JP」のトップページ

同社は、ロンドンブーツ1号2号、ナインティナイン、ロバートといった売れっ子吉本芸人のマネージャーを歴任してきた佐藤詳悟氏が代表を務める企業。はためからは縦横無尽に活躍しているように見えた吉本興業での仕事に区切りをつけ、異なる領域に足を踏み入れてクリエイターたちと仕事をしていこうと決断したその理由は何だったのだろうか。

今回は、同社の起業のきっかけや「QREATOR」との関わり方、今後の方針について、佐藤氏からお話をうかがった。

――最初に、「QREATOR AGENT」についてお教えいただけますか?

「QREATOR AGENT」(以下、QA)の役割についてご説明する時、「人の営業代理店」、あるいは「人のPR会社」とよくお話しております。

FacebookやTwitterなどで個人がいつでも自分のアイデアや作品を発信できる時代ですが、その個人が才能やビジネスを最大化する時に、ユーザーやクライアントとクリエイターの間には、やはりプロデューサーが必要だと思いました。

というのも、やはり才能ある人ほどマメではなかったり、何かが欠けていたりする傾向があると感じたからです。僕が吉本興業に勤めていた時に交流のあった芸人さんたちもそうでした。ですが、彼らはその代わりに、ものすごい才能を持っているんです。

そんな才能あるクリエイターたちと共に、さまざまな人と出会い、ニュースをつくり、ビジネスをしていくプロデューサーの存在が必要だと思います。僕はQAを、プロデューサーを多く育て、クリエイターに敬意を払い、一緒にビジネスをする会社にしていきたいと考えています。

――これまでに吉本興業でロンドンブーツ1号2号やナインティナインなど人気お笑いユニットのマネージャーを歴任されてきましたが、華々しいキャリアの次のステップとして起業を選ばれたきっかけをお教えいただけますか?

QAでは、基本的に個人で戦っているクリエイターの方々と仕事をさせていただくので、僕たちも同じ環境に身を置かなければ、同じ立場で仕事ができないからと思ったからです。

また、僕が「夏休みの宿題も締め切りのギリギリに提出する子ども」だったから、というのもあります。基本的に面倒くさがり屋なので、ある一定の期限やリスクを背負わないとちゃんとしないので……という、ものすごい個人的な理由です。

何より、起業ということ自体をしてみたかったというのも素直な気持ちです。会社員としてではなく、自分の力でチャレンジしてみたかったんです。

――QAでは、自社と契約した方を「QREATOR」と定義していらっしゃいます。多様なジャンルで活躍する人々をひとつにまとめる定義をした理由は?

事務所やエージェントには、やはり何か軸があるべきだと思っています。例えば、吉本は人を笑わせる才能が集まる会社。僕たちは、ぶっとんだ創造者=QREATORと定義していますので、どんな職種であっても、"何かを創っている変な人たち"を集めていると世の中に伝えたかったんです。

――現在所属されている「QREATOR」の方々は非常に多ジャンルに渡っています。どういった方針でこれらの方々の所属が決定したのでしょうか?

まず申し上げたいのが、「QREATOR」はQAに所属しているのではありません。弊社はあくまでもエージェント、営業の代理店です。そして僕たちがお手伝いをさせていただくにあたり、もっとも大事にしていることは、「僕たちがその人のことを手伝えるかどうか」ということ、そして「『覚悟』を持てるか」ということです。

「その人を手伝えるか」という部分は、クリエイターの方に"正しい欲"があるかどうかで判断させていただいてます。「こうしたい」という強い思いがなければ、こちらは何もお手伝いできないからです。

一方、「覚悟が持てるか」ということについては、プロデューサーに「(担当する)クリエイターの方を好きだと思っているか」ということを確認してもらっています。好きとは覚悟であるという気がしています。この人と生きていく、この人と付き合う。好きと覚悟は同居していると思うのです。このあたりは、僕が芸人さんをマネジメントさせていただいている経験とプライベートの経験から来ています。QAのサイトに掲示している七つの条件は、まさに僕が芸人さんをマネジメントする中で、自分のやりたいことを達成していかれている方々のポイントではないかと思ったからです。

――なるほど。御社と「QREATOR」とは「非専属」で「フラットな関係」を結ぶとWebサイトにて公表していますが、こうした姿勢は従来の人材プロデュース手法と異なるように感じます。こうした仕組みを採用したのはなぜですか?

例を挙げましょう。弊社では、紀里谷監督のエージェント業務をさせていただいています。紀里谷さんは映画監督、写真家、講演など、その才能をさまざまな分野で発揮されています。

紀里谷氏の他にも、多様な活動領域のクリエイターたちが名を連ねている

僕たちが一番大事にしていることは、クリエイターの方が活躍し、ビジネス的にも成功すること。なので、無理はしません。僕たちには「できること」と「できないこと」があるのです。そういった考えから、僕たちは紀里谷さんの講演会やクライアントワーク、映像作品の企画開発の部分にフォーカスしてお手伝いをさせていただいています。僕たちのできない部分では、その分野が得意なプロデューサーと組んだ方が、クリエイターのためになると思っているからです。

また、僕たちは徹底的にクリエイターが活躍していくパターンの分析をし始めています。テレビで活躍されている方も、それ以前にWebなどで活躍をされているはずです。それらを解析することで、クリエイターごとに最適な営業方法を考えていきます。

それに加え、ファンビジネスの考え方も分析しています。そのクリエイターのファンの方々の年齢層や地域や満足度などを見ながら、最適なコンテンツをファンのみなさんに届ける方法を提供していきます。もちろんデータが全てではありませんが、データを信頼して、考えるべきアイデアの範囲を限定していく一方で、その点を徹底してやっていくことも、僕らのプロデュース手法です。

――「QREATOR」の中には、ご自身がエージェント企業を営んでいるコルクの佐渡島氏のように、自身も他のクリエイターをプロデュースする側に立っている方も見受けられます。こういった方々に対して、「QREATOR AGENT」はどういった働きかけを行うのですか?

人それぞれ、ニーズが大きく違います。例えばメディアの窓口や講演会の窓口、ファンビジネスのプラン設計やメルマガの編集、クライアント営業など、本当にニーズがさまざまです。そのニーズにできる範囲で僕たちは応えていきます。

また、ご自身では気づかれていない分野の才能を持った方も多いです。自分を100%俯瞰で見るということは難しいので、そういったお手伝いもさせていただきます。例えば、ヒューマン・ドッグ トレーナーの須﨑大さんは、もちろんドッグトレーナーとしても一流ですが、人間の生活と犬の関係性の研究もされています。犬の脳は前頭葉が著しく小さく、とても生き物として本質的だそうです。その犬と人の関わりを理解すると人と人との関係の本質も理解できるそうです。実はこちらが相当おもしろいのです。そういうところを世の中に伝えていきたい。そう思います。

――最後に、「QREATOR AGENT」によって実現したいビジョンをお教えください。 「実現したいビジョン」は全部で3つあるので、それぞれについてお話したいと思います。まず、人こそが最強のコンテンツだと思います。おもしろい人がおもしろいものをつくると信じています。しかし、娯楽費は家計の中で占めるパーセンテージが少ないものです。例えば、食費や住宅費や衣類費などの分野でも、僕たちがお手伝いしているクリエイターの「作品」を提供できればと思っています。

次に、僕たちはあらゆるジャンルの人のお手伝いをしているので、多種多様な情報やアイデアを共有することができます。すべてのデータやアイデアを弊社がお手伝いさせていただいているクリエイターに生かし、おもしろい人のデータやアイデアを蓄積した企業になっていければと考えています。

最後に、海外のエージェントと提携し、世界中のQREATORのネットワークを構築したいです。世界中のおもしろいことをやりたい人とおもしろいクリエイターをつなげることができたら、世界はもっと楽しくなるはずです。