海外のITニュース系サイトでは、AMDのCEOがWindows 10のリリース時期を「7月末」と明かしたことが話題になっている。だが、OEMパートナーへRTM(製造工程版)を渡すタイミングなどを逆算していくと、7月第1~2週には完成させなければならない。つまりWindows 10テクニカルプレビュー ビルド10064のリリース日から数えて11週程度しか開発期間は残されていないのである。コントロールパネルから「設定」への完全移行は完了するのか、音声アシスタントシステム「Cortana」の日本語対応は間に合うのか。そんな思案を抱えつつ、今回はビルド10064の注目ポイントを解説する。

仮想デスクトップ

"仮想デスクトップ"というアイディアは目新しいものではない。1980年代にはパロアルト研究所で実験が始まり、その後登場する各OSに大きな影響を与えていた。2001年11月にリリースしたWindows XPでも、「Virtual Desktop Manager」というMicrosoft PowerToys XPという機能セットで実現していたため、経験したことのある方も少なくないだろう。Windows 10は、その仮想デスクトップを標準機能として搭載してきた。

ビルド10061は軽微な改善にとどまっているものの、タスクビューボタンのデザイン変更や、サムネイルにウィンドウアイコンや閉じるボタンを追加。今までのWindows 10テクニカルプレビューで仮想デスクトップを使ってきたユーザーには、"使える"印象を持つのではないだろうか。また、ハードウェアリソースが許す範囲で仮想デスクトップを際限なく作成可能になった。

仮想デスクトップ上のウィンドウやデスクトップのサムネイルにマウスオーバーすると、「閉じる」ボタンが明確に示されるようになった。また各ウィンドウのアイコンも目新しい

ウィンドウをドラッグするとサムネイルサイズが縮まり、そのまま既存/新規の仮想デスクトップにドロップする機能はそのままだが、ブラッシュアップした印象を受けた

前回述べたようにダークテーマの採用などデザイン面強化が著しいビルド10064だが、タイトルバーの配色が変更したこと気付いた方もおられるだろう。ビルド10049のデスクトップアプリはタイトルバーが青灰色だったものの、本ビルドでWindows Appと同じ配色にそろえている。

また、全画面表示のスタートメニューと同じく、各所にアニメーション効果を加えているのも変更点の1つ。例えば無線LANのフライアウトを表示する際は画面下部から刷り上がるような効果が加わっている。あくまでも個人的な意見だがアニメーション効果はリッチなUIに欠かせないながらも、好き嫌いが分かられる部分だ。完成までにはアニメーション効果のオン/オフを切り替えるGUI項目の搭載を期待したい。

通知領域の「ネットワーク」アイコンをクリックすると、各アクセスポイントが下から刷り上がるように描かれる

そういえば以前は隠し機能(レジストリエントリを編集することで有効になる)だった「日付と時刻」も新しくなった。長年見慣れたWin32ベースではなくXAMLベースで描画し、<その他の時計>から呼び出すWindows app「アラーム&クロック」で他国の時間も確認できる。ただ、下図をご覧になると分かるように日時表記が絶対時間から相対時間に変更されているため、ひと目で分からないの厳しいだろう。本件に関しては筆者もWindows Feedbackを送ったので、その結果は今後のビルドで確認する。

通知領域の「時計」をクリックすると現れるカレンダー。本ビルドでも日付のリンクをクリックしても反応はなかった

<その他の時計>をクリックすると起動する「アラーム&クロック」。他国の時刻はこちらで確認できるが、ローカル時間に対する相対時間表記だった

「設定」に目を向けると、いくつかの変更点を確認できた。まず「システム\バッテリー節約機能」は本ビルドから加わった新カテゴリーだ。現在のバッテリー残量とバッテリー節約機能のオン/オフを選択できる。「バックグラウンド動作を制限することで~」というメッセージが記載されているものの、その具体的なロジックは現時点で確認できていないため、分かり次第読者にご報告したい。

新たに加わった「システム\バッテリー節約機能」。バッテリー残量の確認や同名機能のオン/オフを選択できる

「システム\タブレットモード」にはサインイン直後の動作を選択する「When I sign in」が加わり、「今すぐタブレットモードを入力してください」「デスクトップに移動してください」「以前ではモードを保持します」(いずれも原文ママ)の3項目から選択可能。表示UIを英語に切り替えて確認した限りでは、"タブレットモード"、"デスクトップモード"、"最終状態を引き継ぐ"が選択できると考えればよい。

「システム\タブレットモード」には、サインイン時に表示するモードを選択する。なお、10インチ以下のタブレットは自動でタブレットモードを選択する仕組みだ

また、「タブレットモードの時にタスクバー上のアプリのアイコンを非表示にします」も新項目の1つ。こちらは文字どおりの動作なので、下図をご覧になれば一目瞭然だ。スワイプ操作によるタスク切り替えよりも、タスク上のボタンをタップして切り替えたい方向けに加わった機能だが、このようにユーザー側で動作を選択できるのは多様なユーザースタイルに対応するよい改善と言えよう。

「タブレットモードの時にタスクバー上のアプリのアイコンを非表示にします」がオンの状態。文字どおりタスクバー上のボタンが消える

同項目をオフにした状態。ピン留めしたボタンや起動中のアプリケーションボタンが残るため、デスクトップ風の操作も可能になる

コントロールパネルの各アプレットを「設定」に移行しつつあるが、ようやく「パーソナル設定」も移行した(Win32ベースの「個人設定」も残っているため、正しくは新規追加と述べるべきか)。サブ項目名として並ぶ「背景」「色」「ロック画面」「テーマ」かdらも分かるように、個人設定に関する主な設定項目が「パーソナル設定」に集められている。

「パーソナル設定\背景」は背景画像や背景色、表示形式などに関する設定項目が並ぶ

「パーソナル設定\色」は背景画像を前提にした自動配色や、タスクバーなどに対する配色の有無、スタートメニューの透過効果の有無を切り替える設定項目が並ぶ。後者2つはコントロールパネルのアプレットでは設定できない新項目だ。「パーソナル設定\ロック画面」はWindows 8.1の同名設定と基本的には同じ構成である。ただし、整合性を取るためアラームやカメラに関する設定項目は削られていた。なお、「パーソナル設定\テーマ」は残念ながら開発途中らしく、「個人設定」を呼び出すリンクの用意にとどまっている。

「パーソナル設定\色」は各所に対する配色の有無を制御する項目が並ぶ

「パーソナル設定\ロック画面」の基本構成はWindows 8.1の同名設定と基本的には同じだ

このようにビルド10064はドラスティックな変更を加えず、機能のブラッシュアップやバグフィックスが中心だ。冒頭で述べたとおり2015年7月末にリリースするのであれば、残るテクニカルプレビューのリリースタイミングもあと2回程度になるだろう。

阿久津良和(Cactus)

前回の記事はこちら
・短期集中連載「Windows 10」テクニカルプレビューを試す(第22回) - 4月版となるビルド10061登場
http://news.mynavi.jp/articles/2015/04/24/windows10/
バックナンバー 一覧へのリンク
http://news.mynavi.jp/tag/0021413/