米Cypress Semiconductorは2月25日(米国時間)、4種類の周波数を同時に生成できるProgrammable Clock Generatorとして「CY27140」を発表した。この製品に関して電話会議の形で説明会が行われたので、簡単にご紹介したい。
CY27140はそんな訳で、Photo01の様に内部に4つのPLLブロックを持つプログラマブルクロックジェネレータとなる。
ターゲットは、最近の高性能な民生機器である(Photo02)。ようするに多機能プリンタの類などだが、高性能化や高機能化に伴い、より高速な通信I/Fが必要になっている。従来だとこうしたI/FごとにそれぞれPLLを用意していたのを、まとめて1つで提供できるようにすることで、BOMや実装面積低減、さらにはEMI低減まで狙える、というのがCY27140の売り文句である(Photo03)。
説明の中では競合製品との比較も行われ、機能(Photo04)および電気的特性(Photo05)の両面でCY27410が有利という説明がなされてた。対応するアプリケーションの具体例はこちら(Photo06)であるが、他にもSTBとかも対象アプリケーションとして有望そうに見える。
ちなみにCY27140は現在サンプル出荷を開始しており、量産出荷は2015年第2四半期から。パッケージは48pinのQFNであるが、サンプル/量産価格はまだ発表できる段階ではないとの事だった。
さて、商品の説明はこの程度の話であるが、ちょっと製品ポジショニングの話などを。同社は元々長くProgrammable Clock Generatorを発売してきたメーカーであり、通算で25億個の出荷を誇っているとしている(Photo07)。
Photo07:PLLそのものは多くのメーカーが手がけており、スライドに出てきたIDTやSiliconImages以外にもMicroSemiとかExarとかOn Semiconductor、Microchip、TI…と非常に多くの会社が何らかの製品を出している。ただProgrammableなものはそう多くない |
実際、ProgrammableなPLL Clock Generatorに限って言えば、同社のシェアは依然としてかなり高いとしている。ところが、実はCY27140は実に5年ぶりの製品である。つまりここ5年ほどは既存の製品をひたすら売っているだけ、という状況だったのだという。もちろんProgrammableだから必ずしも新製品でなくても、既存の製品がニーズを満たしていればそれで問題ないわけで、むしろ安定供給されている分安心という側面もあるが、Cypressの社内では、そもそもこのProgrammable Clock Generatorのビジネスをこのまま続けるのかどうか、というレベルで議論があったのだという。ありがちな話は部門ごと売却という話で、例えばIDTは2005年にICS(Integrated Circuit Systems)およびFreescaleのTiming Solution Divisionを買収しており、これで一気に同社のPLL関連のポートフォリオが充実したという話がある。派手なビジネスではないが、確実な売り上げが見込める部門なだけに、もし売却すればそれなりの金額になる事は容易に想像できる。にも関わらず今回新製品を発表したのは、同社は引き続きPLL関連ビジネスにCommitしてゆく、という姿勢を改めて表明したという意味でもあるそうで、これを皮切りに新しい製品をさらに投入してゆくことも同時に明らかにされた(Photo08)。
ただ同社は、これで例えばIDTとかMicrochipなどに負けないほどにPLL関連製品を増やす、という訳ではないそうだ。あくまでも同社の強みはProgrammable Clock Generatorにあるということで、今後の製品展開もここを主軸に行ってゆく、という話であった。このあたりは、Spansionとの合併を考えるとちょっと面白い。くしくもSpansionは2月19日にADAS向けPMICを発表し、さらに同月24日は同社のTraveo MCUやFM4がCAN FDをサポートという具合に急速に自動車業界向けの製品ラインアップを拡充しつつある。新しい分野向けの製品が多いから、当然PLLも当初はProgrammableなものを使う方が一般的であろうし、そう考えるとCY27140がAEC-Q100準拠の製品もラインアップしている理由が非常に判りやすい。Spansionとの合併により、自動車向けの新たなビジネスがクリアになってきた事が、今回再びProgrammable Clock GeneratorにCommitを表明した大きな理由ではないか、と筆者は想像した。