池袋駅から約10分先の西武池袋線「桜台駅」から徒歩約5分。練馬区の桜台という閑静な住宅街の中に、なんと天然温泉の銭湯がある。今回紹介する「久松湯」は昭和31年(1956)に創業。とは言え、創業当初は温泉ではなく、何度と工事を繰り返す中で2013年に温泉の掘削に見事成功し、翌年の2014年5月にフルリニューアルオープンを果たした。

スクエアデザインの外観は美術館か博物館のよう。だが、ここはれっきとした銭湯「久松湯」なのである

ムーディーな雰囲気も漂う中庭も

外観に昭和の面影は残っていない。真っ白でスクエアなそれは、美術館か博物館の建築を思わせる。自動ドアをくぐりエントランスへ。100円玉返却式のロッカーに下足を預け、その鍵をフロントでロッカーのカードキーと交換する仕組みになっている。

右手には大型テレビと腰掛けのロビースペース。左手の奥は、ボディケアやアロマセラピーなど、女性にうれしいリラクゼーションサロンが備えられている(別料金)。男湯は右、女湯は左の脱衣所へ進む。

ドライヤーが設置された鏡台を左手にしてロッカー。その他、腰掛け、自販機、体重計、扇風機などが整然と並ぶ。人気の銭湯だけあってよく混み合い、特に休日などは、幅広い年齢層の客が絶えず訪れるようだ。脱衣所と浴室の間には中庭があり、ガラス張りになっているので採光も良い。日中は明るく開放的に、日が暮れればムーディーな雰囲気が漂う。

黒と白で統一された浴室は壁にも注目!

男湯のイメージ

浴室の中は、白と黒で統一されたモダンなデザインになっている。カランはもちろん、洗面器やイスまで黒。白い壁は一見味気なく感じるかもしれないが、こちらはなんとプロジェクションマッピングを用いた光のキャンバスになる。光の演出は暗くなってからの夜間に実施している。見上げれば天井は菱型の格子状になっており、部分的に天窓になっていて、こちらからも日光が差し込む。

湯は広い浅風呂と各部位ごとのジェットバス、ぬるめの炭酸泉、サウナに水風呂。そして奥には目玉の天然温泉の露天風呂がある。「ナトリウム一塩化物強塩」という源泉で、ぬるめで茶褐色の塩気の強い湯である。疲労回復や筋肉痛によく効くが、温泉成分がかなり高いとのことなので、長湯は避けよう。

のれんひとつまでデザインされた、こだわりの銭湯・久松湯。もちろんこの湯も、都内公衆浴場料金(大人: 460円)で楽しめる。古き良き銭湯のイメージを覆す強烈なインパクトを、ぜひ体感してみてほしい。

※記事中の情報は2015年1月時点の男湯のもの。イメージ図は筆者の調査に基づくもので正確なものではございません

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。