日本マイクロソフトは9月8日、ポータルサイト「MSN」を一新し、新たなユーザーインタフェースで提供すると発表した。同日よりプレビューサイト「preview.msn.com」を公開している。

MSNはWindows 95が発売された1995年に公開。現在は55カ国で展開しており、月間4億2500万、日本では2500万のユニークユーザーが利用している。過去20年間で最大のリニューアルとなり、PCに最適化されていたこれまでのサイトユーザーインタフェースとは異なり、スマートフォンやタブレットでも利用しやすいようにデザインされている。

なお、これまでWindows 8向けに提供されてきたマイクロソフトの検索アプリ「bing」も同時にリニューアル。MSNと統合することで、ポータルアプリとして利用しやすくするほか、マルチデバイス対応の名の下に、AndroidやiOS向けにもアプリを提供していく予定だ。

Web版もマルチデバイス環境に対応。レスポンシブデザインを採用し、表示が1、2、4カラムでシームレスに変わる

ほかにも、ユーザー自身がMSNをカスタマイズできる「パーソナライズ」機能を提供。マイクロソフトアカウントでログインすることで、OutlookやOneDriveのサービスメニューが表示されるほか、各種SNSとの連携も可能になる「Meストライプ」がその要素の一つで、サイトトップに表示されるアイコン一覧からワンストップでアクセスできるようになる。

それ以外にも、MSNサイトコンテンツの表示内容もカスタマイズできるようになる。例えば、自分が登録した検索ワード(例:マイナビ)を登録すると、関連性の高いニュース記事が専用メニュー「マイニュース」に届くようになる。ほかにも、マネーセクションでは、登録した企業の株価や関連ニュースが届くなど、よりユーザーに最適化されたコンテンツ表示が行なわれる。

通常提供されるコンテンツも、これまでのニュースサイトから内容を厳選。「ニュース」や「スポーツ」「フード&レシピ」「自動車」「ビデオ」「エンタメ」「マネー」「ヘルスケア&フィットネス」「トラベル」「天気」の10セクションに、全世界で1000を越えるコンテンツとデータが供給される。

なお、このリニューアルに合わせて、これまで産経新聞と提携して提供してきたニュースサイト「MSN産経ニュース」の運営を9月30日に終了する。今回のサービス終了はリニューアルにともなうもので、同社の記事は今後も継続して提供される予定だ。なお、産経デジタルは同日、新サイト「産経ニュース」を10月1日に正式オープンすると発表している。

9月いっぱいで終了するMSN産経ニュース(左)と10月1日に正式オープンする産経ニュース(右)

一方で、「MSN」の新サイト正式オープンは現時点で決定していない。これは「グローバルとの同時リニューアルで展開する予定」(広報部)とのことで、MSN産経ニュースの提供終了と前後する可能性がある。

広告商品も拡充

MSNのリニューアルに合わせて、同サイトの広告商品も一新される。コンテンツの表示レイアウトがグラフィカルにパネル形式になったことから、これに似通った「ビューアブル ネイティブ アド/テキスト アド」を導入。また、動画コンテンツを組み合わせてサイトトップに表示する「ビルボード」や、通常コンテンツ上を通過してコンテンツ訴求を行なう「ウィンドウ フロート」なども提供される。

ビューアブルネイティブ アドとテキストアド。通常コンテンツと同様に表示されるため、よりコンテンツらしく広告表示が可能になる

ビルボードは、Meストライプの下、通常コンテンツの上に配置。動画再生と共に視覚的にユーザーの注目を集められるという

ウィンドウフロートでは、よりリッチな体験を、他コンテンツを邪魔することなく提供できる

広告メニューだけではなく、サイト自体をリニューアルしたことで、得られるメリットがあるという。例えば、マイクロソフトアカウントのログイン機能によって「シングルソース ターゲティング」が可能となるため、ユーザーの行動履歴や検索履歴の取得ができるようになる。ユーザーにはターゲティングを拒否できる「オプトアウト」機能も用意するため、安心してサイト利用ができるとしている。

また、マルチデバイス対応を図ったほか、ユーザーが閲覧しないとインプレッション数にカウントされない「ビューアブル」対応を図ることで、広告主にとって「ROI価値を最大化できる」としている。

新CEOのキーワードに沿ったリニューアル

日本マイクロソフトは同日、本社で記者会見を開き、執行役 アドバタイジング&オンライン統括本部長のカン・ヒサン氏とI&CE統括本部 部長の鈴木 公子氏、アドバタイジング&オンライン統括本部 パートナーソリューション部 兼 プロダクト&ソリューション部 部長の坂下 洋孝氏が登壇した。

日本マイクロソフト 執行役 アドバタイジング&オンライン統括本部長カン・ヒサン氏

I&CE統括本部 部長 鈴木 公子氏

アドバタイジング&オンライン統括本部 パートナーソリューション部 兼 プロダクト&ソリューション部 部長 坂下 洋孝氏

統括本部長のカン・ヒサン氏は、今回の全世界同時リニューアルがサティア・ナデラCEOのビジョンによるものだと強調する。

「マイクロソフトとして変革すべき理由がある。モバイルファーストとクラウドファーストというキーワードがMSN事業の上でどういう意味を持つのか考えた時に、今回のリニューアルとなった。これはビル・ゲイツの写真で、マイクロソフト創業時のもの。この時はコンピューターをすべての企業と家庭にと語っていた。ご存知の通り、今やコンピューターはスマートフォンからタブレット、ノートPCまで全部揃っている。Wi-Fiやモバイル回線でネットアクセスはどこでも可能となった。コンテンツをどこでもアクセスできるようになった時代、クラウドファーストの意味は、どこでもいつでも、データコンテンツを見られるようにする。それが私たちの使命だと思っている」(カン氏)

続いて登壇した鈴木氏は、リニューアルの概要について説明した。95年にWindows 95と時を同じくして登場したMSN、そしてWindows 8と時を同じくしてアプリとして登場したBing検索アプリ。これらを統合したものが、新しいMSNだ。新しいMSNの三本柱は「プレミアムコンテンツ」と「パーソナライズ」「いつでもどこでも」だが、特に「パーソナライズ」機能に力を入れていると鈴木氏は話す。

「これまでは、コンテンツを提供するだけで、パーソナライズには手を付けてこなかった。その分、力を入れており、ツール系サービスを提供することで、コンテンツ内容や表示位置をユーザーがカスタマイズできるようにすることで、よりMSNを使ってもらえるようになる」(鈴木氏)

日本だけではなく、全世界のMSNを刷新するため、言語表示を変えると、同じようなデザインで他国版のMSNが閲覧できる。

「例えばアラビア語に設定してみると、日本や米国版とは異なり、コンテンツの配置が逆になっています。ただ、見比べてみると分かるように、日本と米国でも微妙にデザインが異なっている。世界55カ国での同時刷新は、日本のユーザーニーズに応えられないと思われるかもしれないが、テストを重ねて、日本ユーザーがどういうデザイン、ホームページを好むのか調べて、アジア版のUXを作り上げました」(鈴木氏)

アラビア語版では、文字が逆に流れるため、コンテンツ配置も逆になる

パーソナライズ機能では、ユーザー自身がMSNをカスタマイズすることで、よりMSNを活用しようという動きが生まれるという

最後に登壇した坂下氏は広告展開の担当者だが、MSNのリニューアル三本柱に沿った広告展開ができる点を強調する。

「これまでと同様に世界4億人を超えるユーザーに対してリーチができるだけでなく、今回の刷新でコンテンツ拡充、パーソナライズ機能の提供によるエンゲージの強化、そしてマルチデバイス対応やビューアブル対応などが可能となった。リッチメディア広告によって、ブランディング効果も狙える。ユーザー体験を強化していきたい」(坂下氏)

このように語り、コンテンツだけではなく、リッチ広告も含めた利用者へのサイト体験強化をうたっていた。