本日8月1日から11月3日まで、横浜市・みなとみらい地区を舞台としたアートの国際展「ヨコハマトリエンナーレ2014」が開催されている。

「トリエンナーレ」とは3年に1度開かれる国際美術展覧会のこと。同展は2001年に第1回が開催され、今年で4回目を迎える。横浜美術館と新港ピア(新港ふ頭展示施設)をメイン会場として開催され、参加アーティストはなんと国内外より65組79名、展示作品400点以上という豪華なアートの祭典である。

アーティスティック・ディレクター森村泰昌氏によって書かれた筆文字が記憶に残る

スタッフTシャツにも「忘却」の2文字が

今回はメイン会場の横浜美術館と新港ピアに焦点を絞り込み、序章と11の挿話からなる「忘却の海」を楽しむための"コレだけは押さえたい必見作品"を紹介する。

横浜美術館の中で見られる作品をピックアップ!

美術家の森村泰昌がアーティスティック・ディレクターを務めた今回のテーマは「華氏451の芸術:世界の中心には忘却の海がある」。華氏451度とは紙が自然発火するといわれる温度のことで、レイ・ブラッドベリ作のSF小説「華氏451度」に由来したタイトルとなっている。この小説は、本(=記憶の象徴)を読むことも持つことも禁じられた近未来社会が舞台となった作品だ。「記憶」から「忘却」へと軸足を置き換えてみると、「忘却」のなかにこそ見えてくるものがある。ヨコハマトリエンナーレ2014は、それらさまざまな忘れものに思いをはせる「忘却めぐりの旅物語」なのである。

横浜美術館を一歩入ると、目の前にどんと現れる巨大なゴミ箱。ヨコハマトリエンナーレ2014を象徴するかのようなこの巨大な作品は、300立方メートルの大きさに及ぶマイケル・ランディの美術のためのゴミ箱「アート・ビン」。「想像的失敗のモニュメント」と呼ばれ、創作活動の裏に秘められている失敗の歴史(作品)を視覚化するというもの。視覚はもちろんだが、作品が紙以外のものだと捨てられて壊れる瞬間にたてる音がまた感慨深い。

マイケル・ランディ(Michael LANDY)「アート・ビン」

取材当日はマイケル・ランディ氏本人や本展参加アーティストたちによる投棄パフォーマンスが行われたが、この作品は実際に自分の「作品」も「アート・ビン」に捨てられる参加型の作品となっているので、気になる人は参加概要をチェックしよう。8月3日(日)には本人によるアーティスト・トークも予定されている。

ここからは、横浜美術館内とその付近の作品についてピックアップして紹介していく。

「反物質;ライト・オン・メビウス」:ネオン・アート、ライト・アートの第一人者、吉村益信氏による金属製のメビウスの輪に電球を走らせた作品。

こちらも吉村氏の作品「豚;pig' Lib;」。愛らしい豚の剥製の下半身が美味しそうなハムに。何とも複雑な気持ちにさせられる

「Nothing to do」(左):言葉を刻み込んだ平面作品。近くでみると「Nothing to do」の文字で埋め尽くされている。「飛ばねばよかった」(右):浮いているのは何なのか。自分か、はたまたそれ以外か。2点とも福岡道雄(FUKUOKA Michio)の作品

坂上チユキ氏は、水彩やインクを用いて、微生物を思わせる有機的な形象が連なる画面を構成。近づいてみると繊細な手描きで構成されている

韓国のアーティスト・ギムホンソック氏の作品は、美術館内のみならず会場外の思わぬところにも設置されている。「クマのような構造物-629」は美術館向かいの「MARK IS みなとみらい」地下4階に展示されており、通りすがりの人も時折足を止めていた。

坂上チユキ氏は、水彩やインクを用いて、微生物を思わせる有機的な形象が連なる画面を構成。近づいてみると繊細な手描きで構成されている

また、「8つの息(日常の記念碑)」は、目を引くカラーリングと不思議な柔らかさのなかの緊迫感が印象的。会場内外に点在するこちらの作品をめぐる3つの物語を紹介する「作品解説」パフォーマンスも予定されている。