5月28日~30日に東京・有明の東京ビッグサイトで行なわれているWireless Japan 2014。NTTドコモは、VoLTEやGeographical TimeLine以外にも「5G」技術の展示を行なった。5Gは4Gにあたる「LTE Advanced」の後継規格となり、2020年以降の実用化を目指している。2013年から国際的な議論が活発化しており、コンセプトの策定をしているところだ。ドコモは8日にアルカテル・ルーセントやエリクソン、富士通、日本電気、ノキア、サムスン電子とともに、実験に向けた検討を進めていくことを発表している。

LTE Advancedの"次"として検討が進められている「5G」

コンセプトの検討は、世界各国で開始されている

5Gの仕様策定はまだこれからだが、大きな要求条件は見えてきた。ドコモの展示では、「1000倍のキャパシティ」「10~100倍のデータ転送レート」「100倍の数の端末接続」「低遅延」「省電力&コスト削減」といった、5Gに求められる5つの要件が挙げられていた。こうしたニーズに応えるためには、3GHzを超える高い周波数帯の利用や、それに伴うスモールセル化、MIMOの技術の進化などが必要になる。

5Gに求められる条件

複数の技術を掛け合わせて、スループットや容量を上げていく

基地局のカバー範囲を狭くする「スモールセル」における周波数有効利用を目指したコンセプトが「ファントムセル」だ。

携帯電話は基地局と通信する際に、接続の制御をする「C-plane」(コントロールプレーン、制御信号)と、実際のデータが流れる「U-plane」(ユーザープレーン、ユーザーデータ信号)という、2つの信号をやり取りしている。

現在の仕様では、1つの基地局に対し、C-plane、U-planeの両方が送受信されている。

スモールセルの数を増やすことを想定した「ファントムセル」

ところが、カバー範囲の狭い基地局を数多く設置していくと、それだけ切断と接続を頻繁に繰り返すことになり、非効率に繋がってスループットも落ちてしまう。

そこで、C-planeを範囲の広いマクロセルと、U-planeを速度を稼ぎやすいスモールセルと、それぞれ別個に通信するのが「C/U Split」(C/U分離)と呼ばれる技術だ。これによって、スモールセルの基地局をマクロセル内に配置することが容易になり、ネットワークが高密度化して容量や速度の向上が見込める。

複数のアンテナを用いてスループットを向上させる、MIMOの進化も検討されている。ドコモが提案しているが「Massive MIMO」という方式。これは、志向性の高い100以上のアンテナ素子を使い、多数のユーザーの同時接続を可能にするという技術のこと。20GHz帯など、高い周波数と相性がよく、容量不足の解消につながるという。

「Massive MIMO」の導入も検討されている

これらのコンセプトは、2月にスペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress」でも展示されていたが、ワイヤレスジャパン2014/WTC2014では、新たなコンセプトとして「無線バックホールにおけるMassive MIMO」が提案されていた。

上述のMassive MIMOを導入するには、端末のアンテナスペースという物理的な制約をクリアしなければならない。小型のスマートフォンでは、それが難しくなる可能性も高い。

そこで、バスや電車などの乗り物に「ムービングノード」と呼ばれる大型のアンテナを搭載し、そこから車内に向かって電波を吹き、トータルでスループットを向上させるというのが、ドコモの考えたコンセプトになる。ムービングノードと端末は、LTEなどのセルラーやWi-Fiで接続することを想定しているという。

電車やバスなどでいったん電波を受信し、車内につなぐことでMassive MIMOを有効活用できる

ドコモのブースにはこの技術を適用した際のシミュレーションも展示されており、スループットが向上する様子を確認できた。

シミュレーターでも、スループットの向上が示されていた