理化学研究所(理研)は4月16日、都内で理研 発生・再生科学総合研究センター(CDB)副センター長の笹井芳樹氏が一連のSTAP論文に関する自身の立場などの説明を行う会見を開いた。
冒頭、笹井氏は「STAP研究の論文に対し、多くの混乱と、その齟齬による多くの心配、また疑惑を招く事態となったことを心よりお詫び申し上げます。また、期待を寄せるたくさんの人たちの 信頼を損ねることになったことを心よりお詫び申し上げます」と頭を下げた後、「Natureの論文について、2つの研究不正行為が調査委員会によって判断され、この論文に参加したシニアな共著者として心痛の極み。また、本論文の不備、不正認定により、日本の科学全体を損ねかねない状態になっていることについても、研究所内外の研究者、国際コミュニティの皆様に心よりお詫び申し上げます」と述べ、再び頭を下げた。
論文共著者ではなく、論文作成の「アドバイザー」として参加
今回の会見では、2014年2月中旬以降、笹井氏に寄せられた多くの質問の中から、共通して聞かれる論文作成に関する質問として5つ、そして科学面に関する質問3つに対する説明が行われた。
論文作成に関する質問は、大きく述べると以下の5つ。
- 研究論文作成における役割
- どうして過誤を見抜けなかったのか
- 経験の浅い人物を研究リーダーとして選出したことは問題でなかったのか
- 論文の撤回に同意するか
- 発表時の資料におけるSTAP細胞とiPS細胞の比較で不必要な比較が行われていなかったか
1つ目については、「(論文)投稿までには4つの段階がある。1つ目がアイデアの着想、2つ目が実験の実施、3つ目が実施された実験データの解析とその実験ごとの図表の作成、そして4つ目が、それらをまとめて論文を書き上げる段階」とし、今回の論文については、この関係性が複雑であり、1つ目については主にハーバード大学および若山研究室にて行われ、2つ目の実験についても若山研で、小保方氏と若山氏が中心となって実施し、3つ目の図表の作成も小保方氏により行われたとのことで、実際に笹井氏が参加したのは4つ目の論文を書く段階であったとした。
また、その論文作成においても、実際には2012年初に小保方氏と若山氏の手によってNatureに投稿されたものが却下されたことを受けて、理研の人事院が研究内容に対し、完成度が十分でなく、データの追加だけでは採択が難しいという判断をしたことから、CDBセンター長である竹市氏から、笹井氏へ論文の仕上げ面についてサポートを行うように、という依頼があったので引き受けたということで、「その段階ではあくまで論文に名前を連ねるつもりはないアドバイザー的な位置づけ」として参加したという。また、その頃、若山氏が山梨大学へ移ることとなり、その移転作業で謀殺されていたこともあり、論文の仕上げを積極的に代行して引き受け、STAP細胞のライブセルイメージングや試験管評価などの実験試料の評価を実施するなど、追加実験や技術指導として協力していたという。
実際に論文の共著者として名前を連ねることになった経緯としては、ハーバード大学のチャールズ・バカンティ教授の要請があったこと、ならびにレター(Letter)論文の方についても、改訂論文の作成時に、若山氏の専門外である細胞生物的解析を査読者から要求されたことから、その部分の追加を行うために必要ということで若山氏から責任著者として加わってもらいたいという依頼を受けて参加したと、あくまで自身としては「アドバイザー」として参加する立場でいたことを強調した。