早稲田大学(早大)は去る2月23日、「グローバルロボットアカデミア シンポジウム・卓越成果報告会」を、同・大学 グリーン・コンピューティング・システム研究開発センターにて開催した。同イベントは早稲田大学が毎年開催している(名称は年ごとに変わったりもする)ロボット関連の講演+研究室ツアーイベントだ。今回は、その講演の簡単な紹介と、講演終了後に行われたRTフロンティア見学ツアーで紹介されたロボットの中で、これまでお届けしていないものの紹介を行いたい。なお、講演に関しては個別に取り上げて後ほど別の記事で詳しくお送りする予定だ。

早大のグローバルロボットアカデミアは、国際的に通用する若手ロボット技術研究者の育成を目指す教育拠点だ。このシンポジウムは年1回開催されており、毎年活躍している著名な若手研究者を招待し、講演を行っている。その一方で、早大ロボット研究の重鎮であるグローバルロボットアカデミア拠点リーダーの同・大学理工学術院の藤江正克教授(画像1)らの講演も行われるのが特徴だ。

日本各地のロボット研究者が講演

講演は、以下の内容で行われた。まずオープニングとして、「グローバルロボットアカデミア成果報告」として、藤江教授による「卓越した大学院拠点形成活動報告」と、同・大学 理工学術院の菅野重樹教授(実態情報学博士プログラム プログラムコーディネーター兼任:画像2)の「リーディング大学院 実態情報学博士プログラム 紹介」が行われた。

藤江教授というと、日本のヒューマノイドロボット研究の草分けである同大学の故・加藤一郎教授の教えを受け、1960年代からヒューマノイドロボット研究に携わり、卒業後は日立製作所に入社、数々のロボット開発にかかわった後、2001年からは母校に教授として戻り、医療・福祉用途のロボット研究を率いている1人だ。

また菅野教授は、故・加藤教授に教えを受けた1人で人間共存ロボット「TWENDY-ONE」の開発などで知られており、これまで記事としては、菅野教授に関してはこちらで、またTWENDY-ONEに関しては2013年の「情報・機械系融合ワークショップGCOE報告会」(グローバルロボットアカデミア シンポジウム・卓越成果報告会と同コンセプトのイベント)ので研究室ツアーレポートにて紹介しているのでそちらをご覧いただきたい。なお菅野教授の講演の内容に関してはロボットとは直接関係がないものであり、同大学の教育に関する話であったので、今回は割愛させていただく。

画像1。藤江正克教授。講演内容は後ほど個別に紹介する予定

画像2。菅野重樹教授

そして、その後は招待講演ということで、同大学以外の大学や研究機関の研究者らによる講演が行われた。トップバッターは、国際電気通信基礎技術研究所(ATR) 社会メディア総合研究所の宮下敬宏研究企画部長(ATR 知能のロボティクス研究所 ネットワークロボット研究室室長、大阪イノベーションハブスーパープロデューサー兼任:画像3)による「サイバーとリアルな暮らしを繋ぐネットワークロボット技術」で、2番手が慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科の稲見昌彦教授(画像4)による「自在化技術とその応用」だ。

宮下部長の講演は、タイトルの通りにサイバースペースと現実の暮らしを橋渡しするネットワークロボットに関する技術を、高齢者向けの福祉ロボットの話を中軸として語られたほか、ロボットを社会に浸透させるために必要なものとしてのロボットベンチャーなどの創業に関する話も行われた。ロボットベンチャーの創業に関する話はなかなか興味深かったとお伝えしておく。

続く稲見教授は、「光学迷彩」で知られた研究者で、日本科学未来館には稲見教授の技術を応用した光学迷彩を見られる常設の展示品があるほどだが、今回は、研究開発者と生活者との壁を取り払うことを目的として設立された「LivingLab」の話や、柔軟物コンピューティング、自動車のその次である「自在車」、AR関連のユーザーインタフェースなど、近年の成果が紹介された。

稲見教授は、「みんなが喜んでくれるもの」を研究することを目標としているので、近年の研究も子どもたちも楽しめるようなものがほとんど。なお、稲見教授の研究成果物に関しては、この講演内容のほかに、各種実物を取材してきた(それに加え、そのほかの展示品も多数)慶応大のイベント「第4回KMDフォーラム」に関する話題も、後ほど講演内容とは別の記事にてお届けする予定だ。

画像3。ATRの宮下敬宏研究企画部長。講演内容は別記事にて個別にお届けの予定

画像4。慶応大学の稲見昌彦教授。同じく。講演内容は別記事にて個別にお届けする予定だ